パニ子とタケルは結婚して2年のラブラブな夫婦です。そんな2人の悩みは、タケルの実家のこと……。なるべく交流をもたないようにしていましたが、新築を建てたお祝いをするからと、義実家に招かれることになってーー。
義実家が家を建てたお祝いに…
大学から寮生活をしていたタケルは、高校を卒業してからほとんど実家には顔を出していませんでした。新築祝いも気が進みませんでしたが、誘いを断ったら断ったで面倒なことになるようで、今回は行くしかありません。
義実家には義両親と義兄夫婦、そしておばあちゃんが住んでいます。タケルにとっておばあちゃんだけは別格。唯一自分をかわいがってくれた大切な存在なので、たまには顔を見せに行こうと腹を括ったのです。
義両親に文句を言われないよう、相場通りのご祝儀を包み、今話題になっている人気店の菓子折りも持って、準備は万端です。
ひどすぎる新築祝い
パニ子たちが実家に到着するやいなや、義姉は手土産の入った紙袋を即奪っていきました。その上義母はタケルが差し出した祝儀袋を受け取ると、封筒を光に透かしたり、封筒の厚みを確認したりと、ずいぶん失礼な態度です。
義両親自慢の新築を見学していると、あることに気づいたパニ子……。おばあちゃんの部屋がどこにもないのです。義両親に尋ねると「すぐに施設行きだろ」「物置に住めばいい」と笑っていました。
頭金をおばあちゃんに出させておいて、なんてひどい仕打ちをするのだろうと、パニ子は悲しくなってしまいます。
そして食事の時間。リビングのテーブルには、たくさんの料理と高級そうなお寿司が並んでいました。しかしパニ子とタケルが通されたテーブルは段ボール……。たしかにダイニングテーブルにパニ子夫婦が加わっては窮屈になってしまいますが、段ボールはあんまりです。
お祝いは家族だけで…
グッと堪えて段ボールの横に座ったパニ子でしたが、一向に料理が取り分けられる様子がありません。テーブルに置かれているのは水の入ったコップだけ。
タケルが尋ねると「家族の分だけ注文した」と言い、義両親と義兄夫婦の4人で食事を始めたのでした。
パニ子たちを呼んだのはご祝儀が目当てだったに違いありません。「家族だと思われてないのなら、もう帰ろう」と席を立つと、おばあちゃんがやってきました。リビングを見渡してすべてを察したおばあちゃんは怒り心頭です。そして、皆の前で衝撃的な提案を投げかけました。
「家族じゃない人はうちには不要!」
「いい機会だから、ここで跡継ぎをはっきりさせておこう。我が家の跡取りは、タケルにするよ!」
この言葉に、その場にいた全員がビックリ! 義実家は江戸時代から代々続いてきた大きな呉服屋。今はおばあちゃんが経営の中心となっていますが、義両親も義兄夫婦も経営に携わっているので、そのまま継ぐと思っていました。
義母が反論するも、おばあちゃんはそれを一喝。
「身内に嫌がらせをして喜んでるような人間が、その家業の上に立つなんてもってのほかだ! 家族じゃないんだから、うちの店ではもう働かなくていいからね!」
後継者を決めかねていたおばあちゃんでしたが、今回の一件で覚悟が決まりました。
呉服屋を継げば安泰だと思っていた義家族は唖然。おばあちゃんは、すべての経営権をタケルに譲ると言い、義家族には新しい仕事を探すよう言い放ちました。経営者一家であることに甘んじていた彼らは、仕事ができないことで有名です。再就職先などあるのでしょうか……。
タケルとパニ子はというと、今は厳しくも愛情たっぷりに経営のアレコレを学んでいます。小さいころから嫌な思いをしてきたタケルでしたが、ずっとやさしく見守ってきてくれたおばあちゃんのおかげで、いい人生になりそうです。どんなときも誠実に生きていれば、誰かが見ていてくれるのですね。