突然オフィスに現れたのは…
私たちの会社は、3人の創業メンバーが中心となって立ち上げた組織でした。中でも開発担当の方と営業担当の方は非常に優秀で、現場はこの2人を軸に回っていました。
一方で、社長は少し自由人なタイプ。出社時間も遅く、会議をすっぽかしてしまうこともあり、「まあ、現場が回っているうちはいいか」と、社員もあまり気にしないようにしていました。
そんなある日、社長のお母さまが突然オフィスにやって来たのです。最初は「息子の会社を見てみたい」というご様子だったのですが、次第にその態度は変わっていきました。
「ちょっとこれ持って」から始まった違和感
数日後、お母さまが両手にたくさんの買い物袋を抱えてオフィスに再登場。「これ、車まで運んでくれる?」と笑顔で私に声をかけてきました。
仕事中だったため「すみません、今は手が離せなくて」と答えると、少しムッとした表情で「息子の会社の社員なんだから、少しぐらい手伝ってくれてもいいのに」と言われてしまいました。
その場はやんわりと断ったものの、以降も「お茶をいれて」「荷物を運んで」といった私的なお願いが続くようになり、社員の間で少しずつ困惑が広がっていきました。
取締役就任の“サプライズ発表”
そして数週間後。社長が突然、「母を取締役として迎えることにした」と発表したのです。社員一同、耳を疑いました。これまで経営に関わっていなかった方が、いきなり役員になるなんて……。
翌月、臨時の全体ミーティングが開かれました。お母さまはマイクを手に取り、堂々とこう言ったのです。
「これからは私もこの会社の一員です! 皆さんにはどんどん頑張ってもらいますからね。ビシビシ働いてもらいますよ!」
会議室は一瞬静まり返り、その後、なぜか笑いが起きました。それは「冗談ですよね?」という意味の、苦笑に近い笑いでした。
社員の決断と、その後
なんと、現場を支えていた2人の取締役が社長に直談判し、「このままでは会社が機能しなくなる」と退職を申し出たのです。
私を含めた社員の多くも、それぞれのタイミングで退職する決意を固めました。
その後、2人の元取締役が新たに立ち上げた会社に私も合流。今は以前と同じ仲間たちと、落ち着いた環境で働いています。
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経営者にとって家族は大切な存在ですが、会社は公の場であり、私的な関係をそのまま持ち込むとトラブルを招きかねません。「会社を動かしているのは人」であることを忘れず、立場に関係なく互いを尊重しながら働ける環境こそが、本当の意味での“強い会社”なのかもしれませんね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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