クレクレママとの付き合いに悩む
B子さんは、会うたびに「私、シンママで大変なの! 夫婦揃っている家庭は、私たち親子を支える義務があると思わない?」が口癖の、いわゆる「クレクレママ」でした。
最初は何か力になれたらと思って話を聞いていましたが、要求はエスカレートする一方。娘がおろしたての靴を履いていけば「Aの靴は泥だらけ。かわいそうだから交換してよ」と真顔で言ってくる始末で、私はすっかり辟易していました。
そんなある日、娘が「週末、Aちゃんと公園で遊ぶ約束した!」とうれしそうに報告してきました。正直、B子さんとは顔を合わせたくありません。その憂うつな気持ちを抱えたまま、夜を迎えました。
「理想の夫」の仮面と、私の冷めた心
その夜、夕食の片付けをしながら、私はポツリと愚痴をこぼしました。
「はぁ……週末、B子さんに会うの、気が重いなぁ……」
夫は、テレビから目を離さないまま「んー? ……あぁ、前に言ってた人か」と気のない返事をし、少し間を置いてから「……じゃあ、俺も一緒に行くか〜」とだけ言いました。
家での夫は、家事や育児に非協力的なうえに浪費家。しかし家の外に出れば、スイッチが入ったように完璧な「理想の旦那さん」に変身するのです。
ご近所さんや保育園のママ友たちの前では、驚くほど人当たりが良くて、気の利く夫を完璧に演じきります。みんな、そんな彼を信じて疑いません。その裏で、カードの明細を隠したり、平気で嘘をついたりしているなんて、誰も知らないのです。
そのため、夫が「一緒に行くか」と言ってくれたときも、私の頭に浮かんだのは感謝の言葉ではありませんでした。
夫がB子さんと会話しても、どうせ解決しないだろうと思いましたが、娘が「パパも一緒に公園行けるの!?」とうれしそうにしていたので、週末は家族で公園へ行くことにしました。
公園で夫とママ友が対面し…
週末、公園に行くと、夫はB子さん親子を見るなり、いつもの「完璧な夫」のスイッチを入れ、にこやかにあいさつしました。
「いつも妻と娘がお世話になっています。〇〇です」
その瞬間、B子さんの目の色が変わったのがわかりました。容姿が整っていて、物腰も柔らかい夫は、彼女の目には「理想的な夫」として映ったのかもしれません。
「こちらこそ! いつも奥様には良くしていただいて……。それにしても、すごく素敵な旦那様!」
B子さんは私の隣で、あからさまなアプローチを開始。夫もまんざらでもない様子で、スマートに会話を弾ませています。
そして帰り際、子どもたちが「帰りたくない」とぐずってしまったので私が対応していると、その間にB子さんがメモのようなものを夫に渡している様子が見えました。きっと、連絡先が書かれたメモでしょう。
夫はためらうことなく受け取り、財布にしまいました。私はその光景を、見てみぬふりしたのでした。
ママ友の略奪宣言と、私の決断
それから数日、夫の帰りは遅くなり、スマホを肌身離さず持つようになりました。そして保育園のお迎えのとき、B子さんが勝ち誇ったような顔で私にこう言ったのです。
「あなたの旦那さん、私がもらうわ♡」
やっぱりか……と思いました。公園で夫にメモを渡すB子さんを見て、こうなることはなんとなく予感はしていました。しかし、いざ面と向かって言われると、その厚かましさに言葉を失います。
「……どういう、意味ですか?」
私の問いに、B子さんは勝ち誇ったように笑って続けました。
「言葉通りの意味よ。彼ももう、あなたとの生活は限界みたい。私のほうが、彼のことを理解してあげられるの」
その言葉を聞いて、妙に冷静になっている自分がいました。私の中で何かが吹っ切れたのです。もう、すべてを終わりにしよう……そう思い、何も答えずにB子さんの前から立ち去りました。
その夜、私は夫にB子さんとの関係を問い詰めました。彼はいつものように嘘をつき「何もない」としらを切りましたが、B子さんに言われたことをそのまま伝えると、開き直ったように「あぁ、その通りだよ。俺はB子さんを守りたいんだ」と言い出しました。
私は、こう切り出しました。
「あなたが彼女を選ぶなら、私は身を引きます。でも、娘を育てるための慰謝料と養育費だけは、きっちり責任を取ってもらうから」と。
プライドの高い夫は、私に謝罪するよりも、B子さんと一緒になる道を選びました。この流れは、私にとってはある意味、想定内だったのです。
ハイスペ夫を射止めたはずが…ママ友の悲惨な末路
離婚が成立してから1カ月後、B子さんからわざわざ電話がありました。
「離婚してくれてありがとう! これで彼と堂々と一緒になれるわ。子ども同士は仲良しだし、これからもよろしくね♪」
電話の向こうで明るく話す彼女に、私は「お幸せに……」とだけ伝えました。
しかし、その幸せは長くは続きませんでした。
わずか1週間後、保育園のお迎えに向かうと、鬼の形相のB子さんが近づいてきたのです。
「どういうことよ! 大手企業勤めだって言うから信じたのに、契約社員で給料も全然ないじゃない! 生活費も入れないで、私のカードまで勝手に使ってるのよ!?」
そう、夫は大手企業に勤めてはいるものの、雇用形態は契約社員。そのことを隠し、収入以上の生活をすることで自分のプライドを保っていたのです。そして、その生活を裏で支えていたのが、他ならぬ私でした。寄生先が、私からB子さんに変わっただけの話だったのです。
「あなたが欲しがって、選んだ人でしょう? 私はもう関係ないわ」
私が冷静にそう告げると、B子さんはその場に崩れ落ちました。
その後、B子さんはすぐに夫と別れたそうです。ほとぼりが冷めたころ、元夫から「B子に騙されたんだ。やっぱり俺にはお前しかいない。やり直してくれないか」と連絡がありましたが、私はそのメッセージを一度だけ読んで、何も返さずにブロックしました。もう二度と、あの見栄と嘘にまみれた生活に戻るつもりはありません。
大変な道のりでしたが、私はようやくしがらみから解放され、娘と二人、穏やかな毎日を送っています。あの日の非常識なママ友との出会いは、結果的に冷え切った夫婦関係を終わらせるきっかけとなりました。今はただ、娘と私の新しい人生を、前向きに歩んでいこうと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。