お弁当をめぐる違和感
ある日、夫に「どのおかずが一番おいしかった?」と聞いたときのことでした。夫は「ハンバーグと卵焼き」と答えましたが、その日は入れていなかったおかずです。
「そんなの入れてないよ」と言うと、「勘違いした」と笑ってごまかす夫。私は少し引っかかりましたが、翌日からはちゃんと入れたものを答えてくれたので、気にしないようにしていました。
けれど数日後、夫のスーツのポケットからランチ代のレシートが出てきました。そこには会社近くの飲食店の名前と、2名分のランチ代が印字されています。「昼はお弁当を食べているはずなのに……」。違和感は一気に大きくなり、私は心の奥に不安を抱えるようになりました。
食事会で後輩から衝撃の暴露!
1カ月ほど経ったころ、夫の上司が開く食事会に夫婦で参加しました。そこで紹介されたのが、夫の後輩のA太さん。すでに頬が赤く、始まった時点で酔いが回っている様子でしたが、食事会が進むにつれてさらに酒量が増し、口ぶりも怪しくなっていったのです。
最初は仕事の愚痴や武勇伝を大声で話していただけでしたが、やがて話題は夫のことに移っていきます。
「先輩、毎日俺に弁当を回してくれるんですよ〜。だって、いつもB美さんとランチしてるじゃないですか」
A太さんの衝撃発言に、場の空気が凍りつきました。慌てた夫は「いや、B美はただの同僚だ。仕事の相談にのっていただけだ」と取り繕いました。
私はどういうことなのか問い詰めたい気持ちでいっぱいでしたが、食事会を台無しにするわけにもいかず、何も言い返せずにいました。
慌てた夫が無理に話題を変え、上司も気を使って別の話を振ってくれましたが、私の耳には何も入ってきません。笑顔を取り繕いながらも、心の中では「やっぱり」と確信に近い思いが渦を巻いていました。
帰宅後に問い詰めた結果…
その夜、帰宅してから夫を問い詰めました。最初は「誤解だ」「本当に相談を受けていただけだ」と必死に否定していました。
けれど私は一歩も引かず、こう突きつけました。
「じゃあ今すぐスマホを見せてよ。この場で」
一瞬固まり、視線を逸らす夫。
しばらくして観念したように深くため息をつき、
「……ごめん。同僚のB美と関係があった。弁当は、節約したいと言っていたA太に食べさせていたんだ」
と白状したのです。
私は、もうこの人とはやっていけないと悟り、離婚を決意しました。
愛妻弁当を他人に食べさせた夫の末路
食事会でのA太さんの暴露はすぐに社内にも広まり、夫とB美の関係は会社中の噂となりました。二人は居づらくなって最終的に自主退職。夫は家庭も仕事も失うことになりました。
離婚の手続きを進めていたとき、夫がぽつりとこぼしました。
「……俺のせいなのに、A太がすごく後悔していて、奥さんに謝ってほしいって言ってた」
もちろん悪いのは夫ですが、二人の不倫関係を知りながら、私の手作り弁当をこれ幸いと食べ続けていたA太さんを許す気にはなれません。けれど、あの日彼が酔った勢いで口をすべらせなければ、不倫の事実は闇に葬られていたかもしれません。皮肉ですが、感謝の気持ちも少しはあります。
私は離婚を通して、自分の人生を見つめ直すきっかけを得ました。これからは誰かのためだけではなく、自分のために料理を楽しみたい。お弁当作りが「裏切りの象徴」ではなく、私らしい生活の一部として戻ってくる日を大切にしていきたいです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。