何かと張り合ってくるマウントママ
ある日、仲良しのママ友たちとカフェでランチをしていると、そこに居合わせたA美さんが、私たちのテーブルに加わってきました。彼女は開口一番、「こんにちは、皆さんでランチ? 私、ここではコーヒーくらいしか頼まないの。この後、主人とホテルのラウンジに行くから」と言い、自分の持っているブランドバッグのロゴをこちらに見えるように置きました。
「そうなんだ。そういえばさ……」と、私たちはA美さんのマウント発言を軽く受け流し、別の話題へ。話の流れで、私がネットショップで洋服を販売していることを知ったA美さんは、私を上から下まで眺めてこう言いました。
「へえ〜、お洋服を。でも今日の格好、すごく地味じゃない?」
その言い方に少しカチンときましたが、他のママ友が「〇〇さん(私)の服、すごく人気なんだよ!」と助け舟を出してくれたので、その場は穏便に収まりました。しかし、それ以来、A美さんは私に会うたびに、何かと張り合ってくるようになったのです。
時には、私のネットショップのSNSアカウントが彼女の投稿にメンションされて、「子ども服は素人さんのハンドメイドより、やっぱりプロが作った上質な服を着せたい」といった内容が書かれていたことも……。悔しい気持ちはありましたが、A美さんとは深く関わらないようにしようと割り切ることに。
住む場所を見下されたものの意外な結末に
当時、私たちは家の新築工事のため、一時的にアパートで暮らしていました。ある日、そのアパートの前でA美さんにばったり会うと、彼女は同情するような目で「狭い家は大変じゃない? お子さんもいるのに……」と言い、さらに「うちはもうすぐ、あそこの新しい住宅街に引っ越すのよ! あの住宅街は裕福な家庭ばかりが集まるから、このへんと違って素晴らしい環境なのよ〜」とお決まりのマウント発言。
悪気はないのかもしれませんが、何とも言えない気持ちになった私は、特にマイホームの建設中ということは伝えずにその場をやり過ごしました。
実は、私たちが建てていた新居の場所は、A美さんが話していたのと同じ住宅街。夫が建築家ということもあり、土地探しから設計まで、夫婦でこだわって建てた家です。
引っ越しが落ち着いてしばらく経ったころ、幼稚園へ娘を送っていった帰り道、家の前で他のママ友と立ち話をしていると、角を曲がってA美さんが歩いてきました。
彼女は、私とその背後にある家を見て、明らかに驚いた顔で立ち止まりました。
「……ここ、〇〇さん(私)の家だったの?」
気まずそうな彼女に、私はいつも通り「こんにちは。A美さんもご近所でしたよね。これからよろしくお願いします」とだけあいさつをしました。A美さんは小さく会釈をすると、足早に去っていったのです。それ以来、彼女から話しかけてくることはなくなり、顔を合わせても軽くあいさつを交わす程度になりました。
どうやら、A美さん一家が引っ越した先は、実際は住宅街から少し外れた場所のようで、そのことを知られるのが気まずかったのかもしれません。
それから半年ほど経ったころ、別のママ友から「A美さん、離婚して遠くに引っ越したらしいよ」と聞きました。噂によると、旦那さんが彼女の見栄っ張りな性格に疲れてしまったのが原因だとか。とはいえ、詳しいことはわかりません。
この出来事があってから、人と自分を比べることの無意味さを改めて感じています。自分たちの生活を大切にし、身の丈に合った暮らしの中で幸せを見つけていく。今は、それが一番だと心から思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。