そんなとき、実姉の忘れ形見・ハルキの育児を手伝うことになったのですが……。
甥を引き取ったものの…
私が預かることになったのは、5歳になる甥っ子・ハルキです。ハルキは5年前に他界した実姉の子。姉の亡きあと父親に育児放棄され、施設に預けられていたのですが、私の両親が引き取ることになりました。しかし両親も高齢なので、私も手伝うことになったというわけです。
いざハルキを迎え入れてみると、相当の暴れん坊! 私がやさしく声をかけても「うっせえブス!」 と言って悪態をつくばかり。手を焼く私を見て、夫は「お前じゃ舐められて当然だな!」と笑い、ついには「俺が父親代わりになってやるよ」と、大層な発言までする始末。
偉そうな口ぶりで自信過剰に振る舞う夫に、私はますます不安がつのりました。どれほど子育てが大変なことか、ちゃんと理解しているようには見えず、きっと口だけだろうと思わずにはいられません。
甥の心を開いたきっかけは?
ハルキは相変わらず両親や私に心を開きません。夫は案の定いつも他人事で、適当なことを言うばかり。積極的に関わることはしませんでした。
しかしハルキの反発は寂しさの裏返し……。私は腹を括り、ハルキを実の息子だと思って育てようと決意しました。間違っていることに対しては厳しく叱り、その分愛情もたっぷりと与えることにしたのです。
ある日、おもちゃを投げつけるハルキに対して、私は勇気を振り絞ってキツく注意しました。これまで何をしても許していた私に怒られてハルキの顔は一瞬こわばりましたが、すぐに素直に謝ったので私がたくさん褒めたところ、初めてハルキが笑ってくれたのです。
それからというもの、ハルキの様子は劇的に変わっていきました。何が正しくて何が間違っているかをきちんと示すことで、彼は学びを得ているよう。今では私にとても懐き、少しずつ私たちの距離は近づいていったのです。
子育てを邪魔する夫
しかしそんな私たちを見て、夫は「他人のクセに叱るなよ! 親でもないのに偉そうに!」とケチをつけます。「そんなに構わなくても放っておけば勝手に育つんだ!」「所詮他人なんだから、そんなに構うな」と言い、私の子育てを邪魔するようになりました。
おそらく夫は、ハルキとの関係性を着実に築いていく私を見て、ここでも自分より優位に立っていることが許せなかったよう。子育てにおいても私にマウントを取ろうとしているのが一目瞭然です。
口では「ああしろこうしろ」と偉そうなことを言っても実際には何もしない夫。自分の非も認めず成長もしない姿を、ついハルキと比べてしまい、私はゲンナリしてしまいます。こんな大人を身近においておいては、ハルキの教育に良いわけがありません。
今更謝っても、後の祭り
私が下した決断は、夫との離婚。すぐさま弁護士に相談し、問題発言を録音するなどし、離婚に向けた準備を整え始めました。離婚届を突きつけられた夫は大慌て! 高圧的な態度が一変、今になって謝罪をしてきましたが、散々否定され、見下され、行動を束縛されてきた私は、そう簡単に許すことはできませんでした。
しかし夫は、私から離婚を言い渡されたことでプライドが傷ついた様子。ひどく騒いで抵抗しました。それが仇となり、近所の人に通報され警察のお世話になることに……。警察に連行されるところを近所の人たちにジロジロ見られたことがよほど嫌だったようで、夫はついに離婚を承知し家から出ていくことになったのでした。
ハルキと2人の生活を始めた私。今ではすっかり心を通わせ、本当の親子のようです。周りの大人に愛され、すくすく成長するハルキは私の生き甲斐になりそうです。
後悔するような行いをしてしまっても、反省し振る舞いを正すことで、人は成長できます。夫ももう少し早く自分の過ちに気付き、我が身を省みれば、違った結末になったかもしれませんね。