話は結婚式3カ月にさかのぼります。私は仕事をしながら準備に追われていました。でも、そんな忙しさも幸せだと感じられる日々。唯一の心配事といえば、義姉と甥の存在でした。
義両親には恵まれたけれど…
彼の実家で結婚式の打ち合わせをしていた私。義両親のことは大好きで、本当に恵まれていると思っています。問題なのは、離婚して5歳の息子とともに出戻ってきた義姉。
甥はひどくワンパクでイタズラ好きです。それなのに、義姉は叱ることもなく放置していました。見かねた義父がきちんと面倒を見るように言っても、どこ吹く風。「この調子が続くようならいつまでも置いてはおけない」という義父の言葉も、そこまで重く受け止めていません。
クセのある義姉だなと思っていたものの、同居をするわけでもないので、私たちの生活に影響はないと考えていました。
義父の緊急手術
そんなとき、結婚式がもうすぐだというのに、義父の喉にとても悪い病気が見つかってしまい、緊急手術をすることになりました。幸い早期発見だったので命は助かりましたが、声帯を切除して声が出せない状態になりました。
こんな状況で結婚式はできるのか……義父に無理なく列席してもらえるか……。彼と相談し、義父の体調が完全に回復するまで延期を決めましたが、そこで義姉から横やりが入りました。
「えー延期なんでダメ! 延期したら息子の子ども用スーツが着られなくなっちゃうじゃない! かわいい姿をSNSにあげられなくなっちゃう!」
義姉は自分のことばかり。本当に呆れてしまいます。
結局、義母や麻酔から目覚めた義父の強い要望で、予定通り結婚式を挙げることになりました。
子どもならなんでも許されるのか!?
ついに結婚式当日。
招待客はなにやらヒソヒソと話しています。「何だあれ……親は何してるんだ」「まったく……誰の子ども?」そんな声が聞こえる式場では、甥が大暴れ! 奇声をあげて走り回り、やりたい放題です。格好だけは子ども用のスーツでビシっときめているものの、行儀よくする様子はありません。
母親である義姉は飲み食いするばかりで、息子のことなんてお構いなし。義母が「なんとかしなさい!」と注意をしてくれましたが、「子どもだから許してw」と反省する様子はありません。主賓のスピーチも寄声で何も聞こえずに終わってしまいました。
それでも結婚式は進み、シャンパンタワーが登場。これは私たちがとても楽しみにしていた余興です。皆さんに最高のシャンパンを飲んでもらおうと、お酒のランクもアップしたのですが……。
ガラガラガッシャーン!
招待客の悲鳴とともに、タワーはなぎ倒されてしまいました。甥がシャンパングラスめがけて突っ込んできたのです。結婚式はメチャクチャ……。ずっとこらえてきた我慢もとうとう限界に達し、私はその場で座り込んで泣いてしまいました。
暴れん坊の甥を止めたのは…
そのとき、司会者から思わぬアナウンスが入りました。
「では……披露宴を続けさせていただく前に、私より1点お願いがございます。躾のなってない猿と、猿の飼い主は今すぐご退席ください!」
その瞬間、会場内にいるすべての人の目線が、義姉と甥に向けられました。実はこれ、義父の指令だったよう。手術で喋れなくなったため、司会者にメモを渡して代読してもらったのでした。
「新郎のお父様のお言葉を代弁しますと、こちらのお猿母子……いえ失礼しました、新郎のお姉さまと甥御様のご退席を促されております」
義姉の顔は真っ赤です。甥とともに警備スタッフによって会場から引きずり出されていきました。
涙でいっぱいの乾杯
式場のはからいで、シャンパンタワーは仕切り直しに。無事、感謝の気持ちを込めたシャンパンを振る舞うことができました。私の目は涙でいっぱいです。こうしてジェットコースターのような一日が終わったのでした。
今回の一件で、私はますます義両親のことを好きになりました。本当に最高の人たちと家族になれて幸せです。
子どもの世話や躾さえまともにできない義姉。こんなに素敵な両親に育てられたのに、不思議でなりません。自分のことをちゃんと躾けてくれた両親の偉大さに気づき、改心してくれることを願います。