私は、仕事から帰った夫に「一緒に病院に行ってほしい」と伝えました。すると夫はひどく面倒くさそうな顔……。それでもなんとか説得して、一緒に病院へ行くことになりました。
入院して大丈夫…?
「赤ちゃんを安全に産むために、やっぱり入院をおすすめします」
診察室に入ると、入院を進められた私。母体の栄養状態がかなり悪化していたよう。たしかに、妊娠週数が進んでもつわりが続き、ごはんが食べられていませんでした。
赤ちゃんのためにはすぐにでも入院したいところですが、わが家にはひとつ問題があります。それは妊娠にまったく理解がない夫。こんな体でも家事は全部私がやっていて、それが当たり前だと思っています。
その話を聞いて先生はビックリしていましたが、いい考えがあると言い、私にそっと耳打ちしてきました。……なるほど! もしかしたらいい方向に行くかもしれないと思った私は、先生の提案に乗ることにしました。
夫を変えたのは…
診察室を出ると、座りながらスマホゲームをする夫の姿が。周りにたくさんの妊婦さんがいるというのに、席を譲ることすら考えない夫にゲンナリしてしまいます。
入院することになったと話すと、「え? 入院? なんで? 妊娠は病気じゃないだろ?」と相変わらず理解がありません。
「俺のメシはどうすんの?」
私にトドメを刺したのがこのセリフ。聞いた瞬間、私の中で何かがプツンと切れたのを感じました。夫にとって私は、家事要員でしかないようです。
我慢の限界がきた私の口からは、自然と暴言が飛び出していました。
「このままあんたと過ごすなんて無理! もう一緒に居られない! あんたみたいなダメ夫いらない!」
夫はさすがにまずいと思ったのか、謝ってきました。その気持ちが本当なら、今日の午後に開催される「妊婦体験教室」に参加するように言いました。参加しないなら離婚するからと伝えると、慌てて午後の予定をキャンセルしていたようです。
教室では、つわりは酷い二日酔いの状態が何カ月も続くようなものであることや、大きくなったおなかが7~8キロもあることを丁寧に説明してくれて、器具を使って実際に妊婦の体を体験させてもらえました。しゃがもうとしただけでバランスを崩して倒れてしまった夫をロックオンして、先生はひと言。
「この状態の奥さんに、お風呂掃除やトイレ掃除、料理や洗濯をしろという人も、中には居るんですよ~!」
夫の表情が青ざめていきます。そして、その後は先生の話にも耳を傾け、なにやら考え込んでいました。
「くれぐれも、おなかには自分の子孫がいて、奥様はそれを大切に育みながら生活していることを、旦那様方はお忘れにならないように!」
こんな素敵な言葉で教室は終了。夫は今までの自分は間違っていたと、謝罪してくれました。先生の作戦は大成功でした!
すっかりパパらしくなった夫
別人のようになった夫は、早々に入院の手続きを進めてくれました。
「俺のことは気にせずしっかり休んで! 安心して元気な赤ちゃんを産んでくれ!」
夫が言ったその言葉にウソはありませんでした。日に日に家事を極め、カレーが作れるようになったり、洗濯物を早くたためるようになったり、私が入院中にめざましい成長をとげているようです。
さらに驚いたのは、赤ちゃんが産まれたら育休を取ると言ってくれたこと。これまで家庭よりも仕事を優先していたのに、この変わりよう……。ついこの間は「俺のメシは?」なんて言っていたのが、信じられません。これなら、私も安心して出産を迎えられそうです。2人で協力して、大事に大事に子どもを育てていきたいと思います。
妊娠している女性がどんなにつらいか、実際に体験をするとよくわかるようです。今回のような「妊婦体験教室」がもっとメジャーになり、父親になる人全員に体験してほしいと思ってしまいますね。