私が働いている学習塾の社長夫人・エミコさんはとても社員想いのやさしい人で、社員が働きやすいように事務所の空き部屋を子どもたちに開放してくれているんです。託児スペースがあるおかげで、私は子どもたちを連れて仕事に行くこともあります。
社員想いの素晴らしい社長夫人
エミコさんは常々「社員のあなたたちがいつも笑顔で子どもたちに接しているのを見て、私確信しているの。子どもが輝くと、周りの大人たちもイキイキと輝くって。私は、子どもも大人も元気になれる学びと成長となる場を作っていきたいのよ」と話していました。
しかし……
社長が女を作って夜逃げ!?
学習塾の社長は、エミコさんと違って塾の経営や子どもの成長に興味がない様子。私の子どもの相手をしてくれているエミコさんに「客でもないやつに付きっきりになって、それ金になんのかよ?」と言い、いつもお金のことばかり考えているような人です。
ある日、いつものように出社すると社員が大騒ぎしていました。同僚に聞いてみると、「社長が女の人と一緒に、会社のお金を持ち逃げしたんだって!」と言うのです。
社内が騒然としている中、沈痛な面持ちでエミコさんが現れました。
社長夫人のつらい決断
私たちの前に立つと、「みんな、お騒がせしてしまって本当にごめんなさい。このままだと、みんなの給料が払えないの。つらいことだけど、塾を閉鎖するほかなくて……」と涙ながらに打ち明けました。
肩を落とすエミコさんの姿に、私たちには何もかける言葉が見つからず、生徒たちに連絡をして、私は職を失うことになりました。
義実家を継ぐため、田舎へ移住
家に帰って夫に話をすると、「家族みんなで俺の地元に移るのはどうだ?」と予想外の提案が。どうやら、義父からそろそろ農家を継いでほしいと言われていたようです。義実家で収穫した米と野菜の直売所を開くことになり、その協力もしてほしいとのこと。
義両親を交えて話し合った結果、私たち一家は田舎に移住し、義実家に住むことになりました。こうして私は身の振り方が決まったのですが、私はエミコさんのことがずっと気になっていました。
娘の予想外の提案に……
最後の出勤日、涙ながらに最後の挨拶をするエミコさんに、娘が突然「おばさん! 一緒に田舎に住もうよ!」と誘ったのです!
私もエミコさんも最初は驚きましたが、これからオープンする直売所のスタッフを募集していたこともあり、トントン拍子で話が進みました。
会社の精算のために自宅を売却したエミコさんに義実家の空き部屋を貸し、一緒に行くことになりました。
長年の夢を叶えた夫人
移住後に開いた直売所はエミコさんの手腕のおかげで、大人から子どもまで人気がある繁盛店に成長! 元気になったエミコさんは、この地で新たな学習塾を開くことを決意。移住から3年後、田舎の大自然をフル活用した、キャンプやイベントができる体験型の学び塾を作りました!
塾長はもちろんエミコさん。私も講師として塾で教鞭をとることになりました。小学生になった娘と息子も塾生になり、毎日塾でできた友だちと自然の中で仲良く学んで遊んで、本当に楽しそうです。
人生は何が起こるか本当に分からないものです。人とのつながりを大切にして、前向きに生きていれば、いつのまにか大きな幸せを手に入れているものなのかもしれません。これからもエミコさんと一緒に子どもたちの成長を見守っていきます。