会社員の夫、4歳の息子と共に暮らす私。夫は時々、職場の人と高級レストランなどでの食事を楽しんでおり、その様子をSNSにあげていました。正直うらやましく思う気持ちはありましたが、毎晩遅くまで働いて、しっかり稼いできてくれる夫に対し、私は不満を抱いていませんでした。
そんなある日、うちの前で私を待ち伏せしていた女性が。その女性は私を見るなり、「あの人を不幸にしないで!」「子どもの世話もろくにできないなら産むんじゃないわよ!」と暴言を吐き、強烈なビンタを食らわせてきたのです――!
嘘つき夫
私と夫の名前、そして住所まで知っている女性からビンタされて、私の頭の中は真っ白に。とりあえず家に入り、夫に連絡すると……「本当に俺の名前言ってたの?勘違いじゃない?」との返信が。
ビンタ1発とはいえ、妻が危害を加えられたのに……。夫の態度にモヤモヤしつつ、私は「まだ家の前にいるかもしれないじゃない。次は刺されちゃったりしたらどうするの!?」「息子にも危害を加えられるおそれがあるし、とりあえず今から警察に電話する」と返しました。
「警察!?」と驚いた様子の夫。「何もそこまで……大げさじゃないか?」と、私が警察に連絡するのを阻止したいようです。
夫も私も知らない人となると、完全に不審者。通報して身元を特定してもらうまで、安心できません。
「もしかして……あの人に心当たりあるの?」「浮気相手?」と聞くと、夫は「違う!!浮気はしてない!!」と否定。私は「浮気『は』」という部分に違和感を覚えました。嫌な予感がしつつ、夫を問い詰めると、「浮気はしてない……けど、お金はもらってた……」との返事が。
「10年間生活出来てたのはその女性のおかげなんです」
「警察に言うのはやめてほしいです」
「は?」
私も初耳だったのですが、夫は私と知り合う前にホストをしていたそう。その時にお客さんとして来ていた人が、私をひっぱたいた女性だったのです。
夫によると、「俺のことずっとかわいがっててくれて……働かなくていいから日中うちにいてほしい。日当は出すからって言われて……」とのこと。あの女性はいわゆるパトロンだったそう。そして、夫は無職だったのです……。
時々SNSに写真をあげていた高級レストランも、そのパトロンの女性に連れて行ってもらっていたそう。私はすっかり騙されていたのです。
たくさんの嘘を重ねていた夫。腹の虫がおさまらない私は「帰ったら一発殴らせて」とだけ言って、メッセージを終わらせようとしましたが、夫は「俺にはお前しかいないから!」「ちゃんと信頼取り戻して、今度はちゃんと俺の稼いだ金で2人のこと養うから……」と耳ざわりの良い言葉を並べるのでした。
口だけの夫
その日の夜――。
息子を寝かしつけた後、私たちは真剣に話し合いました。夫の話を要約すると、あの女性は旦那さんを早くに亡くしたお金持ちの未亡人。ホスト時代から夫に援助していたそうですが、私と結婚した後もずるずると関係を続けていたようです。もちろん、その女性は私や息子の存在も知っているとのこと。
「次あの人と会ったら、マジで離婚するからね」と言った私に、「もう会わないって約束する」「許してくれて本当にありがとな」と反省の言葉をつむぐ夫。
「世話にもなったし、関係切りづらくて……でも今回のことがあって、かえって良かったかも」「明日は早起きして仕事探しするから!」「今まで本当にごめん、世界一愛してる」
息子のためにもひとまず離婚はしない、と決めた私。夫が心を入れ替えてがんばるならば、私も支えていこうと思っていたのです。この時までは。
ほら吹き夫の末路
数日後――。
「就職先決まったぞ~~~!!」という夫からのメッセージ。しかし、もう私には夫への情が1ミリたりとも残っていませんでした。
「あー知ってる、あの女性のおうちで執事するんでしょw」「勝手にがんばって、離婚届は後日送るから」
仕事のあっせん所へ行くふりをして、例の女性のもとへ通っていた夫。別につけていたわけではありません。
「何で知ってんの?お前みたいな粘着質でうざい女、俺マジで無理」「ラクして稼いで何が悪いわけ?実際それでお前たちも生活できてたじゃん」「正直かわいい奥さんと子どもいるのって思って我慢してたけど、俺パトロンいるから飢えないし。もう離婚でいいや」
急に開き直った夫に対し、私は「じゃあ慰謝料と養育費については弁護士通すから」と淡々と告げました。すると、「証拠がないと、俺の有責にはできないでちゅよ~~~?笑」「俺のパトロンの家も素性も知らないくせに、どうやって慰謝料取るんでちゅか~~~?笑」と夫は煽ってきました。
「今、そのパトロンさんの家にいるんだけど」
実は、ビンタをお見舞いされたあの日、その女性から電話番号を書いた紙を渡されたのです。「何か文句があるなら、私に直接言ってきなさい」という言葉とともに。
翌日、夫が職業あっせん所に行くと家を出て行ってから、私はその女性に連絡。「心を入れ替えて働くそうなので、もう夫はそちらにはうかがいません」と言うと、「え?今来てるわよ?」と返されました。
その女性も何かがおかしいと思ったのか、あらためて直接会って話すことに。すると出るわ出るわ夫の嘘が。
私は競馬とパチンコ好きの借金まみれで、浮気不倫し放題の尻軽女ということにされていました。私の話を聞いて、夫が嘘を重ねていたことに気付いたそう。
その女性は夫のことを息子みたいに思っていて、良かれと思ってお金をあげていたようなのですが、実情を聞いて怒り、最後には「本当に申し訳ないことをした」と言って泣き出してしまいました。
その女性の協力を得た私は、女性の家に監視カメラや録音機器を設置。何も知らない夫がテレビを見たりゲームをしたりしながら、私の悪口を言う様子が鮮明に記録されています。
十分な証拠を集めた私は、離婚を決心。息子のことを考えて一度は踏みとどまりましたが、こんな父親の近くで育てるのは息子のためにならないと思い直したのです。
「働いてないのに、慰謝料なんて払えるわけないだろ……」「ごめんって、謝るから考え直してくれよ……」と、泣きついてきた夫。「俺ホスト時代結構稼いでたんだよ?イケメン旦那、手放していいの?後悔しない?」と、自分の価値を売り込むことも忘れていません。
しかし、もうその手は通用しません。「こっちの心配はいいから、これから払う慰謝料と養育費のことだけ考えておいて」とだけ言って、私はやり取りを終わらせました。
その後――。
結局弁護士を通して、私たちの離婚は成立。私は実家へ戻り、息子と新しい生活をはじめました。仕事や育児に追われる日々ですが、なかなか充実しています。
例のパトロンの女性からは、夫の嘘を信じてしまっていたこと、あの日ビンタしていたことについて何度も謝られました。しかし、あの1件がなければ、私と息子は夫の嘘に気付かず、今ものうのうと暮らし続けていたことでしょう。真実を知るきっかけをくれた彼女には、今は感謝しかありません。