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ボロボロの旅館を継いだ私が社長令嬢と結婚⇒「親のために結婚しただけですから」花嫁の正体は

独身男の私は、先日まで東京で不動産営業をやっていましたが、実家のオンボロ旅館を継ぐために辞職して帰郷したばかりです。子どものころの甘酸っぱい思い出が詰まった地元も、今ではさびれた温泉街。良質な源泉はあるものの、再建は簡単ではありませんでした。

 

傾く旅館の経営…

私が戻ってすぐの月末。父が旅館の収支試算表を手にうなだれていました。「これじゃつぶれる……」と。

 

このところ観光業の景気は悪く、近所の老舗旅館も次々と廃業。聞けば、幼なじみの実家もどこかの開発業者に宿を売り渡すとか。「開発業者はここに巨大な観光施設を建てるそうだ。お前の親が承諾しないから困っているらしい」と言われたのを思い出した私は、父に売却の話をしてみました。

 

しかし頑固な父がうなずくはずもなく……。意外なことを言いだしたのです。「実は、ウチに資金援助を申し出てくれた会社がある。銀行への返済も肩代わりしてくれるんだと。ただ、1つ条件が……」

 

私は、こんなつぶれかけの旅館に資金援助? と驚きました。困惑して「条件って?」と尋ねると……。

 

「お前がその会社の社長令嬢と結婚することだ。頼む、この縁談を受けてくれ! 孫の顔だって見たい! それがこの旅館を子々孫々続けていく唯一の道だ」と言うのです。

 

今どき政略結婚!?

時代遅れの政略結婚、愛のない婚姻関係。相手にも失礼だと思いつつ、他に決まった女性がいるわけでもない私は、泣きすがる両親の頼みを断れず、ズルズルと式当日を迎えてしまったのです。

 

新婦となる社長令嬢とは、顔合わせで一度会っただけ。かわいらしい顔立ちだとは思ったものの、ずっと仏頂面で、「きっと彼女も望まぬ結婚なんだ」と、適当に地元を案内して終わったのでした。

 

結婚式当日。控室に行くと、その令嬢がやはりムスッとした顔で宣言してきました。

 

「あなたには結婚を約束した女性がいたそうですね。それならそれで結構です。私たちは親の利害関係の上に成立しただけ夫婦関係なので、そのおつもりで」

 

ん? 私に婚約者? どこからそんな話が? しかし、納得がいかない結婚にさんざん抵抗したのは事実なので、図星を突かれた私は黙り込みました。彼女も大きなため息をつき、式は粛々とおこなわれたのです。

 

 

思いも寄らない展開に

結婚して半年が過ぎました。蝶よ花よと育てられた社長令嬢に、若女将としての役など期待していなかった私たちはビックリ。義両親からの資金援助に加えて、旅館の現場を切り盛りするだけでなく、インターネットやSNSでの集客にも取り組み始め、若年層や女性のお客さまが急増したのです。

 

笑顔を絶やさない彼女への印象が変わった私でしたが、今も寝室は別。手も握ったことのない仮面夫婦でした。同じ旅館で働く同僚の関係でしかありません。

 

そんなとき、事件がぼっ発します。なんと私たちの旅館が倒産寸前というウワサが出ていて、食材や備品の業者が次々と契約を切ると言ってきたのです。代金回収の見込みがないから取引をやめたほうが良いという話が流れているそうで……。事実はまったく逆なのに、一体誰が?

 

私が頭を抱えると、妻が言いました。「ウワサの出どころには心当たりがあります。私が何とかしますから、しばらく待っていて」

 

それから数日後……。彼女は、本当にウワサを流した犯人をひっ捕まえて連れてきたのです。

 

開発業者と結託していた犯人は?

妻が連れて来たのは、なんと私の幼なじみでした。「お、お前がウワサ元!? なんでだよ?」と問い詰めた私に、彼は逆ギレ。「お前たちがいつまでたっても開発業者に売ろうとしないからだよ!」

 

なんと彼は、ウチをつぶして土地が開発業者の手に渡ったら成功報酬を受け取る予定だったというのです。どうやら、他の旅館も経営難に追い込み売却をそそのかしていた様子……。さらに、冷たい目で彼を見下ろしながら妻が言い放ちました。

 

「結婚前の私に、夫にはプロポーズをした女性がいるって吹き込んだのもこの人でした。ウチからの資金提供をやめさせるためでしょう」

 

だから結婚当初、彼女はいつもふさぎ込んだ様子だったのか……。全然知らなかった私は、続く言葉にさらに仰天しました。

 

「ここは初恋の思い出がある大切な場所なの。開発業者の手には渡さない、旅館と温泉は私が守る!」

 

 

甘酸っぱい思い出の相手は…

妻が、他の旅館にも開発業者と結託していたことを話すと告げると、幼なじみは、歯ぎしりしながら退散していきました。私は、古い記憶がよみがえりつつあるのを感じながら、妻に聞いてみました。

 

「あの……初恋の場所っていうのは? 君はこの街に来たことがあるの?」

 

「やっぱり気付いていなかった? 私は小学生のころ、1年間だけここに住んでいたの。あなたと遊んだこともあるわ」

 

顔も名前もすっかり忘れてしまっていたけれど……。甘酸っぱい思い出の相手は、なんと彼女だったのです。妻は、思い出の温泉地のピンチを聞きつけ、旅館を助けるため親に相談したのだとか。しかし、再会してみれば当の私は昔のことを覚えておらず、他に婚約者がいると言われて落胆したのだそう。

 

すべてを思い出した私は、彼女に謝罪と感謝の意を告げました。そして、淡い恋心が復活してきたのを感じたのです。

 

その後、ウチの旅館の経営は右肩上がりに。開発業者に売り渡していなかった旅館とも協力し、全員でこの温泉街を盛り上げていく計画も始動。これからは妻と本当の夫婦になって、一緒に地元を守っていきたいと思っています。

 

--------------

旅館再建のための政略結婚かと思いきや、初恋の相手同士だったとは……すてきなお話ですね。開発業者と手を組んで温泉街ごとつぶそうとしていた幼なじみのたくらみを見破ることもでき、一件落着ですね。

 

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