私と妹は中学3年生のとき、シングルマザーの母親を病気で亡くし、母方の伯母夫婦に育ててもらったのですが、その生活はとても苦しいものでした。
なぜなら、伯母夫婦は遺産をもらうために私たち兄妹を引き取っただけだったので、まったく愛情を注いでくれなかったのです。
妹夫婦の葬儀で、姪の押し付け合いに
妹は高校卒業後すぐに、同級生の男の子と結婚したいと言いましたが、伯父や伯母が世間体を気にして大反対! 妹は駆け落ち同然で結婚しました。それから姪も生まれ、私は伯父夫婦には内緒で、妹一家とときどき会っていたのです。
妹夫婦の葬儀のとき、姪はまだ7歳でした。誰が引き取るか親戚で話し合いになりましたが、どの親戚も「うちは無理」「迷惑よ!」など、姪を目の前に押し付け合うばかり。
ただでさえ両親を亡くしショックを受けているのに、あまりにも酷すぎます。泣き出した姪を見て、私は昔の自分を思い出し、「うちの子になる?」と声をかけました。
勢いで引き取ることにしたけれど
勢いで引き取ると言ったものの、私は男の一人暮らしで部屋も汚く、料理もまったくできません。子育てなどできるのかどうか不安でいっぱいでした。頑張って料理してみたものの、うまくいきませんでした。
そんなある日、インターホンが鳴りました。玄関の前には、私と妹が子どものころ仲良く遊んでいた幼馴染みが立っていました。
母が亡くなってからしばらく会っていなかったのですが、今回妹の葬儀に参列してくれたとき、姪を引き取ることになった私を心配して手伝いに来てくれたのでした。
目の前に現れた救世主
思わず「俺、料理がこんなにダメだったとは……。俺の代わりに夕食を作ってくれない? 頼む!」と助けを求めると、彼女はやさしく笑いながら慣れた手つきで料理を始めました。
それからというもの、なんと毎晩料理を作りに来てくれるようになったのです。私と彼女は自然とお互いに惹かれ合い、正式に付き合うことになりました。
姪も彼女のことが大好きになり、「ここに住んでくれたら、ずっと楽しいのに」と言い始めました。彼女は「一緒に住んじゃう? それなら、うちおいでよ!」と言ってくれました。
彼女の意外な職業は
実は彼女は人気のイラストレーターとして活躍していて、私は当時それを全く知りませんでした。彼女は広い高級マンションで一人暮らしをしていたので、彼女の家へ引っ越すことに。それから、3人での幸せな暮らしが始まりました。
私は幼いころ伯父夫婦に煩わしく思われて育てられたことから、「血の繋がりがないと、真の家族にはなれないのかな」と思っていました。しかし今回の出来事で、「家族とは血の繋がりだけでなく、愛情によって成り立つもの」だと実感しました。
今では姪も彼女も、血のつながりはありませんが大事な家族です。これからは彼女と姪と一緒に支え合いながら生きていくつもりです。