プディ・フランと一緒に子犬たちの成長を見守りたかったのですが、さすがに3匹とも家族として受け入れることはできません。1匹だけ残して、2匹は友人にお譲りすることになったのですがーー。
かわいがるから頂戴!
子犬たちはすくすく成長し、ついに受け入れ先の家庭へのお渡し日が近づいてきたある日。幼稚園のママ友・アヤナさんが子犬を見たいと娘のノアちゃんと一緒に遊びに来ました。
ノアちゃんは、娘が事前に注意すべき点を伝えていたからなのか、抱き方も声のかけ方もバッチリ! しかし、ママのアヤナさんは「ぎゃああああ!かわいいいいい!やばいいい!」と、突然大声を出します。
ワンちゃんの聴覚は人間の数倍とも言われているので、近くで叫ぶと驚いてしまいます。注意をしてもお構いなし! 「うちもペット欲しいな〜! こんなにかわいい子犬なら大歓迎だわ! かわいがるから頂戴!」と言ってきました。
命を預けるということ
アヤナさんの態度は子犬を前に思わずテンションが上がってしまっただけで、いざ家族として迎えたときには、正しい対応をしてくれるはず……。そう思っても、命を預けるというのは、簡単な話ではありません。
その場で結論を出せず、後日アヤナさんのご主人も交えて話し合いをすることにしました。すると、アヤナさんのご主人はとても犬に詳しく、受け入れ準備も完璧。これなら任せられると思い、残りの1匹をお譲りすることにしたのです。
幼稚園のうちは、娘を通して子犬の様子を聞いていたものの、娘とノアちゃんは別々の小学校に進学します。卒業以来疎遠になってしまい、子犬の近況はわからなくなってしまいました。
そのころ、私は動物病院で事務のパートを始めていたのですが、ある日すっかり成長したプディとフランの子犬を連れて、アヤナさんがやってきたのです。
無責任な言い分
久しぶりの子犬との再会でしたが、アヤナさんはなぜか怒っていてそれどころではありません。アヤナさんは「こんなに大きくなるなんて聞いてない! だから、この子やっぱり返す! 映えない犬なんてかわいくないもん!」と吐き捨てて、帰っていきました。
あまりの事態にフリーズしてしまった私。冷静に考えると、あのしっかり者のご主人がこんな勝手な行動を許すのかと疑問が残ります。
お譲りするときに聞いていた連絡先に電話をかけると、ご主人は何も知らなかったよう。話を聞いたご主人はカンカンに怒り、あとは自分に任せてほしいと言われて、電話を終えました。その言葉を信じて、ワンちゃんはわが家で預かることにしました。
やっぱり返して?!
数日後、再び動物病院にアヤナさんがやってきました。かなり焦った様子で「やっぱりあの子、返して」と言っています。
どうやら、ご主人から相当怒られたようで、大切な家族を勝手に追い出すような極悪非道な人間とは家族なんてやっていられないと、家を追い出されたそう。このままじゃ離婚されてしまうと泣いていました。そんな理由で返すわけにはいきません。私はキッパリ断りました。
手ぶらで帰ったアヤナさんをみて、ノアちゃんは号泣。ご主人は依然、無責任すぎるアヤナさんが許せないようです。結局、アヤナさんはこの件をきっかけに離婚。ご主人とノアちゃんから頼み込まれて、私はワンちゃんを再び任せることにしました。
少し迷ったけれど、赤ちゃんのときから一緒に過ごしていたノアちゃんと再会したワンちゃんは嬉しそう。たくさんの愛情を受けて育っているのだと確信したのでした。
ペットは映えの道具でも、アクセサリーでもありません。ペットを迎え入れるなら、命の重さを理解して、一生を見届ける覚悟をもってほしいですね。