それは娘が通う幼稚園の祖父母参観日のこと。社交的な母は、あっという間にママ友ならぬ“ババ友”を作っていました。
母と“ババ友”になってくれたモモコさんは、娘の友だちのおばあちゃんでした。とても上品な雰囲気のご婦人でしたが、ママのカズコさんはとんでもない人でーー。
苦手なタイプかも…
「うちのお嫁さんとも、お友だちになってね」とモモコさんから言われた私。モモコさんの義理の娘さんであるカズコさんに紹介され、挨拶をしました。
しかしカズコさんは面倒くさそうに「ママ友は自分で作るので、余計なこと言わないで」とピシャリ! 不機嫌そうにモモコさんの腕を引いていきました。正直、あまり関わりたくないタイプです。
しかし同じ幼稚園に通うママとなると、避けることもできません。数日後、娘のお迎えでカズコさんにバッタリ出会いました。
貧乏くさい?!
「アナタ、この前の参観で会った人よね?」カズコさんも、どうやら私に気付いてくれたようです。この前とは違って、今日はニコニコしています。
もしかしたらモモコさんと仲が悪いのかもしれません。第一印象で決めつけて申し訳なかったなと思っていると、突然「お仕事はされているの?」と詮索するような物言いで尋ねてきました。少し警戒しつつも「飲食業をしている」と伝えると「食堂のおばちゃんね! 顔を見ればわかるわ〜貧乏くさいもの」と笑いました。
ブチギレそうになったけれど、相手にする時間も無駄です。 深く関わらないことを決め、その場から立ち去りました。
私のお店ですよ!
それ以来カズコさんを避けていたものの、次にバッタリあったのはなんと私の職場でした。私の職場は一見さんお断りの高級料亭です。忙しく店内を動き回っていると「なんでアナタがここに?!」という声とともに、カズコさんが登場しました。
私は会釈をして切り抜けようとしましたが、カズコさんは「ここは料理もスタッフも超一流の高級和食店よ? 食堂のパートさんは場違いだから帰ったほうがいいんじゃない?」と笑います。さすがに正体を明かすしかないかと思ったとき、従業員が「オーナー! 特別室のお客様がいらしたのでご挨拶をお願いします」と私を呼びました。
その言葉を聞いてカズコさんは「オーナー?!」と驚いています。このお店は紛れもなく私が経営する飲食店なのです。
明らかになった真実
「アナタ、食堂のおばちゃんじゃないの!?」カズコさんがそう言ったちょうどそのとき、モモコさんがやってきました。異様な雰囲気を察し「なにか迷惑かけてないでしょうね?」と言います。
実はモモコさんはうちのお店の常連さんです。モモコさんは私に「ごめんなさいね。お詫びはまた後日」と言って、個室に戻っていきました。その後、個室からは激しい言い合いとすすり泣く声が……。
人を見下してばかりの嫁があまりにも目に余るので、今日はしっかり話をしようと思っていたモモコさん。個室で静かに話ができるうちの店を使ってくれたのです。
いつもニコニコやさしいモモコさんにたっぷり絞られたようで、カズコさんは真っ赤な目をして部屋から出てきました。そして気まずそうに私を見て、これまでの失礼な振る舞いを詫びたのでした。
見た目や職業を理由に人を見下すなんて、失礼な人でしたね。せっかく素敵な義母に恵まれたのだから、背中を見てしっかり学んでほしいものです。