幼稚園のママを仕切っていたのは、いわゆるボスママのアイコさんです。駅前のタワマンに住んでいることをいつも自慢げに話し、よく友だちを招いてパーティーを開いていました。
アイコさんは、アパート住まいの私たちを度々「かわいそう」だと見下します。距離を置きたかったのですが、残念ながらアイコさんの娘と私の娘がとても仲が良かったので、そうもいかず……。事件は卒園間近に起こりました。
ボスママに誘われた卒園旅行
ことの発端は、アイコさんに誘われた卒園旅行。気乗りしませんでしたが、娘が行きたいと言うので参加を決めました。するとアイコさんは、突然私を幹事に押し付けてきたのです。
家族旅行ならまだしも、大人数で行く旅行の幹事は簡単なことではありません。そもそもそこまで親しくないので、好みやアレルギーの有無も知らないのです。
しかし断る余地など私にはなく、幹事に決定。そのために誘ったのかと思うと悲しくなりましたが、娘のためと思って自分を奮い立たせ、卒園旅行の計画を立て始めました。
待ち合わせの朝に…
予約をしたのは、子どもたちが楽しめそうなアクティビティが盛りだくさんのツアーです。参加するみんなも喜んでくれてひと安心。私は新幹線のチケットを事前に参加者に共有し、旅行当日を迎えました。
しかし、待ち合わせの時間になっても誰も来ません。おかしいと思ってアイコさんに電話をすると「やっぱり卒園旅行はタワマン仲間だけで行くことにしたの。アパート住まいは暮らしぶりが違うから、私たちと一緒だと大変でしょ?」と笑います。
アイコさんは、最初からこうするつもりで私に幹事を任せていたのでしょう。がっかりしている娘を見て、怒りがこみ上げてきました。
特別プランの真相
ちょうどそのとき、旅行会社を営む友人から、無事新幹線に乗れたか? と確認の電話がかかってきました。今回の旅行の計画を練ってくれたのは、私の古くからの友人だったのです。
友人は私のためにとても良いホテルを特別料金でおさえてくれ、予約がいっぱいだったアクティビティもVIPのために確保していた特別枠を開放してくれました。しかし、私が行かないのなら、話は違います。
私は友人に事情を話してホテルやアクティビティをキャンセルし、値段相応のプランに変更してもらいました。
卒園旅行の行末
数時間後、案の定怒り狂ったアイコさんから電話がかかってきました。事前に聞いていたグレードの部屋に通されないと大騒ぎしています。
私は、友人が私のために特別に確保してくれたツアーだったことを告げ、私が行かないことになったので通常のツアーになっただけだと伝えました。きっと今ごろ、決して広くない部屋で今後のプランを話し合っていることでしょう。しかし人気の観光地なので、きっと今から予約が取れるような場所はないはずです。
自業自得とほくそ笑みながら、私は本来予約していたプラン通りに母娘の卒園旅行に旅立ったのでした。
子どもを通じてせっかく知り合ったママ同士、良いご縁にならなかったことは少し残念でしたね。家庭の事情や価値観は人ぞれぞれ。マウントを取ったり、格付けをしたりすることなく付き合っていきたいですね。