毎日育児と家事でヘトヘトになっていた私。夫は帰りが遅く、手伝ってくれませんでした。
義母が孫の顔を見に遊びに来てくれるときは、食材をいろいろ届けてもらえてくれます。わが家は子どもたちの将来のために節約し、貯蓄をしているので、ありがたい思いでいっぱいでした。
義母は、私の疲れた顔を見てとても心配し、いたわりの言葉をかけてくれました。夫が家事育児すべてを任せっきりにし、私に負担をかけていると謝ってもくれ、とても救われた気持ちになったのですが……。
ない!!
ある日私は銀行の残高を確認し、あ然としました。貯蓄口座の残高がゼロになっていたのです。それは「子どもたちのための口座」でした。他の口座も調べると、なんとほぼ全部の口座がゼロになっていました。慌てて夫に何か知らないかと尋ねると、思ってもみない返事が返ってきたのです。「義母にお金を無心されて渡してしまった」と。
夫に先立たれ、女手一つで夫を育てた義母には、これまでそれなりの苦労があったことでしょう。しかしまだ現役でバリバリ働いているので、義母にはひとりで生活するには十分な稼ぎがあるはずでした。
しかもそのお金は、私たちが節約に節約を重ねて捻出したものです。そんなお金を平気で使うなんて信じられず、怒りが抑えられない私は、翌日義母に抗議の連絡をしました。
「お義母さん、もううちに来ないでください」
「孫の貯金を奪うとか最低です」
私の猛攻に、義母はあっけに取られている様子でした。
「お金なら私が送っているでしょ」
今度は、私がきょとんとする番でした。
「え? 知りませんけど……」
本当の犯人
義母は「あなたが気にするからと口止めされていたのだけれど……」 と前置きし、話し始めました。実はすこし前から、夫が義母にお金の無心をしていたのだそうです。「学資保険が支払えない」「子どもたちの貯蓄に手が回らない」と言われ、毎月6万円も援助してくれていたのだと聞きました。
しかも、上の娘の誕生日プレゼントとして「電子ピアノセットを買ってほしい」と言われ、その代金も支払ったということ。私は、その話も夫から聞いたことがありませんでした。
そういえば、夫に今年の誕生日会にも義母を呼ぼうと言ったら、日程が合わなくて断られたと言っていたのを思い出しました。あれは、プレゼントの件がばれないようにするためのうそだったのです。
私は義母にひどい口を利いてしまったことを謝罪し、また義母は、バカ息子がしでかした罪について涙ながらに謝罪してきました。そして真実を知るため、私たちは協力することを誓い合ったのです。
後悔先に立たず
後日義母が夫を問い詰めた結果、夫は不倫相手にお金を貸して逃げられたことを告白したそうです。その時点で私も義母も、真実は知っていました。義母に頼まれて、夫の携帯電話をチェックしたところ、必死に不倫相手に連絡を取ろうとしていた形跡を見つけていたのです。お金を返せと何度もメッセージを送ったようですが、相手からは音沙汰なしだったよう。
そんな話をしていたころ、私は荷物をまとめて子どもたちと実家へ避難していました。帰宅した夫は、もぬけの殻になった自宅に大慌てしたようです。私は義母にお願いし、離婚を言い渡してもらいました。
私たち夫婦は、何度も話し合いを重ね、ようやく離婚。毎回話し合いのたびに号泣する元夫には、本当にあきれました……。義母から聞いた話ですが、元夫は離婚後人が変わったように真面目になったそうです。これなら毎月の養育費をきちんと支払ってもらえるのではないかとのこと。
その後義母が手を尽くし、詐欺師と化した不倫相手は見つかりました。貸したお金はなんとか戻ってきたそうです。子どもたちの口座にも無事お金が戻ってきて、ホッとしました。私は元夫と不倫相手双方に慰謝料を請求できたので、しばらくはお金の心配をしないでも暮らせそうです。
後悔先に立たずと言います。お金も大切ですが、失うと再び手に入れられない大切なものも世の中にはあります。失って初めてその大切さに気づく、そんなことがないようにしたいものです。