不妊治療の末の妊娠
私たち夫婦は、結婚してからなかなか子どもに恵まれませんでした。不妊治療をしても思うように結果が出ず……。何年もかかってようやくおなかに赤ちゃんがやってきてくれたのです。
2人で涙を流して喜び、ずっと赤ちゃんを楽しみにしてくれていた親族にも、妊娠を報告しようということになりました。
たったひと言で雰囲気が一変
ちょうど親族が集まる機会があったので、食事をしながら妊娠報告をすることにした私たち。親族はみんな、自分のことのように喜んでくれたのですが……。たった1人の発言で、空気が凍りついてしまいました。
高齢の叔父さんが「よかった、よかった。これでやっと普通の家族だな!」と言ってきたのです。そこには「子どもがいるのが当たり前」という古い価値観が透けて見えて、私はイラッとしてしまいました。
奥さんから痛快な一喝!
けれど、気まずくなったのは一瞬だけです。すぐにその叔父さんの奥さんが「ちょっと! なんてこと言うの!」とはっきり注意してくれたのです。その言葉で、叔父さんも失礼な発言だったと気づいたようで、「しまった!」という顔に。
「ちゃんとわかってくれる人もいる」と私たち夫婦は救われました。本人もきちんと謝罪してくれて、その後はみんなで楽しく食事をすることができたのです。
結局、わが子が生まれてから、その叔父さんは他の親族以上にかわいがってくれています。決して悪気があったわけではなく、昔の価値観をアップデートできないままだったのでしょう。
考えてみると、私が妊娠するまで「まだ子どもができないのか」というような失礼な発言はありませんでした。不妊治療中は気をつかって発言に気をつけてくれていたのかもしれません。一瞬イラッとしたものの、わだかまりなく解決でき、叔父さんの奥さんには感謝しかありません。
作画/ぐら子
著者:中越 美織
1児の母。自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。