こんにちは、助産院ばぶばぶ・院長のHISAKOです。CT検査やMRI検査などで用いられる造影剤を使うときに、一時的に授乳を中断するように言われることがあります。今回は、その理由と助産師としてのアドバイスをお伝えします。
造影剤を使うときは授乳はNG?
CTやMRIでは、造影剤を使って検査をすることがあります。造影剤とは、検査する部位を、よりくわしく調べる目的で使用するお薬です。通常では見えない血液の流れや、血管の臓器への広がりなどを見ることができ、造影剤が時間的にどのように流れるかによって病変部位の量的な診断ができます。
薬剤添付文書では、授乳中の女性がCTやMRIの造影検査を受けたあとは、一定期間の授乳禁止を勧めていて、CTでは48時間、MRIでは24時間としていますが、CT造影剤では「ラットの実験で乳汁中に排泄される」、MRI造影剤では「ヒト母乳中へ移行する」、添付文書に書いてある情報は実はたったこれだけで、具体的な記載はありません。
ごく微量なので赤ちゃんには影響なし
アメリカ放射線専門医学会では、CTやMRI造影剤が母乳を介して赤ちゃんに移行する量は極めて微量なため、 検査直後から授乳しても安全であると勧告しています。ESUR(造影剤ガイドライン)にも造影剤使用後の断乳は必要がないと記載されています。
点滴で静脈から注入する造影剤の母乳への移行は、投与3〜6時間後に母体血中濃度がピークとなり、その後、母体から排泄されるスピードはとても速いです。注入24時間経った時点の乳汁移行量は、ほんの微量、母体投与量のたった約0.5%。また、造影剤入りの母乳を飲んだところで赤ちゃん消化管からの吸収は ほとんどなく0.1%未満だということが判明しています。
ですから、造影剤を含んだ母乳を飲んだ赤ちゃんの血中への移行は、検出限界以下という結果が出ています。それはすなわち、母乳を通して母体に投与された造影剤が赤ちゃんに影響することはないことを示しています。
完全母乳で育てているママと赤ちゃんにとって、授乳はとてもとても大切なものですね。「一定期間断乳ね」と言われて、そうかんたんに「ハイそうですか、わかりました」というわけにはいかないのが現実です。ママの検査や治療を行いながら、赤ちゃんへの授乳を継続していくことはたいてい可能なので、さまざまな不確かな情報に翻弄されることなく、賢く母乳育児を楽しんでほしいなぁと思います。
総合病院小児科・産婦人科・NICU病棟勤務を経て、地域での助産師活動・出張専門『助産院ばぶばぶ』を開業。2006年には来院ケアも可能な「助産院ばぶばぶ」をオープン。2014年10人目出産し、ママたちに元気と勇気をおすそ分けすべく母乳育児支援や講演活動、書籍出版など多岐にわたって活動中。