一方、ユウタは私を好きだったよう。何度も告白されましたが、恋愛感情を抱くことはできませんでした。しかし関係性を崩したくないのはユウタに対しても同じ。やんわり傷つけないように、告白をかわしていたのです。
そんな私に思いがけないことが起きました。
突然の…!
「結婚を前提に付き合ってくれないか?」コウタからのまさかのプロポーズを受けた私。なんと、コウタもずっと私のことを好きでいてくれたのです。
来年から海外赴任が決まっていたコウタは、自分がいない間に私が他の人と結婚したら後悔すると思って、気持ちを伝えることにしたのだそうです。もちろん、私も2つ返事でOKしました。
両家の食事会で…
付き合い始めてから数カ月。海外移住の準備が本格的になる前に、私たちは籍を入れることになりました。今さら顔合わせをする必要はありませんが、せっかくなのでちょっと高級な料亭に両家の家族を招き、食事をする予定です。
しかし食事会の当日、約束の時間になってもユウタが来ません。義母いわく失恋したからヘソを曲げているのだろうとのこと。家族全員、ユウタが私を好きだったことに気付いていたようです。
いつ来るかわからないユウタを待ち続けるわけにもいかず、食事会はスタート。すると、しばらくして私のスマホが鳴りました。画面にはユウタの名前が表示されていたので、出てみると……。
謎の電話
「ごめん! 寝坊しちゃった! もうみんな集まってるよな? 俺がいないと話にならないだろうし、結婚の挨拶は延期にしてもらって、今日は中止だって言ってくれる?」ユウタは焦ったようにそう言っていますが、私には何のことかさっぱりわかりません。
すでに結婚の挨拶は終わり、和やかに食事をしている最中です。
「もう、食事会は始まってるけど? 別にあなたが来なくても全然大丈夫だよ」そう私が言うと、ユウタは「何言ってるんだよ! とりあえず、急いで行くから!」そう言って電話を切ってしまいました。
しばらくして現れたユウタは「昨日、ついに結婚するんだって思ったら、うれしくてつい深酒しちゃいました〜」そう笑っていたのですが、みんなキョトンと見つめるだけ。
「何か勘違いしていない? 説明したはずだけど、結婚するのは俺たちだぞ?」コウタがそう言った瞬間、ユウタの表情が固まりました。
勘違いの原因
「どういうこと……?」ユウタは絞り出すような声でそう言いました。どうやら、私がきっぱり断らなかったせいで、脈アリだと思っていたよう。私が結婚の報告をしたときも、都合のいい部分しか聞こえていなかったようで、逆プロポーズだと思ったのだとか……。
コウタが状況を説明すると、結婚相手は自分ではないとやっと気付いたようで、青ざめていました。ハッキリしない態度をとって、本当に申し訳ない気持ちです。
しばらく黙ったのち、ユウタは私を見て言いました。「大好きだった人が世界で一番しあわせになってほしいと心から思っているから、これからは家族としてよろしく!」表情もスッキリしていて、ホッとしました。
夫婦、そして義理のきょうだいになった私たち幼なじみ3人。これからも良い関係性を保ちたいと思っています。
マンガのような三角関係……。関係を壊さないようにハッキリとした態度が取れない気持ちもわかりますが、少しかわいそうでしたね。勇気を出して断る勇気は必要だったかもしれません。