義母は5年ほど前に亡くなった義父の遺産で、悠々自適な一人暮らしをしています。ご近所さんと毎日のように井戸端会議をしているのですが、そこで私の子育てにダメ出しをしたり、変な噂をでっちあげたりするのです。
義母の嫌がらせ
今日も仕事から帰ると、タイミングを見計らっていたかのように、義母から電話がかかってきました。部活帰りの息子を見かけたから声をかけのに、無視されたと怒っています。
息子に詳しい話を聞くと、友だちがいる前で息子に向かって「ちゃん」付けで呼びかけたのだとか……。さすがに思春期の男の子にとっては恥ずかしいことだったはず……と伝えたところ「あなたの育て方の問題ね!」と吐き捨てました。
夫は中学生のときに人前で「ちゃん」付けで呼んでも、嫌な顔なんかしたことがなかったと義母は言いますが、思春期なんて人それぞれです。そう言っても、理解してもらえるわけもなく、結局は「ちゃんと母親ができないなら、孫は返してもらうから!」といつものセリフです。
「返す」だなんて、息子は物じゃないと言うと、嫁のくせに生意気だと一喝。それでも、義母にとって息子が大切な孫であることに変わりはありません。これからも義母の嫌味に付き合う覚悟でいました。
息子に隠していた秘密
あるとき、いつものように仕事から帰ると息子の姿が見当たりません。帰りを待っていると義母から電話がかかってきました。なんだか嫌な予感がして出てみると……。
「孫は返してもらうからね。あなたがいつまでも言わないから、我慢できなくて私から本当のことを教えてあげたんだ」と義母。
嫌な予感は的中してしまいました。義母の言う「本当のこと」というのは、息子が私の実子ではなく夫の連れ子だということ。前妻は息子を妊娠中に浮気していて、それが原因で息子が産まれる前に夫と離婚しました。
しかし私たちが再婚してすぐ、前妻は別の男と逃げてしまい、息子は私たち夫婦が引き取ることになったのです。
息子を失ってしまうかも…
息子が実子ではないことは、いつか本人に話さないといけないと思っていました。でもタイミングを見つけられないまま、ここまでズルズルときてしまいました。
息子が事実を知ったら今の関係が壊れてしまうのではないか……そう考えると怖かったのです。
義母から事実を告げられた息子は、客間にこもったままだと聞き、私は居ても立っても居られなくなり、義実家に向かいました。
私が義実家に到着すると、息子は客間から出てきました。それを見た義母は「無理に『母さん』なんて呼ばなくていいのよ! だって、血のつながってない偽の親子なんだから」と笑っています。
さらには「本当の家族はおばあちゃんだけなんだから、うちで暮らしなさい!」とドヤ顔。息子も「うん。母さんは他人だ……」とつぶやいています。
息子の本音
息子を失ってしまうと血の気が引いた次の瞬間、息子は冷たい目で義母を見て言いました。「そんなの父さんから聞いて知ってたよ。血縁関係がなくても世界で一番俺のことを考えてくれる、自慢の母親だよ」そう続ける息子の言葉に、私は思わず声をあげて泣いてしまいました。
「おばあちゃんの思い通りにならなくてごめんね! じゃあ」そう言って、息子は私の手を引いて義実家を後にしました。
どうやら義母は義父の遺産を使い果たしたようで、息子が相続した夫の遺産と私からの養育費目当てに、息子を引き取りたがっていたそうなのです。息子は井戸端会議で義母が話しているのを耳にし、すべてわかっていました。
一度は息子を失う恐怖でいっぱいになりましたが、おかげでこれまで打ち明けられずにいたモヤモヤも晴れ、親子の絆も深まりました。息子が大人になるまで、これからも親としてしっかり支えていきたいと思っています。
血のつながりがなくても、家族は家族です。2人が過ごした時間や絆が、紛れもなく彼らを家族にしたのですね。