ある日、私が娘を保育園に送ると、同じクラスのママ・リカコさんが話しかけてきました。リカコさんはシングルマザーで、今までは主におばあちゃんが保育園の送迎をしていたのですが、ここ最近はもっぱらリカコさんが来ています。
どうやら夫に一目惚れし、夫目当てに送迎をしているようです。
厄介なシンママ
そんなことを聞いて、気分が良いわけがありません。「お迎えはパパ?」と残念そうな顔をして尋ねるリカコさんに、「これからは私が送迎担当になった」と告げました。
別に夫をどうこうしようとは思っていない、娘に父親という存在を教えるために家族ぐるみで仲良くなりたいだけだと、リカコさんは熱弁。私は苦笑いをしながらその場から去るのが精いっぱいでした。
とにかく、夫とリカコさんが遭遇することのないよう、細心の注意を払って行動しなくては……! と思っていたのです。
しかしそんな私の思いとは裏腹に、娘同士が大親友になり、わが家に呼びたいと娘に言われてしまいました。距離を置きたいのは大人の都合……。娘にとっては大好きなお友だちです。
私は腹を括って、次の週末、リカコさんの娘を家に招待することにしました。
ママ友の来襲!
ついにその日、招待したのは子どもだけでしたが、リカコさんまで家にあがり込んできました。夫には、自分の部屋にいるようお願いしたのですが、リカコさんはトイレと間違えたと言って家中のドアを開け、夫の部屋を探し出したのです。
目をハートにしているリカコさん。ついには私の目を盗んで、夫の部屋に突撃する始末……。
「初めて見たときに運命を感じちゃった♡ 奥さんより私のほうが美人でしょ? 内緒でデートしよう♪」とリカコさんは、夫を口説きます。夫は苦笑いをしていましたが、それを照れていると勘違いしたのか、リカコさんはどんどん押していました。
夫の正体は…?
「そろそろやめてくれる?」と私が割って入ると、リカコさんは「私たちの関係がバレちゃった♪」と気まずそうに笑っていました。
しかし「そんなに夫が好きなら連れて帰る?」という私の思わぬ提案に、一気に表情が明るくなったリカコさん。前のめりになったところで、「夫はイケメンだけが取り柄で無職だし、毎月ゲームの課金に3万円はかかるけど!? お風呂も3日に1回で不潔だし……正直、もう私じゃ面倒見切れなくて……」とたたみかけました。
私の話を聞いて、リカコさんは明らかにひいた顔。「本当なの!?」と夫に詰め寄っています。夫が「まぁ……」と濁すと「そんなの嫌よ! 無理無理!」と言って、怒りながら帰ってしまいました。
ママ友の残念な末路
それから数日後、私の思惑どおり、リカコさんは夫が無職のダメ夫だと保育園で言いふらしてくれました。
それを聞いた噂好きのママが、どうしてそんなことを知っているのかと探りを入れると、リカコさんは一部始終をペラペラ喋ったよう。結局、噂好きのママに「略奪に失敗した残念なママ」という噂を流されてしまいました。
リカコさんは恥ずかしかったようで、それ以来送り迎えは再びおばあちゃん任せに……。私たち夫婦に平和が戻ってきました。
もちろん、夫のことは全部ウソ。あのとき、とっさについたウソでしたが、夫が気付いてくれたおかげで作戦は大成功。イケメンなだけじゃなくて、頭の回転も速いなんて、やっぱりうちの夫は最高です♪
厄介なママは距離を置くのが一番ですが、向こうから寄ってこられてしまうとどうしようもないですよね。今回は息のあった夫婦の連携プレイで乗り越えることができました。
結果的に夫婦の絆も深まったのかもしれませんね!