「咽喉頭異常感症」とは?
病変が見つからない喉まわりの異常の総称
喉が締めつけられる、喉の奥に詰まった感じがする、圧迫感を感じる……など喉に異常を感じるのに、さまざまな検査をしても病気や障害が見つからないことがあります。これといった原因が特定できない喉の異常や違和感を総称して「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」、精神科では「ヒステリー球」と呼びます。
咽喉頭異常感症をもたらす原因
局所的原因
他の病気により引き起こされるもので、咽喉頭異常感症の80%が該当するといわれています。このうち胃食道逆流症が5割近く、喉頭アレルギーが1割ほど。慢性副鼻腔炎、慢性扁桃炎なども原因になります。
全身的原因
咽喉頭異常感症の15%が該当するといわれています。鉄欠乏性貧血、唾液分泌障害・鼻疾患などによる口の中の乾燥、加齢による胃食道逆流や嚥下機能の低下などが挙げられます。加齢や心因性により飲み込みにくさが出てくることもあります。
精神的原因
咽喉頭異常感症の5%が該当するといわれています。気分障害、不安障害、精神病などで喉の違和感が出てきます。
病院にかかるなら「耳鼻咽喉科」を受診。治療法は?
耳鼻咽喉科で他の病気の可能性を探る
風邪薬を飲んでも喉の違和感は変わらず、目安として異常な状態が1カ月以上続くようなら、咽喉頭異常感症が疑われます。
受診する場合は、まずは耳鼻咽喉科を訪れましょう。病院ではまず、咽喉頭異常感症を引き起こす可能性のある病気の有無を調べます。病気が見つかれば治療を進め、病気がなかった場合はメンタルケアや更年期の症状に目を向けます。
喉に病変や障害のない咽喉頭異常感症は、根本原因を見つけることが治療の鍵。ストレスが原因の場合、心配事が解消されたことで自然と症状が治まることも多いです。自宅で様子を見ることもできますが、もし症状が悪化する場合は病気が疑われるので、早めに受診してください。
注目の治療法は自律神経を刺激する「EAT(上咽頭擦過療法)」
咽喉頭異常感症の原因の1つに、鼻の奥(上咽頭)の炎症があります。上咽頭は細菌やウイルスの侵入を防ぐ役割があるので、健康な人でも軽く炎症しているものですが、炎症が強い状態が続くと、喉の違和感や自律神経の乱れを引き起こします。
そこでおこなうのが「EAT(上咽頭擦過療法)」という治療です。薬液を付けた綿棒などを鼻の奥に挿入しこすりつけるため、痛みを伴います。2~3カ月治療を続けることで、咽喉頭異常感症が改善する可能性があります。
漢方薬が処方されることも
東洋医学では咽喉頭異常感症を、喉に梅のようなものがつかえる感覚から「梅格気(ばいかくき)」と呼びます。気の巡りの滞りが原因と考えられていて、主に以下の漢方薬が処方されます。
〔症状改善に使われる漢方〕
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)……咳や声枯れ、吐き気を抑える。気を整えてストレスや不安を鎮める。
茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)……水分代謝を改善し、喉のつかえ感、不安感を和らげる。
柴朴湯(さいぼくとう)……神経の高ぶりを抑え、喉、食道の異物感を和らげる。
生薬を調合した漢方は幅広い症状に効きます。そのため、耳鼻咽喉科でも原因が多岐にわたる咽喉頭異常感症の治療に使われることが多いです。薬局でも手に入るため、薬剤師と相談の上、セルフケアに役立てても良いでしょう。
根本原因にマッチしたセルフケアで改善
咽喉頭異常感症は心理的な要因や病気が引き金となって起こります。背景にある原因が解消されれば、自然に治ることも少なくありません。原因に合わせ、無理のない範囲でセルフケアをおこなうのもおすすめです。
ストレス・精神的な要因や更年期が原因→自律神経のバランスを整える
半身浴、軽い運動、マッサージ、旅行など自分自身が好む方法でストレス解消すると◎。生活習慣や睡眠リズムを見直して自律神経のバランスを整えましょう。
病気が原因→病気の治療・ケアをする
例えば胃酸逆流による場合は暴飲暴食を防ぐこと。咽頭アレルギーから喉に違和感が出ている場合は、鼻うがいをするなど、アレルギー対策をおこないましょう。
空気の乾燥が原因→こまめな水分補給
秋冬は空気の乾燥により喉に違和感を覚える人も増えます。こまめな水分補給や室内を加湿することで喉がラクになることも。
唾液の分泌量減少が原因→唾液腺マッサージ
特に高齢者で多いのは、唾液が減ったことで咳込んだり食べ物が飲み込みにくくなったりするケースです。唾液の分泌を促すには、「上の奥歯あたりに指を当てて回す」「顎の下を押す」「顎の下から耳の下にかけて顎の骨を押す」唾液腺マッサージが効果的。ガムをかむのもおすすめです。
まとめ
異常を感じているのは喉だけど、症状の背景にある原因にアプローチするのが咽喉頭異常感症を改善する大きなポイント。病院を受診して「ストレスが原因だった」と判明したことで安心し、自然に治ることもあるそうです。逆に思い悩み過ぎてますます悪化する例も。心配なときは医師に相談してみましょう。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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取材・文/中澤夕美恵
出版社、編集プロダクションを経てフリーになって約20年。2021年よりスポーツジム通いに目覚め、せっせと運動に励むものの1年で1kgしか減量しておらず、ズッコケる。いつか痩せると信じて今日もジムへ……。