夫が不治の病に!?
夫が嫌がることをするのも気が引けるので、サプライズで家を訪ねるわけにもいきません。私は夫の邪魔をしないように、1通の手紙を書きました。手紙には、体調を崩さないか心配していること、別々の暮らしは淋しいことを素直に綴っています。
その数日後、夫から手紙が届きました。なんだか文通みたいだとときめいたのは最初だけ。封筒を開けると、そこには離婚届が入っていました。
急いで夫に電話をすると、夫は不治の病にかかっているとのこと。闘病している姿を見せたくない、悲しませたくないから別れたいと言うのです。これまで会いに来てくれなかったのも、決意が揺らぐからなのだそう……。
私がショックを隠せず黙り込んでいると、電話の向こうからクスクス笑う女性の声が聞こえてきました。その直後、夫は病院の時間が迫っていると言って電話を切りました。女性の声は私の気のせいでしょうか。
妻の勘は当たる…
妻には、言いしれぬ勘があると実感していた私……。抱いた違和感をこのままにはできません。
私は急いで義家族に連絡をし、事情を話しました。すると「すぐに夫の家に行こう」と言う義母。明日になれば、私が押しかけてくることを予想して、夫は証拠を隠すかもしれないと言うのです。
たしかに、移動手段が新幹線しかない私が夫の元に行けるのは最短で明日の午前中。いますぐ義父の車で駆けつければ、今日の深夜には到着します。
「車を出す」と申し出てくれた義両親に甘え、私は夫の家を訪ねることにしました。
渾身の演技
私たちが夫のマンションに着くと、タイミングよく夫が見知らぬ若い女性と腕を組みながら出てきました。いらだちを押さえながら、私は大慌てで夫に駆けより、夫を心配する妻を演じます。夫は家族総出で現れた私たちを見て、ぎょっとしていました。
不倫相手と思われる女性は、戸惑いを隠せない様子。私は、白々しくも女性を看護師か介護士だと勘違いしている風を装って、お芝居を続けます。
私は不倫相手の手を取り、いつもお世話になっていることへの感謝を述べました。間髪入れずに義母が病状について根掘り葉掘り尋ね、あれよあれよと部屋の中へ。
なんの病気なのか? 治療法は? と次々と問いただされる夫と不倫相手のオドオドする様子を見ると、不治の病は嘘でしょう。なんて不謹慎な嘘をつくのだと腹が立ちます。
尋問を緩めない義両親に加勢し、私は心当たりのある病名をスバリ言ってやりました。その名も、浮気症(性)! もうみんなバレていると伝えると、夫はガックリ肩を落としていました。
夫の末路
不治の病とでも言えば、慰謝料を支払わずにすんなり離婚できると考えた夫の作戦は、これにて終了。落胆する夫と、こんなはずじゃなかったとキレる不倫相手を前に、呆れて物も言えません。こんなポンコツ、こちらから願い下げ。離婚は必須です。
単身赴任不倫は夫の会社にも報告済み。相手は同僚で、母親の看病を理由に長期の休みをとっていたようでした。会社の調査によると、夫と不倫相手は社用車を私用に使い、経費の使い込みもあったよう。しっかり処罰が下ることでしょう。
もちろん私も2人に慰謝料を請求します。「支払えない」と泣いて謝られましたが、自業自得。人をだましてまで不倫を楽しもうとするからこういう目に遭うのです。
離婚後も、義家族との親交は続いています。離婚とともに親族ではなくなりましたが、あのとき、私の味方をしてくれたことや車で駆けつけてくれた恩は忘れていません。ダメな元夫の代わりに親孝行したいと思っています。
あまりに不謹慎で悪意ある嘘に呆れてしまいましたね。人をだますということは、とても大きな罪です。せめてもの償いである慰謝料だけはきっちり払ってほしいですね。