大切な友人との別れ
マキさんは頻繁にわが家にやってくるのですが、食事の支度は毎回私。手伝う素振りも見せず、食材の差し入れもありません。それどころか、わが家にあるストックの食材や頂き物の品を度々欲しがり、持って帰ります。
そこまで余裕があるわけではないので、少しもやっとしてしまいますが、みんなで食べるごはんはおいしく、娘も喜ぶので仕方がないと自分に言い聞かせていました。
私たちの仲に決定的な亀裂が入ったのは、マキさんから相談があると言われたときのこと。なんと、お金を貸してほしいと頼まれたのです。
しかし私は、相手が誰であってもお金の貸し借りはしないことにしています。丁寧に言葉を選んで断ったのですが、マキさんは真っ赤な顔をして怒ってしまいました。夫の遺産があってお金持ちなのに、友人にお金も貸せないのかと非難ごうごう! 挙句、「仲良くしてあげたのに、恩を仇で返すのね!」と言って去っていきました。
大切な友だちだと思っていたので、ショックです。
再婚するのもいいのかも…
それから彼女はわが家にやってくることはなくなり、連絡をしても無視。もちろん職場でも、口を利いてくれません。そして私の知らないうちに、彼女は仕事を辞めてしまいました。
私が寂しそうにしていると、職場の店長がお見合いを勧めてきました。そんな気持ちになれなかったのですが、あまりにしつこく勧めるので、私は渋々お見合いをセッティングしてもらうことにしたのです。
お見合い当日は、もちろん娘も一緒です。お相手は、笑顔で物腰柔らかなイケメン。スーツが夫のものと似ていたからか、どことなく亡くなった夫に似ているような気がしました。
お見合い相手の彼は娘にもやさしく接してくれ、私もだんだんと再婚に前向きになり「娘にも新しい父親が必要かもしれない」という考えが頭をよぎります。
しかし彼が席を外したその瞬間、娘が「ママ、逃げよう!」 と言ったのです。娘は慌てた様子で、私の手を引っ張ります。ただごとではないと思った私は、急いでレストランをあとにしました。
なぜあなたがそこに!?
帰り道、なぜ逃げたのかを娘に聞いてびっくり! そんなことが実際にあるのか、信じられませんでした。
家に着いてホッとしたのもつかの間、自宅のインターフォンがなりました。ドアの前には、なんとお見合い相手の彼。連絡先や住所は教えていないはずなのに、どうしてここにいるのでしょう。
怖いという気持ちもありましたが、事実を確認したいという思いが強かった私は、彼を招き入れることにしました。彼は心配で追いかけてきたと言いますが、なぜ家を知っているのか? カバンに入っているキーケースはどこで手に入れたのか? 私が尋ねると、彼は冷や汗をダラダラ流し始めました。
キーケースこそが、娘が「逃げよう」と言ったきっかけです。娘は、カバンに入っていたキーケースが夫のものと同じであることに気付きました。同じものを使っていても何ら珍しくないのですが、そこにはかつて娘が貼った小さなシールがついていたそう。
娘がそれを見て言いしれぬ違和感を持ち、お見合いの席を去ったのでした。
お見合いに隠された罠
私が大切に保管していた夫のキーケースを持ち出すことができたのは、私たち家族を除くと、よく遊びにきていたマキさんしかいません。たしかにマキさんは掃除と称し、わが家のあちこちを触っていました。キーケースは有名ブランドものだったので、こっそり持ち出したのでしょう。
私が問いただすと、彼は焦って家を飛び出しました。急いで追いかけると、ちょうどマンションの出入り口が工事中。足止めを食らった彼を、私は工事スタッフさんの力も借りて無事確保できました。信じられないグッドタイミング! これは夫が味方してくれたに違いありません。
観念した彼はすべて話してくれました。なんと彼はマキさんの弟。亡くなったなんて、嘘でした。最初から私に近づいたのはお金が目的だったよう。お金を貸さないことに腹を立てたマキさんは、店長をたぶらかしてニセのお見合いに私を送り込み、弟と付き合った暁には、お金を貢がせようとたくらんだのでした。
私が彼女の弟に夫の姿を見たのも、仕掛けの1つだったよう。なんとマキさんは、夫の形見のスーツまで持ち去っていたのです。
騙そうとしたのはもちろんですが、夫の形見を盗んだことはもっと許せません。私は然るべき対処をし、この件は終わりました。騙されずに済んだのは娘や夫のおかげ。夫や娘を第一に、そして再婚は慎重に……と身にしみた出来事でした。
不審な人を家に招き入れるのは、とても危険なこと……無事で何よりです。このようなケースでは、安易に家にはあげず、人がいるところで話すようにしたいですね。
また、悲しい気持ちにつけ込むのは最低な行為。未然に防げたことはせめてもの救いでした。いつかまた再婚を考えるときが来たら、慎重に見極められるといいですね。
【取材時期:2024年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。