コスメ売り場で出会ったとんでもない人
弟は暴言を吐かれた上、手を引っ掻かれたそう。昼間の出来事だというのに、弟の手にはくっきりと引っ掻き傷がありました。
弟はコスメが買えなかったことをとても気にしていて、なんとか手に入れようとネットで探してくれたものの、ネットで出回っているのはどれも高額な転売品。欲しい人が手に入れられない中で転売ヤーが購入し、高値で売ろうとする仕組みは許せません。転売ヤーからは絶対に買いたくありません。
買えなかったことを何度も謝る弟に、私も申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
世間は狭い…まさかの再会
その翌日、弟の会社に新しい派遣スタッフ・ヤマダさんがやってきました。弟はベンチャーながらも勢いのある会社を経営しています。
ヤマダさんと顔を合わせて、弟はびっくり! しかし笑顔で「昨日ぶりですね」と声をかけました。なんと昨日弟からコスメを奪い取ったのが、ヤマダさんだったのです。
ヤマダさんは弟の顔を見て、一瞬で真っ青に……。苦しまぎれに「男性が化粧品を買うわけがない! 高値での転売を目的に購入するのだと勘違いし、撃退するつもりだった」と言い訳を始めました。
しかし弟の会社では、只今メンズメイクのコスメの開発中。化粧は女性だけのものではないという信念を持って経営しています。
自分がこれから働く会社の事業や理念を、ヤマダさんは把握していなかったのでしょうか。
あのコスメ、本当に自分が使うもの?
弟は社会問題とも言える転売を目の当たりにし、何やら使命に燃えているよう。ヤマダさんのメイクの系統を見て、先日の限定コスメは自分のものではないのかも……? とビビッときたよう。
あまりに慣れた手つきだったこともあり、昨日のような、他人が手にしたコスメを奪うのも日常茶飯事なのではないかと考えたのです。
弟の耳打ちで、人事部長も「先日、そこのデパートの化粧品売り場でもお会いしましたよね。限定リップが出たときです。私、買えなくてがっかりしたんですよ」とカマをかけると、ヤマダさんは「え、まさか……」とさらに真っ青に。
弟が手の傷を見せて「これはまずいですよね。人にけがをさせてまで……」と言いかけると、ヤマダさんは急に立ち上がり「お仕事は辞退します!」と、出ていきました。
転売反対!弟の野望は…
それ以来、コスメ売り場でヤマダさんを見ることはなくなりました。私たちが見ていた転売アカウントもいつの間にか消えていたので、もしかするとヤマダさんのものだったのかもしれません。
弟は、自分がデパートに売り場を出せたあかつきには、今回のような奪い取りが起こらない仕組みを作ると燃えています。私も、弟のお店がコスメフロアに並び、買い求める人がたくさんやってくる未来が来るために、応援したいと思っています。
限定コスメを手に入れたいという気持ちはわかります。しかし人のものを奪い、けがをさせてまで手に入れようとするのはいかがなものでしょう。しかし、この出来事をきっかけに仕事へのやる気が出たのなら、それはせめてもの救い。応援したくなりますね!
【取材時期:2024年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。