広がっていく夫婦の溝
夫と義母の傷の舐め合いは続き、なんだか疲れてしまった私……。夫との間に溝を感じるようになり、頭を冷やすためにも実家に帰省をすることにしました。
実家で母や同級生と過ごし、そろそろ家に帰ろうと思った帰り道のこと。ふと宝くじ売り場が目についたので、数枚の宝くじを買いました。
これが当たったら何に使おう〜♪ と足取り軽く自宅に戻ると、自宅にはパジャマ姿の義母が……。なんと、私になんの相談もなく、義母はわが家に住み着いていたのです。
どうやら義母は、ギャンブルで借金を作ってしまったよう。義実家を売ることになったので、住むところがないと言います。
しかしこの家は、私の両親から借りているもの。わずかばかりのお金を私が両親に渡しているのです。勝手に同居を決めたことは、納得ができません。
私が不満げにしていると「姑がこんなに困っているのに追い出すつもりか」と、まるで私が悪いかのような言い方をされ、私の怒りは頂点に。「嫌ならお前が出ていけ」とまで言われてしまいました。
それでも私は、この家は私の両親のものだと主張し、義母には出ていってもらいました。行き先はウィークリーマンションです。義母は一文なしなので、支払いはもちろん夫持ちです。
私はATM?
ある休日のこと。外出から帰ると、どうやら義母が遊びに来ているよう。夫と義母は爆音でテレビを見ていて、私の帰宅に気付いていませんでした。
静かにリビングに進むと、2人は私のことを話しているよう。静かに立ち止まり、聞き耳を立てていました。
夫は義母に一緒に住めなくてごめんと謝り、義母は私の悪口をさんざん言っています。私と離婚したい。でも、高収入の私はATMだから手放すのが惜しいと夫は言います。
夫と義母に腹を立てていた私でしたが、いざ夫の口からひどい言葉を聞くとショックを受けてしまいました。私は静かに寝室に向かい、ベッドに倒れ込んだのです。
離婚の条件は、宝くじを渡すこと!?
寝室で悲しみに暮れていると、ふと宝くじのことを思い出しました。宝くじが当たったら夫婦で海外旅行……なんて思った日も、はるか昔のことのよう……。
あまり期待せずに当選番号を見ると、なんと高額当選! 思わず興奮して、大きな声を上げてしまいました。
するとドアの外で物音が……。すぐにドアを開けて確認してみましたが、誰もいません。よく考えて、当選のことは夫には教えないことにしました。
高額当選にあまりにびっくりしたせいか、離婚の決意ができた私は、後日夫に離婚届を渡しました。すると夫は、あれほど離婚したいと言っていたはずなのに、サインをしぶります。どうやら宝くじの当選を知られていたよう。「当たりくじを1枚よこせば離婚に合意する」と言います。
「嫁の金は私たちの金」と言い張る義母。夫は宝くじをアテにして、すでに仕事を退職していたようです。当選したお金で義母と2人で暮らしていくと満面の笑みを浮かべていました。
ふざけたことを言われすっかり頭に血がのぼった私ですが、心を落ち着けてしばらく考え、くじを渡すことにしました。「これでお前は用済みだ」 そう言って、夫は大喜びでサインをしたのでした。
当選したお金の使い道は…
離婚してすぐ後、元夫から電話がかかってきました。「だましたな!」 と怒っています。
しかし私はだましてなんていません。そもそも、高額当選の宝くじを渡すなんて、ひと言も言っていないのです。それに元夫に渡した宝くじは、まぎれもなく300円の当たりくじです。
この先どうやって生きていけばいいんだと言われましたが、そんなことは知りません。「当たりくじを1枚渡せば離婚に合意する」と言ったのは夫なのですから……。
それに、高額当選したお金は全額寄付してしまったので、もう私の手元にはないのです。あまりの大金、寄付をするときは震えましたが、元夫に取られるくらいなら必要な人に貰ってほしいと腹を括ったのでした。
当選金が手元にないとわかった元夫は、仕事が見つかるまでの間、お金を工面してほしいと頭を下げましたが、私が助けるわけがありません。私はATMではないのです。連絡先をブロックしたので、その後彼らがどうしているのかはわかりません。
その後も、宝くじのお金があったらな……と思うことは度々ありますが、寄付をした団体から時折送られてくる近況報告のお手紙が、私の楽しみになっています。夫の手に渡ったら、ろくな使い方をしなかったはず。これでよかったのだと思っています。
高額の当選金の寄付は、なかなかできることではありません。しかし、腹を括ったことで、お金よりも大切なものがあると身をもって体験したのではないでしょうか。
お金はときに人の心を惑わせますが、真の豊かさとは何かを私たちに教えてくれますね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。