両家顔合わせの日時や場所を決めるために、婚約者の母、つまり私の義母になる方に連絡すると、「息子が必死に結婚の準備を進めようとしているのに、ずいぶんとわがままを言っているようね?」「あなたのせいで何も話が進まないって息子から聞いたわ」と驚きの返事が。
義実家との食い違い
思わず「え!?」と声を上げてしまった私。「私が顔合わせの日時や場所を決めようとするたびに、『仕事で忙しいから』『その日は出張だから』と、彼に先延ばしにされているんですが……?」と事実を告げました。
「さすがにお節介だとは思ったのだけど、年内に結婚すると聞いたのに、12月になっても顔合わせできていなくて、さすがに心配で……」「我慢できずに、あなただけを責めるようなことを言って、ごめんなさいね」と婚約者の母。
「両家顔合わせやこの先の予定は息子さんを通さずに、私から直接連絡しますね」と言うと、婚約者の母もようやく安心したようで「よろしくね」と和やかに会話を締めくくってくれたのでした。
当事者のいない顔合わせ
そして、両家顔合わせ当日――。
朝から何度も連絡しているのに、電話にも出ず、返信もしてくれなかった婚約者。ようやく連絡が来たのはお昼ごろ。しかも、いきなり「俺、やっぱお前との婚約は破棄するわ!」と言ってきたのです……。
「ババァとの婚約はやっぱり辞めとくわw」
「両家顔合わせは若い彼女と行くからw」
「もう始まってるけど…」
「え?」
以前から私の話を聞いてくれていないと思っていましたが、まさかこんなに軽んじられているとは思ってもいませんでした。
「午後じゃなくて午前中に時間変更したって言ったよね?」「朝からうちの両親も、あなたのご両親も、あなたの到着をずっと待っていたのよ」「そこに浮気相手とそのご両親を連れて登場するつもりなの?」「しっかり説明をして、そして責任を取ってちょうだいね」と私が言うと、「責任だと!?俺に慰謝料を払えって言うのか!」と婚約者が逆ギレしてきました。
強気だった婚約者の行く末
「新しい彼女は俺を立ててくれるし、家事も何もかも全部やってくれるって言うんだ」「お前の両親もかわいそうだな。自分の娘が男を立てることもできない情けない娘で、それを顔合わせの場で知らされるんだからな!」と婚約者。
たしかに、散財ばかりで貯金もほとんどない婚約者に対し、私は節約するように口を酸っぱくして言ってきました。生活力もまったくなかったので、少しでも家事を覚えてほしくて、いろいろお願いもしてきました。でも、それが婚約者を浮気に走らせることになってしまったなんて……。
愕然とする私の代わりに、婚約者に一喝したのは婚約者の母でした。
「かわいそうなのも、情けないのも私たちよ!」
「まさかうちの息子がこんな馬鹿息子に育ってしまうなんて……私もお父さんも顔から火が出そうなくらい恥ずかしいわ!」と婚約者の母。
婚約者は自分の母親の言葉に一瞬ひるんだようでしたが、すぐに「俺はそいつよりも素晴らしい彼女とそのご両親を連れて行くんだぞ!」と反論していました。
「婚約者がいる男に手を出す女のどこが素晴らしい女よ!」「本当の婚約者の親も揃っているこの場所に、自分の親も連れて堂々とやってこようとする馬鹿女の間違いでしょ!」
「本当に婚約者の彼女に丸投げだったのね……私が聞いていた話は全部嘘だったのね……」と言いながら息を整えた婚約者の母はさらに続けました。
「どうして彼女が今日この日、この場所を両家顔合わせに選んだのかもわかっていないようね?」「今日は私とお父さんの結婚30年記念日、そしてここは私がお父さんにプロポーズしてもらった場所」「彼女は両家顔合わせがより思い出に残るようにって、粋な計らいをしてくれたのよ!」
またヒートアップしてきた婚約者の母の隣で、激しく首を縦に振る婚約者の父。うちの両親はおろおろしていました。
「しかも!今日の午前に顔合わせ時間を変更してくれたのも私たちのためよ!」「午後は解散して、せっかくだから思い出の観光地を回ってはどうですか、って提案してくれたのよ!?」「どれだけ彼女が気遣い上手でやさしくて素敵な女性だと思っているの!そんな彼女を……こんなに傷つけて……」
だんだんと涙声になってきた婚約者の母。「今すぐ来るなら早く来なさい!全員で彼女と親御さんに土下座謝罪するわよ!」と言って、ついには泣き出してしまいました。
号泣する婚約者の母から電話を受け取った婚約者の父は、「ありったけの金を持ってきて慰謝料として支払い、せめてもの誠意を見せなさい」「私たちは1円たりとも出さない。一緒に頭は下げるがそれ以外の責任は自分で取れ」「お前とはもう家族の縁を切る」と淡々と告げていました。
そして、目頭をおさえながら「まさか私たちの結婚記念日が息子と絶縁する日になるとは……」とつぶやいていました。
その後――。
結局、顔合わせ会場で婚約者と婚約者の両親から土下座謝罪を受け、慰謝料をもらうことを条件に婚約解消した私。婚約者と一緒に到着した浮気相手は「私は悪くないもん!」の一点張りで、そのご両親は「略奪だなんて聞いていない!」と娘を叱責。まさに修羅場でした……。
浮気相手のご両親の猛反対にあったからか、浮気相手と元婚約者の仲も崩壊したそうで、実家からも縁を切られた元婚約者は、私に復縁を申し込んできました。けれども当然受けるはずもありません。すぐに元婚約者の両親に報告して、今後、元婚約者が一切私に連絡をしてこないように対処してもらいました。
私は元婚約者だけでなく、浮気相手にも慰謝料を請求しました。それなりの金額が手に入ることになったので、私によくしてくださった元婚約者の両親に豪華な温泉旅行をプレゼントして、結婚記念日のお祝いをやり直してもらえたらと考えています。そして私はというと、両親と3人で暮らしつつ、慰謝料を使って前から行きたかったエステやジム通いをして自分磨きを楽しむ予定です。傷ついたけれど、元婚約者の本性がわかり結婚しなくてよかったと、今は心から思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。