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「40代になると、なぜ太りやすくなる?」今さら聞けない!中年女性の体型変化とホルモンの関係【医師解説】

仕事に日常の家事、子育てなどで、30代はあっという間に過ぎ去ってしまう時期です。その間、「そんなに意識しなくても大きな体型変化などしなかった」「少し運動量を増やしたらすぐに元に戻っていた」という人も、40歳を過ぎてくると、気付いたらウエストラインがはっきりしなくなってきたり、二の腕がたるんできたりしてしまいがち。「それだけ年を重ねたから」と諦めてしまいがちですが、実は体型変化にはホルモンが深く関わっているのです。40代の体型変化にまつわるホルモンの関係を美容専門医の黒田あいみ先生に聞きました。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師黒田 あいみ 先生

美容・アンチエイジング専門医。トライアスリート。Zetith Beauty Clinic医師(東京都中央区銀座4丁⽬2-17 銀座111レジャービル13階)。1979年東京生まれ。2003年獨協医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学内分泌乳腺外科に入局。2007年品川美容外科へ入職、2011年品川スキンクリニック新宿院の院長に就任。2013年同クリニック、表参道院院長に就任。その後、予防医学と分子栄養学を改めて学び、美容外科、美容皮膚科、アンチエイジング内科の非常勤医師として複数のクリニックの勤務を経て、現在に至る。著書に『アスリート医師が教える最強のアンチエイジング』(文藝春秋)。
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40代女性のホルモン変化の基礎知識

 

40代の体型に関しては「ホルモン」が深く関わっています。1つは女性ホルモンの「エストロゲン」。このホルモンは中性脂肪の消費を促すという働きがあります。消費が促進されることによって、中性脂肪の蓄積を予防するという作用があるのです。

 

さらにもう1つの女性ホルモンである「プロゲステロン」は、排卵直後から分泌量が増える、妊娠の準備のためのホルモンです。受精卵を着床しやすくするために、基礎体温を上げ子宮内膜を安定させる働きもあります。

 

体型に関与しているのはもう1つ、「テストステロン」があります。これは男性ホルモンと呼ばれるものです。

 

これらのホルモンは加齢によって分泌量が減っていきます。減ることによって、それまで保たれていた体内のバランスが崩れていきます。ホルモンが減ると簡単に言っても、減り方が鏡に映るわけでもなく、「今、減り始めています」という明確なサインはありません。

 

閉経などはわかりやすいですが、その前からホルモンの分泌は減り始めているのです。特に女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンは急激に減少し、男性ホルモンのテストステロンも加齢とともに減少していきます。だだ、テストステロンは女性ホルモンの減少に比べて、その減り方は少なめ。結果的に男性ホルモンが優位になり、バランスの崩れが大きくなってしまうのです。そこで、相対的にさまざまな症状が出てきます。

 

エストロゲン減少と体型変化の関係

 

ホルモンバランスが崩れると、対策をしないままでいたら、体型が崩れてしまう可能性が高くなります。でも、なぜホルモンの減少が体型まで崩してしまうのでしょうか。

 

エストロゲンは、中性脂肪の消費を促すことで蓄積を予防するような作用があると前述しました。その分泌量は20代をピークに緩やかに減少し、40歳前後になると卵巣機能が低下してエストロゲンの分泌が大幅に減ります。そうなると脂肪の消費を促す作用も減ってしまい、中性脂肪がたまりやすく太りやすくなります。

 

中年太りと言われて、ウエスト周りに脂肪がついた姿をイメージしませんか? それがまさにエストロゲンの分泌量が減ることから起こっているのです。

 

体につく場所で分かれる脂肪

中性脂肪は血液中を流れて、「体脂肪」を構成する脂肪細胞の中に蓄えられていきます。中性脂肪を蓄える「体脂肪」は、つく場所によって「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けられます。

 

ウエスト周りに蓄積されている脂肪が内臓脂肪となります。内臓は上半身、おなか周りに集中しています。エストロゲンの減少でこの内臓部分に脂肪が蓄積していくようになるので、相対的に上半身が下半身よりも大きくなったように見える中年太りの体型になってしまうのです。

 

一方の皮下脂肪は、皮膚の下に蓄積されます。腕、特に二の腕や首周りなどが見えやすくなってきます。下半身でももちろん皮下脂肪は蓄積しますが、上半身に比べて内臓脂肪の蓄積が少ないこともあり、40歳前後になると上半身ばかりが急に太ったようになってしまうのです。

 

筋肉量も体型維持のポイント

さらに男性ホルモンのテストステロンの減少も関わってきます。このホルモンは筋肉の成長を促し、やはり20代をピークに減り始めます。この減少はタンパク質合成を低下させ、分解を促進してしまうので、結果筋肉量の減少につながってしまい、筋肉が落ちてしまうのです。

 

筋肉量が減るとおのずと1日の基礎代謝量が減少。基礎代謝は高ければ太りにくく、低ければ太りやすくなるので、テストステロンの減少だけでも体型は変化しやすいと言えます。

 

 

ホルモン変化が引き起こす具体的な体型変化

 

40歳前後は体型変化に関わってくるホルモンがガクンと減少する時期。どれ1つをとっても体型変化が起こる可能性があるのに、複数の要因が関わってくることでさまざまな部位の体型変化に影響をもたらします。

 

■ウエストラインの消失

内臓脂肪、皮下脂肪のどちらも蓄積しやすい部位で、腰のくびれがなくなって寸胴体型になりやすい。

■おなか周りの脂肪蓄積

内臓が集中しているために、内臓脂肪の蓄積が多い部位。腹筋の衰えも影響し、ぽっこりおなかになりやすい。

 

■二の腕のたるみ

皮下脂肪がつきやすく、同時に筋肉量が減って柔らかくたるみやすい。ネックラインも同様。

 

■ヒップラインの変化など

ヒップには大きな筋肉がついており、筋肉量の減少と脂肪の増加により垂れてきたり、太ももとの境目があやふやになってきたりする。

 

 

ホルモン変化に伴う代謝の変化

 

エストロゲンというホルモンは、悪玉コレステロールを下げる役割も持っています。加齢とともにエストロゲンが減ってくると、悪玉コレステロールが増加してしまうのです。コレステロールとは「脂質」のこと。エストロゲンは脂質の利用率も上げてくれていたのですが、これが減ることで結果悪玉のコレステロールが増えてしまい、体型変化のみでなく、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクにもつながります。

 

さらにエストロゲンはインスリンの感受性に影響しているので、分泌量の低下によって血糖値が上がりやすくなるのです。 肝臓での浸透性が低下するので、血糖維持に関係し、糖質代謝にも影響が出てくるわけです。

 

エストロゲンというホルモンの減少は、コレステロールや血糖値にも大きく影響しているので、心臓の血管が狭くなる心血管障害のリスクが上がり、加えて骨粗しょう症などのリスクも上昇させてしまいます。さらに、うつなど気分の変動が出てしまうのです。

 

「見えないホルモン変化」とはいえ、40歳前後で中年太りといった感じの体型変化が現れたら、さまざまな疾患のリスクへのサインであると捉えるといいかもしれません。

 

 

体型管理の方法

 

ホルモンの減少により、筋肉は付きにくいというよりも減少してしまう傾向になり、加えて脂肪は蓄積してしまう体質になってきている状態です。それまでおこなってきた運動だけでは維持ですら大変になってきます。

 

筋肉量維持の重要性と方法

個人のそれまでの運動量によるとは思いますが、例えば今まで週3日で運動していたとしたら、その強度を上げる必要が出てきます。回数を増やす、強くするなど今までよりも強めの運動を無理のない程度に取り入れてみるところから始めましょう。

 

今まで何も運動はしていなくても体型維持ができてきたという人も、40歳になったら何かを始めないと維持は難しいと考えてください。とはいえ、急に10kgランニングをする必要はありません。日常生活の中に意識して運動らしきものを取り入れるだけでも有効です。

 

例えば、踏み台昇降。階段などを利用して1日5分からスタートしてみて、それを習慣づけてから少しずつ強度を上げてみましょう。あるいは、「バス停を1個分だけ歩いてみる」とか、目的地がビルの10階だったとしたら、「8階で降りて2階分階段を使う」など、生活の中に今までなかった運動らしきものを入れていくとスタートしやすいでしょう。

 

「運動をしなければいけない」と言うとストレスになる、という人もいるでしょうが、そのまま放置していると体型だけでなくほかの疾患のリスクも上がり、別のストレスがかかります。そうなる前に、日常の中での習慣づけをしておくことのほうが大切です。

 

適切な栄養摂取の重要性

 

太ってきたと感じると、最初に頭に浮かぶ対処法は「食事制限」ではないでしょうか。しかし、単純に「カロリーを低く抑える」という考え方はダメです。必要な栄養はバランスよくしっかりとりながら、食事内容を見直していくことが重要です。

 

そのためには、「何を食べて」「どのくらい量を食べたのか」の把握は必要です。とはいえ細かく測る必要はありません。例えば、食事の写真を撮るだけでカロリー量やたんぱく質の摂取量などを大まかに記録してくれるダイエットアプリなどを活用してもいいでしょう。食事は何より楽しむことも大切です。

 

この時期は女性ホルモンの減少が大きな課題なので、それを補うものを摂取することも必要です。代表的なものは大豆イソフラボン。大豆イソフラボンには1日の摂取量の上限値があります。それが70㎎~75㎎で、納豆だと2パックほどです。豆腐も小さいサイズで十分な量です。そこで、朝食で豆腐入りのお味噌汁を飲む、納豆ご飯を食べるだけでも大きく改善します。

 

納豆は大豆イソフラボンだけではなく、 ミネラルやたんぱく質も多く摂取できるので、1日パック納豆を食べることを習慣にするのがおすすめです。

 

和食は大豆製品を使った調味料が多く使われています。じょうずに和食を取り入れていくと良いでしょう。朝食にパン食だったら、ランチは和食の定食にしてみるといった具合です。全部自分で作らなくても、ちょっとした工夫で食事を楽しめて、さらに適正な栄養摂取もできるのです。

 

ホルモンバランスを整える生活習慣

40歳前後になると、複数のホルモンの働きが従来と異なってきます。そのときに起こる体型変化や不調なども、1つのホルモンだけが原因ということはありません。また、同じようなホルモンの分泌量の変化があったからと言って、全員が同じ症状を起こすわけでもないのです。

 

年齢を重ねれば、ホルモンバランスは崩れます。それを少しでも元に戻したり、症状を軽くしたりするのは、日ごろの生活習慣がポイントになってきます。

 

基本的には和食を取り入れたバランスの良い食事をとること。たまには何も考えずに楽しむ食事があるのはいいですが、それが続くのはNG。運動も何もしないよりは、日ごろから階段を使う程度でもいいので、習慣化しておくことです。

 

このような食と運動に関する生活習慣を早いうちから続けている人は、更年期の症状や体型変化が軽い場合が多いようです。難しいことでもありませんし、将来のリスクを軽減するためにもすぐに日常生活を見直して、取り入れてみましょう。

 

まとめ

体の中のバランスが大きく変化する40歳前後。体の中で起こってたことが、おなか周りのだぶつき、など体型変化となって現れてきます。「そんなお年ごろだから仕方がない」と目をつぶっていると体型だけではなく、さまざまな疾患のリスクも高まってしまいます。

 

筋肉をつける運動や食事のとり方に気を配ることは、体のためにおこなう一連の習慣と考えてください。「運動してるからドカ食いしていいんだ」ではなく、すべてはバランスで成り立っていると考えましょう。

 

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

 

 

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取材・文/いしまるかずみ

更年期真っただ中の50代ライター。ライター歴は30年以上と無駄に長い。東北と奈良と猫が大好き。小説、マンガ、アニメが生活の一部で、「在原業平」様が初恋の人。でも理系の一面も。

 

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