子連れで電車に乗っただけなのに…
3歳の息子と1歳の娘を連れて電車に乗って、実家に帰省したときのことです。着替えなどの荷物が多かったので、私は大きいリュックを背負い、抱っこひもで1歳の子を前に抱え、ベビーカーには3歳の子を乗せての大移動でした。夫は仕事のため、あとから実家で合流予定。ひとりでの子連れ帰省に不安もありましたが、電車内で静かに遊べるおもちゃやおやつもしっかり準備して頑張ることにしたのです。
私はいつも、電車に乗るときには必ず優先席、またはベビーカーや車椅子専用スペースのある車両を選ぶようにしています。その日も、ベビーカースペースのある車両をあらかじめ確認して乗り込んだのですが、若いカップルが優先スペースに寄りかかって占領していたので、仕方ないか……と利用を諦めることに。立っている乗客はまばらなものの、座席は満員。しかたがないので、できるだけベビーカーが邪魔にならないよう気づかいながら、つり革を持って立っているしかありませんでした。
すると、近くの座席に座っていた年配の女性が「えらい迷惑やね、こんな混んでいるときに……」と隣に座る夫らしき男性に話しかけるふりをして、明らかに私に向かって聞こえるように言うのです。その言葉に落ち込んでいると、近くに座っている別の女性が立ちあがり、「よかったらここに座って」と席をゆずろうとしてくれました。しかし先ほどの年配の女性の言葉が胸に刺さっていた私は、周りの人に「ベビーカーを引いて座っている人の前に立ってたのは譲ってもらうためだったのか、図々しい」と思われるのではないかと不安になり、「いえ、立ったままで大丈夫です……」と断ることに。すると女性は「何言ってるの! 混んでいるときこそ、協力しなきゃね!」とニッコリ。申し訳ない気持ちもあったのですが、女性にお礼を言って、座らせていただくことにしました。親切にしてくださったおかげで、穏やかではなかった私の心もほぐれて、とてもありがたかったです。
子連れに肯定的な人ばかりではない社会ですが、少しの親切で救われることもあるのだと感じます。子連れに限らず、社会にはいろんな事情を持つ人がいると想像力をはたらかせて、思いやりの心を持っていたいと改めて思った出来事です。
著者:川中あいこ/40代・ライター。マイペースな3歳の息子と、おてんばな1歳の娘を育てるママ。夫は帰宅時間が遅く平日ほぼワンオペ。転勤族で、日本中のおいしい物を食べたいと思っている。老後はどこに住むか想像するのが好き。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2024年10月)