異色の面接開始!
応募してきたのは、30代半ばの男性。彼は、こちらが「お座りください」と言う前に椅子にどっかり腰を下ろし、ふてぶてしく私を見上げてきました。その態度が気にはなりながらも、私は人手不足の現状を考え、面接を続行。
「本日は私が面接させていただきます。前職について伺いますね」と話すと、彼は自信満々にこう言いました。
「正直、都会の一流企業でバリバリ働いていたエリートの私が、こんなド田舎で働くのは都落ち。応募したのだから感謝してほしいくらいです」
高慢な物言いには引っ掛かるところもありましたが、たしかにわが社は郊外の田園地帯に本社があり、そこでの作業がメインであることは事実。しかし何しろ今は人手不足。高報酬で求人したとはいえ、この機会を逃したら次はいつ応募者が来るかもわかりません。ここまで言うからには即戦力になってくれるだろうと、最終的にこの人を採用する決定を下したのですが……。
初日から思わぬ展開に
翌週、この中途社員の初出社日がやってきました。ところが、9時を過ぎても姿を見せない彼。私が慌てて電話をすると、「起きたら8時30分だったので、今日はテレワークにするつもりです」とサラッと返答してきました。
勤務初日に寝坊をかまし、勝手にテレワーク……? 私は、「うちではテレワーク制度はありません。出社していただかないとできない業務があって……」と告げたのですが、彼は聞く耳を持ちません。
「今どき時代遅れだ、テレワークさせろ! 業務に必要なものは送ってくださいよ。社員がテレワークできる環境を整えるのが会社の役目でしょ?」と抜かしてきました。
いいかげん頭にきた私は、彼をクビにする前にひと泡吹かせることに。
「わかりました。では、業務に必要なものをご自宅に送ります」
ご希望通りにしましたよ?
そして翌日、慌てふためいた彼から驚きの電話がかかってきました。「何ですかこれは! 土の中にミミズがうじゃうじゃいる!」と、悲鳴を上げています。
実は私の業務はミミズの養殖。父が経営する法人農家でオーガニック野菜を扱うようになり、バイオ研究所で有機肥料を扱っていた私が、土壌育成に効率の良いミミズを育てることに。評判が評判を呼び、全国各地の農家から引き合いが来たため、ミミズ養殖も本格化することになったのです。募集要項にもしっかり詳細を記載してあったのですが、彼は報酬欄以外はまったく理解していなかった様子。
「テレワークをご希望とのことなので、自宅でしっかり育ててください」と皮肉を込めた言葉に、彼は絶句しました。
翌日、自称エリートの彼は業務放棄を宣言し、退職することに。人づてに後日聞いた話では、この人は前職でもテレワークを乱用し、サボり癖のある問題社員だったのだとか。
今回の件で私は、「やっぱりミミズ養殖をやってくれる人なんていない……」と少し落ち込みました。しかし、全国で私のミミズを待ってくれている農家の方々のためにも、地元の有機農業発展のためにも、ここで止めるわけにはいきません。地道に頑張っていればきっと賛同者も現れる! と気持ちを切り替えて頑張っています。
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初日からテレワークを乱用してきた自称エリート男性には驚くばかりです。特殊な業務かもしれませんが、有意義かつ将来有望な分野ではないでしょうか。頼れる協力者が現れることを願いたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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