「昨日は高級エステに行ってきたの!」
「これから個別のピラティスレッスンよ!」
関係を悪くしたくない私は、いつも「素敵ですね」「さすがお義母さん」と適当に話を合わせていました。しかし、義母の態度は次第にエスカレート。
「あなたも行きたい? うーん、でもねぇ……。 一流のサービスって、受ける側にもそれなりの『品格』や『器』が求められるのよ。豚に真珠……あ、ごめんなさい、猫に小判になっちゃうと、お店の方にも失礼じゃない?」
夫に相談しても、「母さんも親父が死んで寂しいんだよ。お前が唯一の話し相手なんだから、聞き流してやってくれよ」と、事なかれ主義。
そんな折、義母から「豪華客船でのクルーズ旅を予約したの~!」と連絡がありました。
これが、わが家の崩壊の引き金になるとは、そのときは思いもしませんでした。
倹約と無縁の義母、そして違和感
義父が遺した資産はそれなりの額だったはずですが、今の義母の生活水準は異常です。
「旅行後は、少し倹約してみては……? お義母さんの老後が心配なんです」 意を決して提案してみましたが、義母は激昂。
「倹約なんて貧乏くさい! 私はずっとお父さんに甘やかされて生きてきたの。お金に苦労したことはないし、これからもこの生き方を変えるつもりはないわ!」
これ以上は無駄だと思い、私は口をつぐみました。しかし、電話を切る間際、義母が妙なことを口走ったのです。
「あ、そうそう。旅行代理店から『カードの承認が下りない』って連絡が来てるんだけど、息子は何か設定変えたのかしら?」
……はい? 息子? 私が「え? お義母さん、夫のカードを使ってるんですか?」と聞き返すと、義母は「あ……い、いえ! なんでもないわ! 間違えたの!」とあわてて電話を切りました。
いつもならここから1時間は続く自慢話が、今日は即終了。胸騒ぎがしました。夫のカード? まさか……。
夫は「俺の給料は小遣い程度でいいから」と家計管理を私に任せてくれています。ただ唯一、私が独身時代にコツコツ貯めていた「将来の住宅購入資金」が入った定期預金通帳だけは、「俺が責任を持って管理して、金利のいい商品に預け替えたり運用したい」と言って夫が持っていたのです。
暴かれた「聖域」
その夜。 帰宅した夫に「お義母さん、クルーズ旅行の代金がどうとか言ってたけど」とカマをかけてみました。すると、夫は明らかに動揺し、視線を泳がせました。
「え? ああ、母さん機械に弱いから、俺がネット予約の手伝いだけしたんだよ。代金は母さんが払ってるはずだぞ?」
嘘だ。長年の勘がそう告げていました。「ふーん。じゃあ、念のために住宅資金の通帳、見せてくれる? ほら、来月マンションの頭金を入れる予定だったでしょ」
夫の顔から血の気が引いていくのがわかりました。「い、今は手元にない」「貸金庫に入れてる」などと言い訳を重ねましたが、私が「じゃあ今すぐネットバンキングで残高照会して。できないなら明日銀行に紛失届を出しに行く」と詰め寄ると、夫はその場に崩れ落ちました。
震える手で夫が開いたスマホの画面。 そこにあるはずの800万円という数字は消え失せ、残高はわずか15万円になっていました。
「……は? どういうこと?」 私の声は怒りを超えて、冷え切っていました。
夫の言い分、義母の勘違い
「ち、違うんだ!」夫は涙目で叫びました。 「母さんが『パパがいなくて寂しい』って泣きついてくるから……」 「だからって、800万も渡したの!?」 「……ち、違う。渡しただけじゃないんだ」
夫の口から語られたのは、耳を疑うような事実でした。 実は、義父の遺産はとっくの昔に底をついていました。しかし、夫は義母に自分のクレジットカード(家族カード)を渡し、その支払いのために、住宅資金の定期預金を次々と解約して充てていたのです。
さらに夫は、義母を慰めるどころか、とんでもない提案をしていたと白状しました。
「親父が死んで、金がないって落ち込む母さんを見て……つい言っちゃったんだ。『俺が親父の代わりにいい思いさせてやるよ』って。それでカードを渡して、『このカードで、俺と一緒にぱーっと贅沢しようぜ』って持ちかけたんだ……」
なんと、誘ったのは夫の方でした。 夫は「成功した息子」を演じて義母にご馳走する快感に酔いしれ、義母もまた息子に甘えることで寂しさを埋めていたのです。
「実家に帰るたびに、そのカードを使って二人で高級寿司を食べたり……。この時計も、スーツも、『俺からのプレゼントだ』って言って、結局そのカードで買ったんだ。住宅資金を使えば、俺も大富豪になった気分を味わえたから……つい……」
呆れて物が言えません。 夫は「断れなかった」のではなく、「自ら進んで私の貯金を食い物にしていた」のです。私が必死に節約してお弁当を作っていた間、この男は私の金で母親と「大富豪ごっこ」に興じていたのかと思うと、怒りで視界が真っ赤に染まりました。
私が義母に電話をかけ、スピーカーモードにして真実を伝えると、義母もまた開き直りました。 「あら、息子くんが『いいから使え』って言うから使っただけよ! 自分の稼ぎだって嘘ついて見栄張ったのはそっちでしょ!? 共犯よ、共犯!」
どっちもどっちです。腐りきった似た者同士の親子に、私は完全に冷めきっていました。
夫婦のほころび、その後
「離婚します。弁護士を入れますので」 私が告げると、夫は「離婚だけは勘弁してくれ!」「金はなんとかして返すから!」と足にすがりついてきましたが、もう手遅れです。「私の年収はあなたの倍よ? だから、離婚しても生活にはこれっぽっちも困らないの。困るのはあなたの方じゃない? その稼ぎじゃ、一生かかっても返せないもの」
夫のプライドをへし折る事実を突きつけ、私は家を出ました。
その後――。
義母は「この家はお父さんとの思い出が!」と泣き叫んで抵抗しました。しかし、私は冷徹に告げました。
「警察は家族間の問題には介入しませんが、世間は違いますよ。息子の嫁が独身時代に貯めた大切なお金を食いつぶして豪遊していたこと、ご近所や親戚中に知れ渡ってもこの家に住み続けられますか? 何より、家を売ってお金を作らないと、息子さんは借金まみれで一生私への返済に追われます。お義母さんの面倒を見る余裕なんてなくなりますけど、それでもいいんですか?」
自分の老後の面倒を見るはずの息子が破滅すると悟った義母は、青ざめた顔で渋々売却に応じました。
しかし、口約束だけで逃げられては困ります。 夫は「絶対に売るから! 約束するから信じてくれよ!」と食い下がってきましたが、私は聞く耳を持ちませんでした。
「800万円が私の口座に全額着金するまでは、離婚届には判を押しません。あなたたちが逃げないように、最後まで見届けさせてもらいます」
それからの数カ月は、夫と義母にとって地獄だったでしょう。通常の売却では時間がかかるため、少しでも早く私と縁を切るために、義母の実家は不動産買取業者へ相場の7割ほどの安値で売却したようです。夫もまた、自慢の高級時計や車を二束三文で売り払い、必死で金策に走りました。
こうして半年後。私の口座に800万円が振り込まれたのを確認したその足で、私は役所に離婚届を提出しました。
元夫は今、実家を失った元義母と安アパートで同居しているそうです。家を安く叩き売ってしまったため、義母の手元にはほとんどお金が残らず、元夫は昼夜問わず働いて生活を支えているのだとか。私のところには、たまに元義母から「今月の生活費が足りないの、なんとかしてお金を貸してもらえない?」と連絡が来ることもありますが、すべて無視しています。
私は取り戻した800万円の通帳を眺めながら、深く息を吐きました。お金は戻ってきましたが、夫と過ごした数年間の信頼や時間は、二度と戻りません。
義母は私に「一流のサービスを受けるには品格が必要」と言いました。しかし、身の丈に合わない贅沢のために家族を裏切り、嘘を重ね、最後には住む家さえ失った彼らの姿を見て、私は痛感しました。本当の「品格」とは、高いエステに通うことでも、豪華客船に乗ることでもない。自分の足でしっかりと立ち、身の丈に合った生活の中で、他人に誠実であることなのだと。
私は取り戻したお金を、再び「自分の将来」のために貯金することにしました。誰かに見せびらかすためのブランド品も、一瞬で消える豪遊も必要ありません。誰にも隠し事をせず、毎晩安心して眠れる。あの人たちには理解できなかったかもしれないけれど、私にとっては、この穏やかな毎日こそが本当の幸せなんだと実感しています。
【取材時期:2024年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
義母が数億なら元夫も億単位で相続できてるのでは?
仮に義母がすっからかんになったとしても元夫が60万の仕送りして、
残高が尽きるというのも考えにくいですね。
ただただモヤモヤする記事でした。