本場のマナーとは?
面倒なことに巻き込まれたと思った私は、速攻彼女の提案を断りました。しかし彼女は納得がいかないよう。「世界を飛び回っていた自分からマナーを学べる機会はそうない」と言い張ります。
それからは、聞いてもいないのにパスタやピザの本場の食べ方を伝授してきた彼女。楽しい食事が台無しです。
そもそも社食で出されるパスタやピザに本場のマナーなど必要でしょうか。普段、夫や子どもたちに食事を作ってばかりいる私にとっての癒しの時間……ただおいしく食べたいだけなのです。
私の夫は…
それに、彼女の教えるマナーはほぼ彼女のマイルールのよう。そんなマナーある? と思うことばかりです。不確かな情報を声を大にして話す彼女は、なんだか滑稽に思えてしまいます。
やんわりと間違いを指摘してみたものの、知ったかぶりだと言われ、聞く耳を持たない彼女……。
そこで私はこれまで誰にも言ってこなかった話を打ち明けることにしました。実は私の夫はイタリア人。いわゆる“マナー”を私はひと通り知っているのです。
すると彼女は顔を真っ赤にして「地域によって違う!」と言い、食堂を去っていったのでした。
知ったかぶり!?
彼女は本当に長く海外暮らしをしていたのでしょうか。短期間の旅行や語学留学に行っただけなのに「海外生活が長い」と言って、にわかの知識を言いふらしているように思えてなりません。
彼女の言うマナーを鵜呑みにしている人がいたら、どこかで恥をかくのではないかと思ってしまいました。
もし少し調子に乗ってしまっただけであれば、素直に打ち明けたほうがいいのではないでしょうか。嘘を正すなら早いほうが良いはずです。
別の日、イタリアについて少し突っ込んでみたところ、彼女はしどろもどろ。そんな様子を見て、これまで彼女のマナーを信じて実践していた人も、疑い始めたようです。いつしか彼女のにわか疑惑は確信に変わり、誰ひとり彼女を相手にする人はいなくなったのでした。
そんなやりとりを続けていると、いつの間にか、マナーについて口うるさく言うことはなくなりました。今私は、食堂では平和に食事ができる幸せを噛み締めています。
食事のマナーは大切ですが、時と場合によるのではないでしょうか。社員食堂は、同僚と気軽に食事ができれば良いように思います。そんな場所で、厳格なマナーを押し付けられるのは、窮屈に思えてしまいますね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。