「妊婦様」に出会ってしまった
今日は仕事がお休みなので、娘と電車に乗っていつもより遠くまでお出掛けしていました、すると、「聞こえないの? 席譲れ! 私は妊婦よ! 早くどいてくれない?」と、突然ヒステリックな女性の声が……。女性はおなかが大きく、バッグにはマタニティマークがついていました。
女性が怒鳴りつけているのは、優先席に座っているお年寄り。見るからに顔色がわるくてつらそうでした。私は「ここに座ってください」と女性に言い、席を立ちました。娘も「おじいちゃんは座っててね」と声をかけ、お年寄りは、ほっとしたように笑顔で私たちにお礼を言ってくれました。
一方妊婦の女性は、仏頂面で私たちが座っていた席に座ると、おなかを撫でながらスマホで動画視聴をしていたのでした。
またもや遭遇
それから数日後。娘と電車に乗っていると、例の妊婦中の女性に出会ってしまったのです! 今回も優先席で大騒ぎしていたのですが、今回は彼女の姿にちょっと違和感が……。妊婦だというのに、距離があってもわかるくらい香水をつけていたのです。
気になった私は「失礼ですが、本当に妊婦さんかしら? たっぷり香水をつけて、ちょっと……。」と、私がそう声をかけると、女性は一瞬顔を歪ませたのですが笑顔で「今3カ月なの!このおなかを見てわからないの!? これから妊婦教室に行くの!」と言うのです。大きなおなかなのに3カ月? その一言で、私は彼女が妊婦ではないと気付いてしまったのですが、「ずいぶんおなかが大きいわね、3つ子?」と尋ねると、「いや、な、7カ月だった」としどろもどろ……。
今日はプライベートなお出掛けだったけれど、仕事モードに切り替えることにしました。
余罪が次々と明らかになって…
「申し遅れました。私、警察署生活安全課に勤務する警察官です」私は警察手帳を提示しました。実は私の仕事は、地域の安全を守る警察官なのです。続けて「他に妊婦の方は?」と車内の女性に問うと、たくさんの妊婦さんが手を挙げてくれたのです。
私は「すみませんが、確認のため母子手帳を提示していただけますか?」と追い討ちをかけると、さすがにヤバイと思ったようで女性は逃げ出したのです! が、その瞬間、おなかからバラバラとタオルが床に落ち、おなかはぺったんこに。
女性は「バレた!」と言い、タオルをかき集めていました。私は暴れる女性と一緒に次の駅で降りました。その後、駅員に身柄を引き渡し、私の仕事は終わりです。
その後、聞いた話によると、彼女は他の場所でも妊婦を装い騒ぎ迷惑行為をしていたというのです。さらには、さまざまな優遇サービスも受けていたことが判明しました。反省するどころか妊婦ばかりずるいと言い、大騒ぎだったとか……。
娘は今回の件で、より一層警察官に憧れを抱いてくれたようで、これからも週末のたびにパトロールに行くと意気込んでいます。地域の安全を守るため、そして、娘の夢を叶えるため、私のパトロールはまだまだ続きます。
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優先席は、妊婦さんやケガや持病がある方、お年寄りなどが安心して移動できるように設けられているもの。お互いが譲り合いの気持ちを持って、本当に必要な人が座れるようなやさしい世の中であり続けたいですね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。