「彼とはもう20年以上の付き合いなの!」「家族同然で育ってきたから、こういう集まりにも参加してるんだ~!」「もし親戚付き合いで困ったらいつでも言ってね!」と笑顔で私に近づいてきた夫の幼馴染。
そして、私にだけ聞こえるように、「そうそう、とりあえず来年はあのオードブル持ってこない方がいいよ~」と言ってきました。みんなでいろいろと持ち寄って食事会をすると聞いたので、私はデパ地下で大きめのオードブルを買ってきたのです。
「気持ちは評価するけど、ああいう市販品はNGなの」「せっかくの親族の集まりだから、手作りのほうが絆も深まるし……ルールってわけじゃなくて、暗黙の了解みたいなものだけどね!」と彼女。
私は「なるほど!」と思いながら彼女の話を聞いていました。しかし、彼女は次第に私を煽るようなことを言い始めたのです。
上から目線の幼馴染
「来年は私も何か手作りしてきます!」と言うと、「それがいいと思うな!」「でも、みんな好き嫌いあるし……私はみんなの好き嫌いを知ってるから大丈夫だけど」と彼女。
「私が教えてあげるから、安心してね!」と言う彼女に、私は「大丈夫です!お気持ちだけ受け取っておきます!」とはきはきと答えました。
「教えてもらうのは簡単ですけど、私、もっと夫のご家族や親族のみなさんと仲良くなりたいので……好き嫌いは自分からおうかがいしますね」と悪気なく言った私。
すると、彼女は「何それ?嫁のプライドってやつ?」「幼馴染の私がなんでも知ってることが気に入らないんでしょ?」「強がらなくてもいいよ、今日の集まりだってどう見ても私の方があなたよりなじんでたし!」とあからさまに態度を豹変させたのです。
「本当の家族じゃないからって馬鹿にして!」「あんたがこんな生意気な嫁だとは思わなかったわ!」「ぽっと出のあんたより、何十年も一緒にいる私のほうがみんなに大事にされてるんだから!」
そう捨て台詞を残して、彼女は行ってしまいました。
夫たちの本心
5時間後――。
義実家から自宅に戻り、夫と今日を振り返っていた私。「ごめんね、市販品NGだったなんて知らなくて……」と謝ると、夫は「え?どういうこと?」「母さんが『こんなおいしいオードブル初めて』って褒めちぎってたから、来年も買っていこうよ!」と言うので私はきょとん。
幼馴染の彼女から聞いた暗黙の了解について話すと、夫は「そんなルールないよ!」とすぐさま否定してくれました。そして、「ごめんな、あいつのせいで変に不安にさせちゃって……」と謝ってきたのです。
「実は、俺も両親も親戚たちも、あいつには困ってるんだよね」と言った夫。集まりでは彼女に親しげに接していたように私には見えたのですが、夫たちの本心は違ったようです。
「たしかに昔から家族ぐるみの付き合いはしてきたけど、大人になったらそれなりの距離感を保ちたいじゃん?」「だから、今となっては『なんで身内以外の人がいるの?』ってみんな困惑気味なんだよね」
年に1回の集まりでは近況報告とそのお祝いも盛大に行われるそう。そこでみんなでお祝いを包むとなると、とたんに彼女は「私はただの幼馴染なんで」と言って逃げるのだそうです。本当に家族のように思っているのなら、お祝いだって惜しまないでしょう。夫の親戚たちも私と同じように思っているようで、彼女はさらに反感を買っているようです。
「俺がもっとちゃんと対処しておくべきだった」「今回のこと、うちの両親にも伝えて、できるだけ嫌な思いをしないようにするから……。また来年も、俺と一緒に集まりに出てくれないかな?」と言ってくれた夫に、私は「もちろん!」と笑顔でうなずいたのでした。
本当に優先すべきもの
1年後――。
幼馴染の彼女から、宣戦布告ともとれるような電話がかかってきました。
「今年も毎年恒例の集まりがやってくるね!」と言う彼女に、「去年はいろいろと教えてくれてありがとうございました」とお礼を言った私。
すると、彼女は「今年はあなたも手作りするのかしら?」「まぁどんなに手の込んだものでも、私の手料理にはかなわないだろうけど」と言ってきました。「今年も参加するんですか……?」と聞いてみると、「もちろん!私がいないとあの集まりは始まらないんだから!」と彼女。
「今年も手料理持ってあなたの夫の実家にいくわ♡私は彼の幼馴染ですもの」
「あなたの料理、私と比べられちゃうわね。ごめんね~w」
「大丈夫ですか?」
「は?」
当然のように義実家での集まりに参加するつもりでいる彼女。しかし、私はそのとき一策を講じていたのです。この日に来て大丈夫なのかと気になり私は彼女に尋ねたのですが……。
そして、集まり当日――。
幼馴染の彼女は大量の料理を持って、意気揚々と義実家に現れました。
「さーて、私の手料理は今年は何分でなくなるのかしら~?」「あんたもがんばってきたんだろうけど、残念ながら私の手料理には及ばないでしょうね」「あんたよりなじんでる私に嫉妬しないでね?」と彼女。
昨年と変わらず、マウントを取ってくる彼女にため息をついた私。
「本当にこっちに来ていいんですか?」「今日、婚約者のご実家へ行ってご挨拶する日じゃなかったんですか?」
そう言うと、彼女は「えっ」と言って目をむきました。まさか、私が彼女の婚約者のことを知っているとは夢にも思わなかったのでしょう。
実は、彼女の婚約者の男性は、私の部下。最近仕事のミスが増えたことを心配して、話を聞いたところ、「彼女と婚約したけど、本当に結婚していいか悩んでいるんです……」と打ち明けられたのです。
「彼女には男性の幼馴染がいるらしくて、いつも比較されるんです」「彼女の本命は俺ではなく、その幼馴染じゃないかって不安なんです」と部下。話の流れで写真を見せてもらったのですが……そこに写っていたのは夫の幼馴染だったのです!
かわいい部下のために、一肌脱ぐことにした私。あえて、義実家の集まりと部下のご実家への結婚挨拶の日程を被らせました。まさか、本当に彼女がこちらの集まりを優先するとは思いませんでしたが……。
ちなみに、部下からは「彼女から『突然熱が出たから、行けなくなった』と連絡がありました」「婚約破棄します」とメッセージが来ていました。
部下からのメッセージを伝えると、「こ、こうなったら、あんたの夫と結婚する!彼を返せ!」ととんでもないことを言い出した彼女。「ぶっちゃけ私が本当に好きなのは彼だもの!その人は稼ぎがいいから結婚相手に選んだだけ!」「私のほうがあんたより手料理上手だし!ご両親ともうまくいくわ!」と高らかに宣言しました。
「いやいや、何が手料理だよ……」「スーパーの惣菜を別の容器に詰め替えて持って来てるの、バレバレだよ」「なのに、俺の嫁には市販品NGってよく言えたよな」と、彼女に言い返したのは私の夫。ドアの陰に隠れて、私たちのやり取りを聞いていたようです。
「そもそもこれは親族の集まり、お前は今後来なくていいからな」「俺の大事な妻に意地悪する幼馴染はもう知らない」「これを機に今後関わるのをやめよう」
夫のきっぱりとした絶縁宣言を受けた幼馴染。しばらく、その場に呆然と立ち尽くしていました。
その後――。
幼馴染の彼女は必死に私の部下に謝り、結婚したいと懇願したそう。しかし、部下は断固拒否したそうです。
もちろん、その年以降の義実家の集まりに彼女は来ていません。最初のうちは私に嫌がらせされたと吹聴していたようですが、義両親や親族が話を訂正して回ってくれたおかげで、彼女のほうが地元にいづらくなってしまったよう。今はどこか遠くに引っ越ししたと聞いています。
義母は私が持って行った市販品のオードブルをかなり気に入り、「あのオードブルが食べたい!」「今まではがんばって手料理を作っていたけど、年に一回の集まりくらい贅沢してもいいわよね!」と言ってくれました。そのため、今は私がみなさんから代金をお預かりして、全員分のオードブルを発注しています。
夫や義両親をはじめ、義実家の親戚の方々はあたたかい方ばかり。毎年の集まりがとても楽しみです。この家に嫁いでよかったな、と心から思っています。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。