そんな義妹と会社の創立記念パーティーで出くわした私。ブラウスにスカートといった、少し普段よりおめかしした私に、華やかなドレス姿の義妹。
そんな義妹は私を見つけるやいなや、真っ直ぐにこちらに向かってきて……?
義妹の顔色が真っ青になったワケ
「あ!ごめんなさい」とにやりと笑って、テーブルにあったビールを倒しました。わざとやったのでしょう。私の洋服はビールでびしょびしょに……!そしてこう言ったのです。
「貧乏人がパーティなんて場違いだから帰りなさいよ」
「場違いはどっちかしら?」と返した私に、義妹は半笑いで続けました。
「うちの夫はこの会社にスカウトされて転職した期待の新人!だから私もこの一点ものの特注ドレスを着てきたのよ?」「あんたはどうせ今日もパーティー会場の片付けか何かの仕事で来たんでしょ?」「どう考えてもあんたが場違いでしょ」
ビールまみれの洋服を拭きながら、「あのね、わたしこの会社の社長なの」と言う私に、「はぁぁ!?」と義妹。
「この創立記念パーティーの主催者である私……。私にビールをかけたあなた……。どっちがこの場から帰るべきかしら?」
「うそでしょ!?あんたはただのバイトじゃ……」と焦る義妹。「毎日Tシャツでジーンズ姿だけど、経営してるのよ。いつも質素な服を着ているのは、派手な服やブランドものにお金をかけるよりも、その分会社や社員に還元したいから」「でも、いくら安い服とはいえ、ビールまみれにされたのは悲しいなぁ」
ようやく周りの視線にも気づいたのでしょう、「え……じゃあ夫の雇い主は……」と言いながら、義妹の顔色はみるみるうちに真っ青に。
「あ、あの……私がすぐに洗います……いえ、クリーニングに……」と言った義妹に、私はかぶりを振りました。
「あなたはもう帰ってもらえる?社長にビールをかけた社員の妻がいたら、みんな気まずいでしょ?」
私の言葉を聞いて、彼女は「わ、わかりました……帰ります……」と言って、会場をすぐに去ったのでした。
開き直る図々しい義妹
翌日――。
「昨日は本当にごめんなさい!」「ずっとただのバイトだって決めつけて、見下してしまって……もう二度とそんなことしません!」とあらためて謝罪の連絡をしてきた義妹。
「まさかお義姉さんが会社の経営者だったなんて……だから、その……私と仲直りしてくれますよね?夫を懲戒処分したりしませんよね?」と不安がる義妹に、私は「大丈夫、あなたが転んだはずみでビールをかけたってことにしておいたから」「旦那さんを責める人もいないと思うよ」と告げました。
すると、一転して「さすがお義姉さん!」「でもそうだよね!だって私たちは大事な家族だもん!」と明るい声をあげた義妹。
「こんなことでクビにしたりしないし、なんだったら、最短で昇進させてくれるよね?」「超優秀だからスカウトされたわけだし!」「もしよかったら私もお義姉さんの会社で働いてあげるよ?年収1,000万円スタートでどう?」
義妹からの相次ぐ図々しい要求に、私はびっくり。反省してくれたと思っていたのですが……実際は違うようです。
「旦那さんに処分は出さないけど……あなたのことは許してないからね?」「社員とその家族をねぎらうための大事なパーティーを邪魔しておいて、謝罪と弁償ぐらいで何もなかったことになると思ってた?」と私が怒りをあらわにすると、「なんでそんなに怒るのよ!私謝ったじゃん!」と逆ギレしてきた義妹。
「そんなこと言うなら、旦那を辞めさせてやるから!」「せっかくスカウトでゲットした優秀な社員なのに……会社にとっては大きな損失じゃない?」
そう言われても……。実際のところ、義妹の旦那はただの中途採用。うちの会社がスカウトしたわけではないのです。だから特別待遇する予定もありませんでした。
「こちらからはスカウトしてないし、普通の中途採用の人と同じ待遇だけど……あなたの旦那さんにちゃんともう一回聞いてみたら?」「こちらとしては辞めてもらっても構いません。また新しくほかの社員を採用するだけなので」と言って、私は電話を切りました。
義妹の夫が転職した本当の理由と義妹の末路
数時間後――。
社長室にノックして入ってきたのは、義妹の夫でした。
「この度は誠に申し訳ございませんでした!妻の無礼な振る舞いについて、心よりお詫び申し上げます!」と額を床にこすりつける勢いで謝ってきた彼。悪いことをしたのは義妹だし、彼がここまで謝る必要はないのに……。
「妻の失態は俺の責任でもあります」「なのに、俺には何も処分なしで……本当にありがとうございます!」と言う彼に、「謝ってくれるのはいいんだけど、奥さんに本当のことを言ってあげてくれない?」「うちからスカウトされた、みたいなこと言ってたらしいじゃない」と言うと、ばつが悪そうに下を向いた彼。
「……実は、俺、そもそも転職なんてしたくなかったんですよね」
彼が転職活動を始めた理由は、義妹に言われたからだったそう。義妹は友だちとのマウントの取り合いに夢中らしく、旦那の職業マウントで勝ちたいがために彼に転職するように迫ったのだそうです。
うちの会社での採用が決まったことを彼が義妹に報告すると、義妹は「年収それだけしか上がらないの?」「ダサっ、こんなんじゃ友だちに自慢できないじゃん」と一蹴。
「俺、いやいやながら転職したのに、そんなこと言われて悔しくて……つい、『スカウトだから待遇がいいんだ』って言っちゃったんです」「でも、ここの会社で働き始めて本当に楽しくて!この会社に来れてよかったと心から思ってます!」「今後二度と、お義姉さんに迷惑かけないようにします!そして社員としても、どうぞよろしくお願いします!」
数日後――。
「助けて!」と義妹から連絡が。できるだけ関わりたくないと思いながらも、私は一応話を聞いてみることにしました。
「お義姉さん!助けて!200万貸して!」
「特注ドレスの支払いに夫が激怒しちゃって。離婚を言い渡されちゃったの!」
「大賛成なんだけど?」
「え?」
夫の「スカウトされた」という嘘を信じ込んでいた義妹。会社創立パーティーのために、特注ドレスだけでなく、靴やバッグ、アクセサリーまで新調し、トータルで200万円もかけていたというのです。
「しかも、夫には内緒で買ってたの!」「支払額を話したら、夫がブチギレて!それで、私、離婚を言い渡されちゃったの!」「だからお願い、200万円貸して!」
ずっと見下していた私に、お金に困ったからといって泣きついてきた義妹。もちろん、助けてあげるつもりはありませんでした。
「こんな自己中な人に200万円なんて大金を貸すなんて無理!」「もうあなたとは本当に関わりたくないし、なんだったら離婚も大賛成だから!」「それじゃあ、もう連絡してこないでね!」
その後――。
義妹の必死の説得もむなしく、義妹夫婦は離婚。そして、ドレス等の支払いはすべて義妹が負担することに。私の夫や実家にも泣きついたそうですが、みんな事情を知っていることもあって、誰も助けてくれなかったそう。今は一人、借金の返済に追われていると夫から聞きました。
一方、義妹の元夫は、いろいろと吹っ切れたのか仕事に集中し、結果を出しまくっていました。我が社での超最速昇進記録を塗り替えそうな勢いです。パーティーは台無しにされましたが、結果オーライだと思っています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。