妹の婚約者だけど…
妹の婚約者と初めて顔を合わせた日。なごやかな雰囲気で、家族紹介が始まりました。
「こちらが私の父と母。2人のことは知っているわよね。そしてこちらが姉とその息子。まだ6歳なのに受験勉強を頑張っているかわいいおいっ子よ。ちなみにお義兄さんは出張中です」
私たちの父は、実はとある企業の社長。母も妹もそこで役員を務めています。家族の中で大学へ進学しなかったのは私だけ。当時やりたいことがあったから高卒でその道を極めるべく修行に出たのですが……。今は専業主婦をしていることもあり、私は妹の婚約者にどんな印象を持たれるのか、少し気になっていたのです。
「初めまして」と父と母に丁寧にお辞儀をし、あいさつをした婚約者。しかし、その後彼は私を完全に無視し、目を合わせようともせずに妹のほうを振り向いて、別の話題をスタート。それからは私が話しかけても、周囲が気付かない程度にそれとなくスルーです。父母も妹もわかっているのかいないのか、ともかく表面上は穏やかな歓談の場を終わらせたのですが……。
結婚式に来るな!?
しばらくして、妹からランチに誘われた私。婚約者も同席し、大事な話があるというのです。
「お義姉さんには、親族代表のあいさつをお願いしようと思いまして……」と、初めは殊勝なことを言っていた婚約者。しかし妹が席を外した瞬間に、彼の表情が変わりました。
「あんたは俺たちの結婚式には来ないでほしい。高卒女が、俺の結婚式にいるなんてありえないんだよ! 俺は婿入りしたら、次期社長になるんだからな。あんたは父親の会社に興味ないんだろ。じゃなきゃ高卒で専業主婦とか、親の恥だっつーの」と言いだしました。
私はあきれてものも言えません。化粧室から戻った妹は、さきほどの式次第の説明を再開。婚約者の本性に気付いていない様子です。どうしていいかわからなかった私は、ひとまずその場は何も聞かなかったことにしてやり過ごしました。
驚きの言動
結婚式当日。さんざん迷いましたが、私は結局家族と一緒に出席しました。新郎はといえば、式の最中にこちらを何度もにらみつけ、私の息子にも冷たい態度を取ったのです。
余興に差しかかったとき。突然新郎がマイクを握りしめ、どこから耳にしたのか、とんでもないことを言い放ちました。
「そこの君、有名私立のお受験に失敗したんだろ? ちなみにそれ、俺の母校だけどね。そんなおいなんて恥だから帰れ!」
会場が静まり返りました。驚いた妹が慌てふためいて止めに入りましたが、彼は続けました。
「高卒の姉と、受験に失敗したおいとは縁を切ってほしい。親族として、俺たち次期社長夫妻にふさわしくないとは思わないのか?」
その言葉に、妹の表情がサッと変わりました。
妹の決断は?
妹は、きぜんとした態度で新郎をにらみつけ、マイクを奪い取って宣言しました。
「……あなたの考えはよくわかった。なら、私たちのご縁も切りましょう! 結婚はナシ!」
さらに妹は、私の息子が受験に落ちた本当の理由を明かしました。「この子はね、受験よりも私を選んで病院に来てくれたのよ。だから試験を受けられなかっただけ」
実は先日、ちょうど息子の試験日に、妹が緊急入院してしまったのです。検査の結果、ただの盲腸だったため大事はなかったのですが、妹になついている息子は、病院に行くと言って聞かなかったのです。
とどめのひと言
「あの、あなたの学校は行けないけど……。Aインターナショナルスクールに合格したので、そこで頑張ります」と遠慮がちに言った息子のひと言に、新郎は大仰天。「は? Aインターナショナルだって?」
実は、そこは彼の母校よりずっとレベルの高い超難関校だったのです。
「ちなみに、学歴重視で高慢ちきなあなたに教えてあげる。姉は、日本では高卒だけど米国で医師免許を取った優秀な人よ。夫は外科医。聞かれなかったから言わなかったけどね」
その後すぐ式は中止となり、結婚の話も白紙に戻りました。結婚式の参列者全員に本性がばれた彼は、誰からも距離を置かれて孤立しているのだとか。自業自得です。妹は私と息子に平謝り。見る目がなかったのは事実ですが、謝る必要はありません。これからきっと、すてきな人と出会ってくれると信じています。
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高卒&専業主婦だと言って姉を見下したばかりか、6歳の子の受験結果について大勢の前で揶揄(やゆ)した新郎。学歴主義を通り越して人としてありえないですよね。妹も、彼の本性に気が付いてよかったのではないでしょうか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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