私たちは、義母からひどい扱いを受ける生活が始まりました。
義母は私たちがお金目当てで同居すると思ったようですが、もちろん、そんなことは少しも考えていません。そもそも、義父の遺産もそれほど多くないと思っていますし、現にそのようです。夫は、純粋に義母を心配しているだけなのです。
私たちには子どもがおらず、共働きなので蓄えは十分にあります。義母のお金を頼りにする必要はありません。
長男を溺愛する義母
義兄は自分で会社を経営しています。夫は普通の会社員ですが、地道に働いて今では管理職。自分の仕事に誇りを持って働いています。私は、夫が義兄に劣っているとは思わないのですが、義母は夫に不満だらけです。容姿から学業の成績、仕事、すべてにおいて夫は義兄に劣ってきたと言います。
確かに夫は、何でも兼ね備えたパーフェクトな人ではないかもしれません。しかし、夫は義母のことを思い、私に同居をお願いするような心やさしい人。そういうところに、私は惚れました。素敵な息子ではないかと私が言うと、「親孝行なんて、して当たり前」と義母は吐き捨て、絶対に夫を褒めません。
私たちが義母と同居してから1年が経ったある日、それまで一切、義実家に寄り付かなかった義兄が突然、義母に会いに帰ってきました。生涯独身を貫くと言っていた義兄でしたが、結婚の報告にやって来たのです。
自分の会社の女性社員と授かり婚するそうで、念願の孫が抱けると義母は有頂天。「子どもを産まない嫁(私)を連れて来た次男とは違って、長男はいい嫁を連れて来てくれた」と大喜びです。
義兄が結婚の報告に来た日以降、義母は「長男夫婦は遠方に住んでいるから、なかなか会えないのが難点。孫も生まれるし、どうせなら義兄夫婦と同居したかった」と、毎日私に愚痴ってくるようになりました。
突然追い出された私たち
それから半年後、ある日突然、私たち夫婦は義実家から追い出されることに……。
「長男一家と同居するの! 今すぐ出てってちょうだい!」
「あんたらの荷物は外に捨てといたから〜」
義兄が、義母のことも心配なため、自分たちと同居しないかと提案してきたそう。会社を売却して社長職を退き、実家に戻って家族で静かに暮らしたいと言っているのだとか……。
「本当に出て行っていいんですか?」
私は、直感的に義兄の提案には何か裏があるような気がして、義母を心配しました。しかし義母は、それまで面倒を見てきた私たちのことをあっさり捨てたのです。
「何よ? 負け惜しみ?」
私は義母に、義兄から詳しく事情を聞いたのかどうかや、義兄は会社を売却した後も安定した収入を得られる見込みがあるのかなど、聞いてみましたが、「あんたには関係ないだろ」と怒られてしまい、話になりませんでした。
その日、仕事を終えて私が義実家に帰ると、本当に私たちの荷物は玄関の外に出されていて……。
玄関は中からチェーンをかけられており、中に入れません。義母に開けてほしいと頼んでも、「明日から長男と同居するから、あんたらの部屋はもうない!」と言って、開けてもらえなかったのです。そうこうしているうちに、夫も帰ってきました。夫から義母に話をしても、義母は出て行けの一点張り。私たちは仕方なくホテルに泊まり、急ぎ新居を探しました。
そうして突然、住む場所を失った私たちは、しばらくホテル生活をした後、新居に引っ越し。バタバタで大変でしたが、義母から嫌みを言われることがなくなり、どこかスッキリもしていました。
義兄が義母と同居した本当の理由
それから数カ月。
夫と2人で平穏に暮らしていたある日、義母から電話がかかってきました。出てみると、愚痴のオンパレード。義母のことを思って……と言っていたはずの義兄でしたが、同居してみるとそうではなかったようです。
生まれたばかりの子どもの世話を義母に押しつけ、自分たちは好き放題。義母は夜泣きに悩まされ、まともに眠れない日が続いているそう。さらに、義母に同居を提案したときには、すでに義兄は会社をたたんでおり、収入がない状態。それも売却したのではなく、業績悪化で倒産しただけ……。義兄こそ、義父の遺産が入った義母のお金目当てだったのです。
育児も家事も義母任せだそうで、私たちに戻ってきてほしいとお願いしてきた義母。しかし、私たちはもう義母の願いを聞き入れるつもりはありません。義兄たちからひどい扱いを受けている義母ですが、私たちは義母からひどい扱いを受けてきました。
感謝されたこともなく毎日嫌みを言われ、挙句、急に追い出され……。急きょ、新居を探して生活を整えるまでは本当に大変でした。しかし、そのおかげで義母から離れ、夫婦2人だけの生活がいかに幸せかを改めて実感することができた私たち夫婦。もうあの生活には戻れません。
私がそう話すと、「あの子(夫)は、やさしい子だから、私と離れてよかったなんて言うわけない」と言う義母。この地獄の生活からも、きっと夫が義母を救ってくれると言いますが……。
どれだけ冷たくされても、義母を思い、尽くしてきた夫。同居までしたのに、そんな夫の気持ちを踏みにじり、義母は義兄を選びました。荷物を捨てられたあの日、夫は、いくら尽くしても無駄、義母が自分を愛してくれることはないと悟ったのです。
「見捨てないで」と義母は泣きついてきましたが、どれだけ仕事で疲れていても、義母のために動き、文句を言われても黙って耐え、義母をいたわっていた私たちを捨てたのは義母のほうです。夫は義母に縁を切ると伝え、その後、私たちは一切の連絡を断ちました。
私たちは今も、夫婦2人で仲良く幸せに暮らしています。義兄はというと、今も実家で義母に寄生しているようですが、夫婦関係がうまくいかなくなり離婚したと聞きました。義兄の奥さんは子どもを連れて出ていき、現在は義母と義兄の2人で生活しているようです。苦しい生活が続く義母ですが、義兄と支え合って生きていってほしいと思います。
◇ ◇ ◇
ずっと義兄と比べられ、ひどい扱いを受けてきた夫。それでも義母を思い、尽くしてきたというのに、義母はどうしてそんなにひどいことができたのでしょうか。きっと、縁を切ると言う選択も容易ではなかったはずです。たとえ、家族であっても、どちら一方をひいきするような態度は、やがて信頼関係を壊してしまいます。大切な家族だからこそ、公平な態度と思いやりを忘れずに接したいですね。
【取材時期:2025年5月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。