義母は、息子である夫のことをとても誇らしく思っています。宣言通り、上京して会社を立ち上げ、成功した夫を「立派な息子」と褒めたたえています。そして、私は義母から「高卒で専業主婦のあなたが何の不自由もなく生活できているのは、息子のおかげよ」と言われます。
確かに私は高卒ですが、専業主婦ではありません。私の会社はオフィスを構えず、リモートワークが主体。たまに打ち合わせで外出することはありますが、ほとんどが家での仕事なので、何度説明しても義母は信じてくれないのです。
そんな義母は、地方で暮らしているため、都心でのタワマン生活に憧れています。最近になってようやく、義父と夫が連絡を取るようになり、近々私たち夫婦が引っ越すことを義母も知ったようです。
義母は興奮しながら私に連絡してきました。そう、私たちの引っ越し先は、義母が憧れるタワマンなのです。
専業主婦のくせに生意気な女…
今住んでいるマンションは間取りが気に入っていて、住みやすいのですが、向かいに新しいマンションができて日当たりが悪くなってしまいました。その理由から、引っ越しを考え始めたとき、夫がタワマンの良さを熱弁。利便性や資産価値、耐震性、セキュリティ面の充実などを説明され、説得されて、私はタワマンの購入を決めたのです。
タワマンを購入するに至った際の話を聞いた義母は、夫が買うのに、なぜ私に決定権があり、私が購入の許可を出すのかについて、とても不思議がりました。決してそういうわけではありませんが、私たち夫婦は、大きな買い物をするときは必ず2人で話し合って決めることにしています。ただ相談して、意見をすり合わせ、購入を決めただけなのですが……。
義母は私に「専業主婦のくせに生意気な女ね」と悪態をつきましたが同時に、私がお金の使い方に口を出すことを許している夫のことを、「やさしい息子」と誇らしくも思ったようです。
義母が私のことをよく思っていないことは知っていましたが、なぜここまで嫌われているのか、私はわかっていませんでした。しかし、義母の話をよく聞いてみると、とんでもない事実が発覚したのです。私は義母に嫌われて当たり前でした。
なんと、夫が義母に私のことを浪費家だと愚痴っていたのです。美容医療にエステ、高級化粧品……自分磨きにお金を使いまくっていると言い、「美人な嫁をもらった弊害だ」と夫が嘆いていたと義母は話し始め、私に再び悪態をついてきました。
「自分ばかりわがままを言って、息子のお金を無駄に使って、タワマン購入に口を出していたなんて息子が不憫よ」と、義母は言います。
その後は、どんな部屋に越すのか、根掘り葉掘りタワマンのことを聞かれました。私がわがままで強欲で夫が不憫だいう話から、タワマンの間取りや立地の話まで、ひとりで、勝手に盛りあがっていた義母。私はただ話を聞き、聞かれたことに答え、義母との会話を終えました。
義母に新居を乗っ取られ…
それから数日後、引っ越しが終わったその日。いきなり義母から「これから遊びに行く」と連絡が。会うのは久しぶりで、夫もしばらく不在の予定だったため、私は少し緊張しながら待っていると、義母は長期旅行にでも行くかのような大きなカバンを持って、新居にやってきました。
そして「どうせ部屋が空いているでしょうから私もしばらく厄介になろうと思って」と言い出したのです。私が「それはちょっと……」とと断ろうとしたところ、「息子のタワマンに、母親が泊まるくらい何が悪いっていうの? あなたに断る権利なんかないでしょ」と言い……。
「タワマンには私が住むわね♪ 息子が買ったんだから当然でしょ?」
「そんなに嫌なら嫁は他人なんだから出ていきなさい。離婚届も送るわね~」
と、あろうことか私を追い出そうとしてきたのです。
義母は、「息子のために浪費家の迷惑嫁を追い出してやる」と言います。話をしようにも、「出ていけ」の一点張りで会話になりません。これはもう、見切りをつけたほうがいいのかもしれない……私はそう思いました。
「私を追い出すってことは、つまり……」
ひとまず出ていくことを受け入れた私。そうするしかなかったので、一旦は出ていきますが、私を追い出すということが何を意味するのか……。
「は? 何よ?」
私の言葉を遮って、強気な義母。荷物をまとめる余裕すらなく、追い出された私は仕方なく、実家に帰ることにしたのです。
それから1週間後、再び義母から連絡が入りました。夫から家を追い出されたと憤慨しています。それもそのはず。私を追い出すということは、夫が私に捨てられることを意味しているのです。
夫は、義母に嘘をついていました。私は今までずっと、夫の嘘に付き合っていたのですが、もう夫に付き合うことはできません。上京後に夫が起業したのは本当です。しかし、成功などしていないのです。経営は数年で傾き、程なくして倒産。それからは、私が夫を養ってきました。
実は、私も会社を経営しています。無職の夫にはタワマンを買える収入などありません。タワマンを購入したのは私なのです。引っ越し当日、義母が押しかけてきたとき、夫は義母に出張と偽っていましたが、ただ旅行に行っていただけ。私が夫のお金を好きに使っているのではなく、夫が私のお金を好きに使っているのです。
恩をあだで返した夫にさよなら
啖呵(たんか)を切って上京したため、事業に失敗しただなんて言えず、嘘をつき続けてきた夫。義父譲りなのかプライドが高い夫は、嫁に養われているなど絶対に知られたくなかったのでしょう。私は夫を愛していたので、口止めされて以来、ずっと夫の嘘に付き合ってきたのです。
しかし、夫が裏で義母に私の悪口を言っていたと知り、愛はすっかり冷めてしまいました。わがままを言うのも、浪費家なのも、私ではなく夫なのに……恩をあだで返すとはこのこと。本当に頭にきました。
私は夫に離婚を宣言。夫は「別れたくない」と泣いてすがってきましたが、最終的には離婚を受け入れてくれました。
弁護士を通して話し合った結果、私が夫の事業へ貸してた多額のお金が、貸付金債権として認められたため、財産分与の計算上、夫婦の共有財産から夫の負債額が差し引かれ、夫には財産がほとんど残りませんでした。タワマンは私の独身時代の貯金で購入していたため、財産分与の対象にはならず、貸しに出して、私はおひとりさまにぴったりなマンションへ引っ越し。今は、快適なシングルライフを満喫中。仕事も順調です。
◇ ◇ ◇
心を尽くして、それを恩知らずな態度で返されるとは……支え合うと誓った夫婦とはいえ、そのような態度を取られては許せなくて当たり前なのではないでしょうか。夫婦として、永く、仲良く、一生をともにする。そのためには、対等な関係でなければいけないはずです。支えられていることを当たり前と思わず、寄り添ってくれるパートナーへの感謝を忘れずにいたいものですね。
【取材時期:2025年6月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。