母は私たちの結婚を喜んでくれたのですが、誰よりもテンションが高いのは彼。実家に興味津々で家中を探検し、終始興奮をしっぱなしでした。夜は、母が予約してくれていた料亭で食事。彼は大満足だったようで、お酒も進みました。
しかし翌朝、母が出してくれた朝食で、急に雲行きがあやしくなり……。お味噌汁に、納豆と白米というメニューだったのですが、それが彼は気に入らなかったようです。
帰るまで彼は不機嫌なままでした。昨日の笑顔は何だったのかと思うほどの態度で、実家を後にするときも母にきちんとあいさつをしなかった彼。結局その日は、微妙な雰囲気で解散となりました。
まさかの理由で婚約破棄!?
翌日、彼から話があると呼び出された私。そして、彼は突然、私を「この嘘つき偽セレブが!」とののしりました。何の話かまったくわからず、ぼう然としていると、彼はありえない理由から婚約を破棄すると言い出したのです。
彼は、セレブの朝食が納豆ご飯だなんてありえない、親が会社を経営していて金持ちだと思ったから付き合ったし、結婚までしてやろうとしたのに、あんな朝食しか出せないド貧乏だったなんてがっかりだと……。
そして彼は婚約を破棄すると言い、慰謝料まで請求してきたのです。私は、どうして彼が話していない実家の事情を知っているのか不思議でしたが、そんなことはもうどうでもいい。一刻も早く縁を切りたいと思いました。慰謝料でも何でも請求すればいいと告げ、即刻婚約を破棄しました。
そのことを母に報告すると、最初から彼に違和感を覚えていたと言っていました。彼の実家を詮索しているような様子が引っかかっていて、きっとそのうち本性がわかるだろうと予想していたらしいのです。
そのため、私たちは、最後までとことん彼と闘うと決めました。
粗末な朝食メニューの真実
後日、彼は父親を連れて私の家に押しかけてきました。母が私を心配して来てくれていたので、ちょうど良かったです。
彼らは、私が偽セレブを演じ、彼をだましたと詰め寄ってきましたが、とんだ言いがかりです。彼がお金目当てで私に近づき、勝手に貧乏だと決めつけて、婚約破棄しただけの話です。
見栄を張って豪邸に住んで、あんな粗末な朝食しか出さないなんてケチだ、貧乏だと母に向かって暴言を吐きました。しかし、話を聞いていると見栄を張っていたのは彼のほうだったことが判明。無理してブランド物を購入し、クレジットカードの支払いに苦労しているようです。
彼が文句を言った「粗末な朝食」ですが、実はあれは、前日お酒を飲みすぎていた彼を気遣ってのメニューでした。もちろん、納豆やお米、お味噌のどれをとっても、母がこだわってお取り寄せしている良質な材料です。
そうとも知らず、母をバカにし失礼な態度を取り続ける彼に私の怒りは爆発寸前。母から聞いた衝撃の真実を突きつけることに……!
母が彼を怪しんでいた理由
実は、母が彼を怪しんだのにはわけがあります。3年ほど前、実家の回りをうろつく、怪しい人物を防犯カメラがとらえていました。用心深い母は、その映像を残していたのです。
改めて映像を確認すると、3年前に実家の周りをうろついていた怪しい人物は、なんと彼だったのです。彼が先に実家や母に目をつけて、後から私に近づいたことは間違いありません。
その事実を突きつけ、母が用意した朝食の意図を伝えると、彼は慌ててお金目当てではない、私を愛していると言って、婚約破棄の取り消しを懇願。さっきまで彼と一緒になって私たちに罵声を浴びせていた父親も、すっかり態度を変えて謝罪し始めました。
しかし、私が応じるわけなどなく、もう二度と私たちに関わらないでほしいと告げると、今度はなんと、超高額な慰謝料をふっかけてきたのです。慰謝料を貰いたいのは私たちのほうですが、彼らは1千万円を要求。挙げ句、母の会社の評判を落とすと脅し、2千万円、3千万円と吊り上げてきたのです。心の底からあきれました。
いくら脅されようが、私たちに非があったとは思えません。慰謝料の件については、母の会社の有能な顧問弁護士に任せることにしました。
ほどなくして、私は彼と完全に縁を切ることができました。もちろん私が慰謝料を請求されることもなく、今は実家に戻り、母と2人でおいしい納豆ご飯を食べながら楽しく暮らしています。
◇ ◇ ◇
結婚を考えた人が初めからお金目的だったなんて、ひどくショックだったと思いますが、そんなことはどうでもよくなってしまうほどに、彼の本性がバレてからが最悪でしたね。結婚する前に気がつけてよかったです。これで落ち込まずに、お金ではなく自分を見てくれる素敵なパートナーを見つけて、幸せになってほしいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。