10年以上ぶりに連絡をしてきた同級生。どうして連絡をしてきたのかと問うと、「どうしたもこうしたもないわよ!」「私、あんたのこと絶対に許さないから!」となぜか激怒していて……?
同級生がつけてきた言いがかり
まったく心当たりがない私。しかし、彼女の怒りは止まりません。
「ふざけないでよ!!私から大事な婚約者を奪っておいて……!」
彼女はうちの店で働く店員の男の子と付き合っていたそう。去年の冬に婚約して、来年の春には結婚する予定だったようですが、2週間前に婚約破棄を告げられたとのことでした。
しかし、私と彼は店長と店員の関係。自身も自分のカフェをオープンしたいと考えており、ラテアートの腕を磨いたり、新商品を考案したりする彼は、たしかに私の右腕的な存在ではありますが、決して男女の仲ではありません。
「毎日楽しそうにカウンター内で話してるじゃない!」「あんたが誘惑して、婚約破棄するようにそそのかしたんでしょ!」と彼女。とんでもない言いがかりです。
私がいくら否定しても、彼女は聞く耳を持ちませんでした。結局、「裏切者の略奪カフェなんて早く潰れろ!」「こうなったら略奪返しよ!」「覚悟しておきなさい!」と言い捨てて、同級生は電話を切ってしまいました。
その後すぐに、私はそのスタッフを呼んで話を聞くことに。すると、同級生と付き合っていたのは事実でした。
「むしろ浮気していたのは彼女のほうなんですよね……」「『年下と結婚しても大丈夫か不安で……』とか言って、ちょっとした保険で別に彼氏を作ったって言い訳されたので、別れを切り出したんです」「そしたら『さみしかったから仕方ないの』って開き直るわ、『カフェの夢はどうせ失敗する、それより早く結婚しろ』『開店資金で結婚式やりましょう!』って俺の貯金まで狙い始めるわで……」
ため息をつきつつ、そう話してくれた彼。さらに「聞いた様子だと、また彼女が店長に連絡してくるかもしれないし、最悪このお店に突撃とか……巻き込んでしまうのが申し訳ないので、今日付けで退職させてください」と言い出したので、慌てて止めた私。
「お店は大丈夫だから、このまま続けてほしい」「私も開業したとき、周りになかなか理解してもらえなくて……だから、あなたの夢も応援させてほしいな」と説得すると、ようやく彼は「ありがとうございます……」「俺、これからもっとがんばります!」と言ってくれたのでした。
勘違い同級生が略奪した男性の正体
翌月――。
「どうだ!これぞ略奪返しよ!」「あんたから婚約者を奪ってやったわ!」「ねぇねぇ、今どんな気持ち?悔しくて泣けてきちゃう?」と例の同級生から再び連絡が来ました。
私がぽかんとしていると、「あんたのカフェの常連の彼よ!」「もしかして、ショック過ぎて声も出ない?」と言い出した同級生。彼女は元彼と連絡を取ろうと、毎日私の店の前で見張っていたというのです。そこで、その常連さんと私の関係を知ったと言っていました。
「ちょっと待って、本当に意味がわからないの」「どこからそんな話が出てきたの?」と聞くと、「はぁ?彼が教えてくれたわ」「『ここの店長と同級生なんです』って話しかけたら、『どうも婚約者です』って」「婚約者だけどあまりお店の邪魔にならないよう、決まった日にしかお店に来ないって配慮もしてくれるやさしい人だし、たまに差し入れもしてるって……いい男すぎ!」と彼女。
「えっと……それで、あなたはその常連さんと正式に婚約したの?」と尋ねると、「ええ、そうよ!彼、私に夢中みたい♡」と高笑い。
「婚約者を略奪返しされて、ざまーみろ!今じゃ彼は私にベタ惚れよ♡」
なんだか勘違いしている様子の彼女に私は冷静にこう返しました。
「私、5年前に結婚してるけど?」
さらに、「っていうか、あなたが婚約した人って……もしかして……」と言うと、「え?」と不思議がる彼女。
私は念のため彼女に写真を見せてもらいました。すると、彼女が略奪したつもりの「婚約者」は、実は私にとっては厄介なお客さんだったのです。その人は、ただの常連客でしたが、かなり問題のあるお客さんなので、出禁にしたいと思っていたのです。
「は?な、なに言ってるの?」「だって、彼はあんたの婚約者だって言ってたし、毎週来てて、あんたと親密そうに話してたじゃない!」と同級生。
それは、店員と客の関係だからです。笑顔での接客は基本です。ただ、差し入れは基本的には断っています。
「もう一度言うけど、私は5年前に結婚しているの」「夫は警察官で、夫婦仲もとってもいいんだからね!」と胸を張った私。
それでも、「じゃあ、彼はなんなのよ!堂々と自分で婚約者だって言ってたのよ!?」「こんなのっておかしいじゃない!これじゃ、彼が自称婚約者だって名乗る変な人になるわよ!?」と食い下がってきた彼女。
「そのとおり、変な人なんだよ」「いくら既婚者だって説明しても、『指輪してないんだから独身でしょ?』『本当は僕のことが好きなんでしょ?』って聞く耳持たないから、出禁にしようと考えてたの」「夫が警察官であることをちらつかせても引き下がってくれなくて……『君の心を奪った罪での逮捕かな』とか言って、全然彼には通じないんだよね……」
「な、なによそれ!とんでもないヤバい男じゃないの!」「そんな男いらない!別れてくる!」と焦ったように言って、同級生は一方的にやり取りを終えてしまいました。
その後――。
同級生は婚約者に別れを切り出したそうですが、「俺の気持ちをもてあそんだな」「40歳を過ぎて、ようやく運命の人に出会えたのに、絶対に許さない」と彼は豹変。いつの間にか職場や家も知られていてなかなか別れてくれないのだそう。
彼女から「お前のせいだ!なんとかしろ!」と電話がかかってきましたが、本当に私は何もしていないのです。彼女だって同じようなことをうちのスタッフに対してしていたので、自業自得だと思っています。
例の常連さんを出禁にしたこともあって、うちのカフェにも穏やかさが戻ってきました。スタッフの彼はカフェの仕事の傍ら経営も学んでおり、さらに頼れる存在に。今度うちの2号店を出すので、そこで店長スキルを磨かないか、と声をかける予定です。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。