同窓会が終わって帰ろうとすると、路地の方にぐいっと手を引っ張られました。私の手を引っ張ったのは例の同級生。学生時代は、私はおとなしい彼女とは、本の貸し借りをするような仲でした。
「突然ごめん……でもやっぱり、私、もう黙ってられない!」と言った彼女。そして、「この裏切り者!最低女!」「あんたなんてもう友だちじゃないからね!」と涙声で言ってきて……?
同級生から呼び止められた衝撃の理由
さっきまでみんなで和気あいあいと話していたはずなのに……と、混乱する私。そんな私を見て、「しらばっくれないで!よくも傷心の私に……堂々と彼の写真なんて見せられたわね!」と彼女。
「彼は私の婚約者だったんだから!来年の春には結婚する予定だったのに……」「私から略奪しておいて、夫婦写真を自慢げに見せびらかすなんて……最低よ!」「会社経営してる親のコネでも使って、強引に彼に迫ったんでしょ!」と私を責め立ててきました。
「まさか同級生に婚約者を略奪される人生があったとはね……」「この裏切り者!私の婚約者を返してよ!!」とさらに大声を出す彼女。
私は戸惑いながら、「夫とは1年前に結婚したんだけど……」と伝えました。「は?」と驚く彼女を落ち着かせて、私は夫と結婚に至るまでの経緯を話しました。たしかに私の両親は会社を経営していますが、彼と会ったのは友だちに誘われた合コン。そこから3年間付き合ってから結婚したのです。
「え……?どういうこと?」「だって彼、私と結婚前提でつい先月まで付き合ってたのに……」と彼女。「あなたに彼を奪われたから、最近別れを切り出されたんだと思ったんだけど」と混乱中の様子。2人で頭をひねっても解決には至らなさそうだったので、私は「あの……一応、夫に確認してもいい?あなたのこと」と切り出しました。
彼女は少しためらったようですが、最終的にはうなずいてくれました。「でも、私、嘘なんてついてない」「本当に結婚前提に付き合ってたの!」と泣き出してしまった彼女。私は「まずは私のほうで事実を確かめるから、今日は落ち着いて休んで」と声をかけました。
夫の言い分
同窓会からの帰り道、私は夫に連絡をすることにしました。
「同窓会であなたと先月まで付き合ってたっていう同級生がいたんだけど?」
「待って待って!もしかして黒髪の背の低いおとなしそうな感じの女性?」
「そうよ!まさかあなたが浮気してたなんて!最低ね!」
「違うんだ!言っておくが俺は浮気なんてしてない!実は……」
そう言って夫は彼女とのことを話し始めました。
「実は……入籍直後にどうしても人数が足りないって言われて合コンに行ったんだよね」「俺は既婚者で数合わせで来たって女性陣みんなに伝えたんだ、でも彼女は『そんなの気にしない』って言って俺に積極的にアピールしてきてさ」「強引に連絡先を交換させられたあと、1日に何度もメッセージが来て怖くなって……。すぐブロックしたのに、なんで婚約したことになってるんだよ!」
彼女は学生時代からすごく真面目な子で、自分から積極的に男性に迫るようなことをするタイプには思えませんでした。しかし、夫は彼女が「運命だと思うんです!私たちが結婚するには、あなたが離婚すればいいだけ!」と言ったと言うのです。
「たぶん、妄想の激しいヤバいタイプなんだと思う……」「一度の軽率な行動は認めるよ。本当にごめん」と頭を下げる夫。
「わかった、じゃあ彼女には私から説明しておくね」と言うと、「あ、あの、お前も彼女とは連絡取らないほうがいいんじゃないか?妄想の激しい人って何するかわかんないし……」と夫はなぜか私を止めようとしてきました。一瞬怪訝な顔をしてしまったものの、私は「そうね、あなたがそう言うならやめておこうかしら」と言ってその話を終わらせました。
真実を追求した結果
1カ月後――。
私は昼休みに夫をカフェに呼び出しました。そして、「ねぇ、私たち離婚しよっか!」と明るく切り出しました。
「は!?お前、急に何言ってんの!?」「ま、まさかあの妄想女のことを疑ってるのか?言っただろ、あれは彼女の勘違いだって!」と焦り出した夫。
しかし、私はいろいろな証拠をすでに握っているのです。
「私、あなたの話なんて最初から信じてないから」「彼女から詳しく話も聞いたし……それに今でも婚活アプリに『独身・結婚願望あり』で登録してるよね?」「興信所にも依頼して、週に何人もの女性と会ってたってこと……全部知ってるから!」
そう言うと、夫は「うそだろ!?まさかこんな形で全部バレるとは……うまくごまかせたと思ったのに……」「離婚?上等だよ!むしろ俺からお前に離婚を言い渡してやるよ!それで、彼女とやり直すかな」「彼女なら俺にベタ惚れだし、昇進して投資もうまくいってて金もあるみたいだし、ラッキーだぜ!」と開き直ったのです。
「誰がするか!いい加減にしろよ!このくず男!」と私たちに割って入ったのは、例の同級生。おとなしい見た目の彼女が声を荒げる姿は、迫力がありました。
「私があんたにベタ惚れ?復縁?再婚?ありえない!」「もう未練の欠片もないし、むしろ恨みしかないから!」「あんたのことは結婚詐欺として慰謝料請求するからね!弁護士にはすでに相談済みだし、覚悟しておきなさいよ!」
そして、彼女は腰に手を当てて胸を張り、まるで別人のような堂々たる口調で、「ご存知のとおり、私ってお金だけはあるからさ?結婚詐欺に強い弁護士だって雇えるのよ」「金にものを言わせて興信所を使って、あんたが独身だって偽って会ってた女性みんなに連絡を入れたわ!『騙したクソ男に復讐しませんか?』ってね!」「今、被害者は30人以上になりそうだから、みんなで慰謝料請求してやるからね!首を洗って待ってなさい!」と言ったのでした。
「そ……そんな……そんな金持ってねぇよ!」「本当に請求されたら、俺の人生終わるじゃん……!」と震え出した夫。しかし、彼女は「あんたの人生が終わったとしても、私は容赦しないから」「まずはこの子と早く離婚して!あんたにはこの子はもったいないわ!」と攻撃の手をゆるめませんでした。
その後――。
事情を知った私の両親が激怒して、弁護士を手配してくれたこともあり、私と夫はスムーズに離婚。慰謝料や財産分与についても私の希望通りとなりました。そして、同級生の彼女はさらに金にものを言わせて、結婚詐欺に強い弁護士を複数雇い、元夫に慰謝料を請求。元夫にだまされたほかの女性たちも、彼女とタイミングをあわせて慰謝料請求を行ったそうです。完全に人生が狂ってしまった元夫が今どこで何をしているかは、私も彼女もわかりません。
一件落着後、私と彼女は定期的に飲みに行く仲に。いろいろありましたが、「もしまた男と付き合うことがあったらすぐに言って!興信所入れてすぐに調べるから!」「それはお互いさまよ」と笑い合える関係に戻れたことはよかったな、と思っています。
【取材時期:2025年1月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。