歯のメンテナンスが欠かせない義母
60代前半の義母は、いつも身だしなみに気をつかっていて、服装や髪型にもこだわりを持っています。年齢より若く見られるタイプで、周りから「若いね」と言われることが自信につながっているらしく、自分の体のお手入れを怠ることがありません。
中でも、歯のメンテナンスは欠かせない習慣となっているようで、1カ月に一度は歯医者に通っています。育児に追われていることを理由に歯医者から遠ざかっている私にも、「歯は大事だからね、忙しいと思うけど行っておいたほうがいいわよ」と、会うたびに言われていました。
夫と結婚して2年目の春、義実家に親戚が集まったときのことです。肉料理やお刺身などのごちそうを囲み、みんなで食事を楽しんでいました。そして食後、私たちがお菓子をつまみながらのんびりしている中、義母はひとり先に切り上げて洗面所へ向かいました。
しばらくして、何やら不安げな面持ちでこちらへ戻ってきた義母。どうしたのかと思っていると、「ねえ、歯が欠けたかもしれない……」と言うのです。
みんなが「え?」という表情で義母に視線を送ると、「なんで歯が欠けたの?」と夫が聞きました。すると、「歯磨きをして口をゆすいでいたら、口の中から白いものが出てきたのよ」と答えた義母は、手に持ったティッシュを広げて見せました。
私の思い込みが招いた大失態
ティッシュに包まれていたのは5mm角くらいの大きさの白い物体で、欠けたようないびつな形をしていました。
「どの歯が欠けたんですか?」と私が尋ねると、「それがどの歯なのかよくわからないのよ」と言い、鏡を片手に自分の口の中を見回したり、舌を歯に当てたりしていました。欠けているなら自分の感覚でわかりそうな気もするのですが、義母はどこなのか探し当てられず、困っている様子でした。そこで私は、「ちょっと見せてもらっていいですか?」と、義母の欠けた歯の所在を確認したいと提案しました。
あーんと大きく開けた義母の口の中、そこに並ぶ歯を上の奥のほうから見た後、下の歯も順番に見ていきました。すると、下のちょうど前歯にあたる歯がいびつな形になっています。欠けたと思わせる鋭角な部分があり、およそ左右対称である隣の歯と比べると明らかに違う形をしていたのです。
こんなにわかりやすいところなのに、どうして気付かなかったのかと一瞬疑問に思ったものの、ずばりこの歯だと確信した私は、「お義母さん、下の前歯のところが欠けてますよ!」と義母に伝えました。ところが、「いやいや、この歯は元々こういう形なのよ」と、とっさに口元を押さえて慌てたように言う義母。
それに対し、「えー! こんなガタガタのはずないですよ! ここが欠けた歯です!」と、私は強く断言し、義母の言葉を完全に否定したのでした。
すると、横にいた夫が「母ちゃんの前歯、あんな形だったよ」と、軽く諭すように私に言いました。欠けた歯を突き止めたと思い、威勢よく発された私の言葉は、瞬時に大失言となってしまったのです……。
白い物体の正体とは…!?
義母の元々いびつだった形の歯に対し、「ガタガタ」だの「欠けた歯」だの失礼な言葉を連呼した私。歯のメンテナンスを欠かさず、若く見られることが自信となっている義母の欠点を突いてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
すると、その場の空気を察した義兄の奥さんが、「たしか、年を重ねるうちに形が変わったんでしたよね」と、私に経緯を教えるかのように自然な口調で話しました。「そう、歯医者に行ってるけど、この歯はまだ手入れができてなくてね」と返した義母でしたが、口元は笑っているのにどこか不自然な笑顔……。私の心の中は冷や汗でびっしょりでした。
「じゃあ、この白い物体は何?」と夫が切り出し、みんながハッとしたのです。たしかに、私が義母の歯を全部見た中で、確信した前歯が違うとなれば、他に思い当たるような歯はありませんでした。ということは、あの白い物体は歯じゃない? という可能性も出てきます。しかし犯人捜しで大失態をおかした私は、また新たな失態をおかさないためにも事の成り行きを見守ることに……。夫や義兄が白い物体を見つめ、歯ではない何かを探る中、その答えはごちそうの中にありました。
「歯じゃなくて鶏の軟骨じゃん!」と夫。なんと、義母が自分の欠けた歯だと思っていた白い物体は、実は唐揚げにした骨付きチキンの軟骨部分だったのです。
まとめ
自分の歯が欠けたのではないとわかった義母は安心し、騒がせてしまったことを照れた表情で謝り、事は収まりました。
義母の歯の形を知らないまま、「欠けた歯」であると思い込んだことによる私の大失態。みんなが集まるその場の雰囲気を盛り上げたいという気持ちもあって、つい鬼の首を取ったような態度を取ってしまったことに猛省した次第です。自分の思い込みからくる発言や行動には気を付けなければと思わされた出来事でした。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:吉井 マリー/40代・ライター。人生ずっとおもしろおかしく生きていきたい! 2020年、2022年生まれのおてんば娘たちの子育てに日々奮闘しながら、加齢に伴うさまざまな悩みとも闘っている。
イラスト/マメ美
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年3月)
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