毎朝現れる、明るくて真っすぐな常連客
私は青嶋ユウ。23歳でカフェの店員をしています。人付き合いが得意ではなく、接客も必要最低限の会話しかしません。仕事自体は嫌いではないけれど、心を開くのは簡単ではありませんでした。
そんな私がカフェで働くようになったのは、兄が「人との交流を増やしたら、少しは変わるかもしれない」と考えたから。実際、兄の言う通りだったのかもしれません。
黄田ナオキさんは、毎朝カフェに寄ってくれる常連さん。
「コーヒーください」
「はい」
私が他の客にするように、機械的に対応するだけ。でもナオキさんは、そんな私にいつも笑顔で話しかけてくれる。
「店員さんのコーヒーがおいしいから、ここに来るのが楽しみなんですよ」
……本当に、無邪気で明るくて、真っすぐな人。
私が無愛想に対応しても、ナオキさんは気にした様子もなく、いつも明るく話しかけてくれる。最初はただの社交辞令だと思っていたけれど、ある日、その考えが覆される出来事がありました。
「髪型かわいいですね!」褒め言葉に驚いて
その日は珍しく、髪を切って軽くスタイリングしていました。ほんの少しだけ、ナオキさんに「どうかな?」なんて期待していたのかもしれません。
「お待たせしま――」
「髪型かわいいですね!」
「なっ!?」
思わず顔が真っ赤になってしまいました。かわいいって……私のこと!? 動揺して、なんとナオキさんに出したコーヒーを自分で飲んでしまったのです。
「お、おいユウ! それ、ナオキくんのコーヒーだろ!」
「はっ!!」
兄の言葉にハッとして、慌てて新しいコーヒーを作った私は、謝罪の意味も込めて大量のコーヒーチケットを差し出しました。
「こんなに大量のチケット、大丈夫だから!!」
「いいから!!」
顔を真っ赤にしながら押し付けて、私は逃げるようにその場を去りました。
真っすぐな彼に会って変わりたくなった
正直、ナオキさんがなぜこんなに私に親しげに接してくれるのか、ずっと不思議でした。 私は中学時代の出来事が原因で、人と関わるのが苦手だったのです。
当時好きだった男の子が、友だちにからかわれたせいで私のことを「迷惑」と言ったあの日。 それ以来、人に笑顔を向けるのが怖くなりました。
でも、ナオキさんはそんな私にも明るく接してくれていました。
「メイク変えました? いつもキレイだけど、今日はなんか輝いてる感じがする!」
ナオキさんの言葉に、何度も顔を赤くしてうずくまる私。でも、そんな私を見て、ナオキさんは「かわいい」と笑ってくれる……。真っすぐな言葉が、私の心の中の閉ざした扉を少しずつ開いていきました。
ナオキさんと出かける日。デートみたいで
ナオキさんから「コーヒーチケットのお礼に映画でもどうですか?」と誘われたとき、驚いたけれどうれしい気持ちでいっぱいでした。
デート当日、私はお気に入りの服を着て行きました。
「ユウさん、めちゃくちゃかわいい!!」
「だからぁ……」
顔が真っ赤になる私。ナオキさんは、本当にストレートに褒めてくれます。
水族館のイルカショーでは、大量の水飛沫を浴びて服がびしょ濡れに。
「これ、着替えにどうぞ!」
彼が買ってきたおそろいのイルカTシャツに着替えると、ナオキさんはまた笑顔で言いました。
「ユウさん、イルカTシャツ、似合っててかわいいです!!」
この褒め言葉にまた顔が赤くなりました。
過去の傷がナオキさんによって癒やされた
そんなある日、カフェにかつて好きだった男の子、鈴木くんが現れました。
「中学のときのこと、ずっと後悔していたんだ。青嶋のことが好きだったのに、友だちにからかわれて恥ずかしくて『好きじゃない、迷惑だ』って言った…」
「あれ、聞いていたんだよな。あの日から青嶋は誰とも話さなくなって、心を閉ざしたんだよな…」
鈴木くんは私に謝りました。
過去の傷が、一瞬よみがえった気がしました。でも――。
「ふざけんな!! 今さら謝っても、ユウさんの時間は戻らねーんだよ!!」
ナオキさんが、私のために怒ってくれたのです。
そのとき、私は確信しました。
ナオキさんが私に向ける言葉は、すべて本物だと。
私の心は埋め尽くされています
ナオキさんは、少し顔を伏せながら静かに言いました。
「ユウさんが好きです。大好きで、大好きで……。だから、もしあの男をまた好きになったかもしれないって思ったら、こわくて……」
その言葉に、私はドキッとしながら問い返しました。
「あの男? 鈴木くんのことですか?」
ナオキさんは、少し照れくさそうに笑ってうなずきました。
「はい。同窓会とかで、昔の好きな人に再会して気持ちが再燃したって話、よくあるじゃないですか……。だから、もしかしてって……」
私はその気持ちを受け止めながら、ゆっくりと目を見つめて伝えました。
「ないですよ。だって、私の気持ちはもう……ナオキさんで埋め尽くされてますから」
「ユウさんが好きです。大好きです」
「……私も、ナオキさんが好きです」
彼の告白を受けて、私の心はようやく、長い間閉ざしていた扉を完全に開くことができました。
まとめ
過去のトラウマや人間関係への苦手意識は、誰にでもあるもの。ユウがナオキに出会い、自分の殻を破ることができたのは、ナオキが真っすぐな言葉で向き合い続けてくれたからです。ナオキの素直で明るい言葉が、ユウに自信を与え、心を開かせたのでしょう。人との関わりを恐れず、自分の気持ちを素直に伝えることは大切ですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ウーマンカレンダー編集室ではアンチエイジングやダイエットなどオトナ女子の心と体の不調を解決する記事を配信中。ぜひチェックしてハッピーな毎日になりますように!