幼なじみは高嶺の花
僕はある会社の情報システム部で働いています。ある日、経費申請のために総務部を訪れたとき、ある女性の姿が目に入りました。僕の幼なじみで、学生時代には両想いだったAちゃんです。
彼女は社内でも抜群の人気を誇る美人。男たちが列をなして彼女に話しかける姿を見て、僕は声もかけられずにその場を立ち去りました。
「幼いときのようにAちゃんに近づける立場じゃない」と思い、僕は彼女を避けるようにして仕事をしています。僕が彼女を避けるようになったのには、理由があるのです。
学生時代の記憶
Aちゃんは近所に住む幼なじみ。
Aちゃんに恋をしたのは、小学校に上がる前。一緒に花畑を歩いていたとき、振り返った彼女の笑顔がとてもまぶしかったのを覚えています。
「きれいっ!」と笑う彼女を見て僕は「かわいい…」と思いました。そのとき、僕はAちゃんに恋をしたのです。
小学生のころは毎日のように一緒に遊んだし、中学生になってからはお互いの気持ちを素直に伝えるように。
「だいすき♡」
「僕も!」
そんな日々が幸せでした。しかし、ある日クラスで発表されたランキングをきっかけに僕の意識は変わったのです。「付き合いたいと思う女子ランキング」で、Aちゃんは堂々の1位。一方の僕は、「付き合いたくないと思う男子ランキング」で1位という不名誉な称号をもらってしまったのです。投票のコメント欄は「暗くて話かけられないから」「面白くなさそうだから」などの冷たいコメントが多数ありました。
「こんな僕と一緒にいたら、Aちゃんの評判も下がるかもしれない…」と考え、それ以来僕は彼女と距離を取るようになったのです。
再会とすれ違い
高校も、大学も、そして就職先まで、偶然同じになった僕とAちゃん。しかし僕は、ずっとAちゃんを避け続ける日々。
そんなある日、総務部でAちゃんが「好きな人がいる」と言っているのを聞いて、動揺してしまいました。
僕は小さいころからずっとAちゃんのことが好きでしたが、今まで冷たい態度を取っていた僕が何か言えるはずもなく、職場を後にしました。
その日の夜のこと。まさかの展開が待っていたのです。
「おかえり」
家に帰ると、Aちゃんが僕の部屋にいました。僕の母が出かける直前に、Aちゃんが「息子さんに話がある」と頼んで入れてもらったようです。
思いがけない告白
Aちゃんは「今日の会社での話、聞いてたでしょ?」と僕の目を見て言いました。Aちゃんは、僕が聞いていたことに気が付いていたようでした。僕が動揺を隠せずにいると、Aちゃんは続けて言ったのです。
「私は、まだあなたのことが好きなんだけど」
Aちゃんの突然の告白に僕はビックリ。顔が真っ赤になって言葉が出ませんでした。
「なんで、いまさらそんなことを言うの!?」
「だって、あなたのせいだよ…」
Aちゃんは「あなたに避けられるようになってつらかった。嫌われたと思っていた」と涙ぐみながら訴えてきました。
僕は、「Aちゃんのために」と思ってとった行動が彼女を苦しめていることを後悔しました。
「Aちゃんのこと、嫌いになるわけないよ。僕といると迷惑がかかると思ったんだ、ごめん」
僕たちはお互いの気持ちを確かめ合い、子どものころと変わらない想いがそこにあることを知りました。
社内恋愛のハードル
「じゃあ、今日から恋人だね♡」
そう言ってくれたAちゃんに、僕は思わず「それはムリ!!」叫びました。
Aちゃんは社内でも有名な人気者。僕と付き合っているなんて知られたら、嫉妬や誤解を招きかねません。悩む僕にAちゃんはある提案をしてくれました。
「じゃあ、会社には内緒で付き合おう♡」
そう言ってウインクするAちゃんに、僕は大きくうなずきました。
ふたりだけの秘密
それからは、秘密の恋人関係が始まりました。
朝の通勤、昼の社員食堂、そして退社後の道。常に周囲の視線を気にしながらも、Aちゃんと一緒に過ごせる時間は夢のようでした。
しかし、ある日一緒に帰っているところを同僚に見られ「2人は付き合ってるの?」と聞かれたのです。焦った僕はとっさに「たまたま帰り道が一緒になっただけ」と誤魔化してしまいました。
その瞬間、隣にいたAちゃんの目が潤みました。
「コンタクトにゴミが入っちゃって…」
Aちゃんはそう言っていましたが、「僕の発言で傷つけてしまった」と後悔しました。
自分を変えたい
Aちゃんの反応を見て、僕は「いつまでも隠れてるだけじゃダメだ。彼女を傷つけたくない。自信がないなんて言い訳だ」と思いました。
そんな想いを胸に、参加を断り続けていた社員旅行に、今年は参加を決めたのです。「Aちゃんがいるから、彼女の水着姿が誰かに見られるのが嫌だから」という情けない理由もあったのが本音でもありますが……。
旅行先の沖縄で、僕はAちゃんのやさしさに改めて触れました。僕が乗り物酔いをしやすいと知っていたのか、
「酔い止め、飲んで?」
「バスの前の席、取っておいたよ」
と僕を気づかい、そっとそばにいてくれたのです。僕はAちゃんを好きになって本当に良かったと思いました。
堂々と宣言!
ホテルに到着すると、多くの人はプールへ泳ぎに行ってしまいました。僕がどうするかロビーで悩んでいると、Aちゃんがそっと抱きついてきました。
「みんなと泳ぐより、あなたのそばにいたいから」
僕がAちゃんの水着をみんなに見られたくない、と考えていたことを察してくれたのかもしれません。僕もAちゃんを抱きしめ返そうとしたそのとき。
「何してるの…?」
荷物を取りに同僚が戻ってきてしまったのです。僕が嫌がるAちゃんに無理やり抱き着いていると誤解されかけたとき、僕ははっきりと宣言することを決意しました。
「僕とAちゃんは、付き合ってます」
「私の好きな人は、この人なの」
Aちゃんの返答に驚く同僚たちの前で、僕たちの関係はついに明るみに出ました。
そして今
「付き合ってることは秘密にするって約束なのに、ごめん…」
「うれしいに決まってるじゃん!」
Aちゃんはずっと好きだった人が恋人になってくれて幸せだと言ってくれました。ずっと陰キャだった僕が、誰よりも好きだった人の恋人になれたのです。Aちゃんは、そんな僕を「世界一カッコいい」と言ってくれます。
Aちゃんがそう言ってくれるなら、僕は少しずつ自信を持てる気がしました。
その後、僕たちの交際は社内でも有名に。温かく見守ってくれる人が多く、ありがたい気持ちです。
「Aちゃんと付き合ってたなんて、教えてよ~!」と同期の女子にからかわれることもありますが……。
「この人は私の初恋の人なんだから、誰にも渡さない!」
そう宣言してくれるAちゃんを見て、僕は心の底から「僕はAちゃんに愛されている」と思いました。本当に幸せです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されてないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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