私と真逆の妹
ある年の1月のこと。普段はひとり暮らしをしていて久しぶりに実家に顔を出した妹が、さっそく嫌味を言ってきました。
「中卒お姉さん。相変わらず地べたにはいつくばって土いじりしてるの? たいしてお金にならないのに、ご苦労様~」
妹は学歴至上主義で大企業勤め。外見にもお金をかけ、いつもハイブランドの洋服を着ています。大好きな野菜作りに没頭するため中卒で農家に入り、大人になってから定時制農業高校に通う私とは真逆なのです。
おまけに彼女は、平気で他人を踏み台にする冷たい性格。家族の新年会でも、職場で主任候補となり、その地位を得るために部長に色目を使ったことを誇らしげに語っていました。
妹はA男を呼び出し…
それだけではありません。高卒の両親のことも「恥ずかしい」と言っており……。
「こんな低学歴一家のところにいても気分が悪いから、迎えを呼ぶわ。もしもし〜迎えに来て~」と、A男という男性を呼び出した様子。
「お付き合いしている相手がいたの!?」とびっくりする私に、妹は「違う違う。ただのタクシー代わり」と鼻で笑いました。聞けばその人は「弁護士のくせに雇われで安月給。おまけに根暗な貧乏男」とのこと。妹はその男性を都合の良いように利用しているようでした。
「そんな言い方、ひどいんじゃない?」と苦言を呈すると、「本当は部長に乗り換えたいんだけど、彼は既婚者でさー。私も主任候補になったばかりだし、機を見ないとね。貧乏弁護士でもいないよりはマシ。A男はキープね」と言う始末。
しばらくして、インターホンが鳴りました。A男さんがどんな男性なのか興味がわいた私は、後ろからそっと玄関をのぞいてみました。すると、なんとその人物は私の知っている人で仰天。しかし、向こうは私に気づいていないようでした。
「あんたに譲ってやろうと思って!」
数週間後のある夕方、買い物を終えた私は、向かいの歩道に妹と浮かない顔のA男さんが立っているところに遭遇。すると妹は、私を見るなり笑顔でこちらに駆け寄ってきたのです。
「こいつをあんたに譲ってやろうと思って!」
何を言っているのか、私には訳がわかりません。
「A男がしつこくって! 私は晴れて部長と付き合うから、もうお払い箱なの。姉を受け皿に用意してあげるんだから、むしろ感謝してよ!」とのこと。さらに、「中卒と貧乏人同士、仲良くね」とニヤニヤ。我慢の限界にきていた私は、思わず妹に宣言しました。
「あっそう。でも絶対に返さないよ?」
妹は、「どうぞどうぞ。こっちは部長と高級レストランでデートなの」と意気揚々と去っていきました。
A男と意気投合した私
妹にひどい扱いを受けて泣き崩れるA男さん。私はしばらく付き添っていたのですが、「ご、ごめんなさい。初めてお会いしたお姉さんに、こんな姿を」と正気に戻ったよう。
私は内心、「初めてではないけどね」と思いつつ、元気を出してもらいたくて食事に誘ってみました。近所に、勤め先の農家が野菜を卸しているおいしい食事処があったからです。
「妹のお詫びと言ってはなんですが、パーッと食べて飲みましょう!」
2人で話しているうちに、私はA男さんの温厚で聞き上手、寛大かつ真摯な人柄にビックリ。さすが、ワガママ妹の相手ができただけあります。気がつかないうちに、私は自分が定時制高校に通いながら農業にたずさわり、おいしい野菜を多くの人に届けたいという夢を話していました。
彼はその生き方に共感してくれた様子。その後、また会うことを約束したのです。
そうして半年後……。私は彼から告白されて交際をスタート。さらに1年半後には婚約し、両家顔合わせの日がやってきました。
実は御曹司だった彼
両家の顔合わせは、都内の高級ホテルのレストランで開催することに。妹はそれを聞いて大仰天。相手が誰かと問い詰めてきたので、私は笑顔で答えました。
「昔あなたからもらったA男さんだけど」
「はぁ? あの貧乏男?」
妹がA男をあっさり振ったとき、私は不思議でした。実は、彼は大企業の社長の御曹司だったのです。しかし後になって、彼が妹に素性を隠していたことが判明。漠然と家業を継ぐのではなく社会に出て経験を積み、人の役に立ちたいと小さな事務所の雇われ弁護士をしていたのです。
ちなみに彼の事務所は、うちの農家が野菜を直納している飲食店と同じビルに所在。そのため、私は彼を何度も見かけたことがあり、飲食店の人たちから「あの男性は大企業の御曹司」という噂を聞いていたというわけです。
事実を知った妹は、歯ぎしりをしながら「A男を返して!!」と暴れ出します。しかしA男さんは、今までは見る目がなかったけれど、私との出会いで本当の愛情を知ったと宣言。妹に、「あのときは僕を捨ててくれてありがとう」と言ったのです。
それから数日後、既婚者の部長との不倫がバレた妹は、会社にいづらくなって仕事を辞職。部長からもすぐに振られてしまったようです。プライドなのか何なのか、私の顔も見たくないらしく、実家にも近寄りません。
一方、私はA男さんとお互いの価値観や夢を尊重しあい、幸せな結婚生活を送っています!
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!