郊外の店舗に視察に行ったときのことです。お店の外観はきれいに整っていて、第一印象は悪くありませんでした。しかし、店内に入ると、なんとも言えない雰囲気の悪さを感じたのです。私は売り場を一通り見て、気になった点をメモしていきました。
店長や社員とは目が合えば軽く会釈をしますが、視察中の私に話しかけてくる人は誰もいません。その後、私は社員用の休憩室へ向かいました。
新人いびりをするお局パート
お茶でも飲んで少し休憩しようと思ったら、突然背後から怒号が聞こえました。振り返ってみると、パートの女性が腕を組み、不機嫌そうに立っています。彼女は、「新人は休憩室を使うな!」と私に怒鳴り、「まったく、最近の子は……」と、ため息をつきながら、自分の力を誇示してきます。
自分が今までにどれだけこの店を支えてきたか、そして自分がいなければ店は回らないと威張ってきました。店の雰囲気を悪くしているのは、きっと彼女だろう……彼女の威圧的な態度に、私はそう思いました。
私が自分の立場を説明しようと、口を開いたとたん、彼女は自分の持っていたアイスコーヒーを私に向かってぶちまけたのです。私が何をするのだと声を荒らげると、彼女は「手が滑っちゃったわ〜」と、ヘラヘラ薄ら笑い。謝罪もありません。
あまりのひどさに怒り心頭の私ですが、立場上冷静さを欠いてはいけないとグッと堪えて、自分の身分を明かしました。私が『本部から視察に来たマネージャー』だと自己紹介すると、「うそ……」と、驚いて青ざめる彼女。
その後、駆けつけてきた店長に、新人に勘違いされ、威圧的な態度を取られたことを伝え、これはこの店での新人教育の一環なのかと尋ねたところ、店長は猛省、彼女からは平謝りされました。
私が誰であれ、やってはいけないこと。彼女の態度はもちろん、社員教育における店長の至らなさも指摘し、上にも報告しました。
さらなる追求をした結果…
本部に戻り、詳しく報告しましたが、なんだかその後も落ち着かなかった私。あのパートの女性、叩いたらもっとホコリが出てくるのでは……?
本来であれば、視察して報告するところまでが私の仕事。しかし、過去に私のような目に遭った新人さんがいたのではないだろうかと思った私は、あの店舗の勤務データや採用データを精査。その結果、パートの3カ月以内の離職率が非常に高く、退職理由も本人の意向によるものが多いとわかりました。
その点は、以前から本部でも問題視されていたようで、過去に何度か聞き取りなどの内部調査が行なわれてはいたものの、調査報告書の内容はどれもぼやけたものばかり。まるで、何かを隠しているかのような印象でした。
このままでは、店舗の雰囲気の悪さの明確な原因がわかりません。そのため私は、防犯カメラの映像を片っ端からチェックし、辞めたパートの方々に連絡をして、話を聞くことにしました。
体制が整ったところで、いざ店舗へ突撃。休憩室を覗くと、偶然にもまた、あのパートの女性が若手パートさんにお説教している最中……。
私が中に入ると、腕を組んでふんぞり返っていた彼女が、悲鳴を上げながら立ち上がりました。私は店長を呼び、労務環境とスタッフの声を確認するため、改めて視察に来たと伝えました。
実は、辞めたパートの方々から、貴重な証言を得ることができたのです。その証言をもとに、私は防犯カメラの映像を確認。すべてではありませんでしたが、証言通りの状況を映像で確認することができました。
なんと、あのパートの女性は、長年にわたってやりたい放題。シフトは彼女のわがままを他のパートの方々で調整。彼女の希望に背くと、無視されたり嫌がらせをされたり。自分の仕事を新人に押し付け、自分のミスもすべて新人のせいにしていたのです。
ついに、お局パートに天罰が!
私が彼女を問い詰めると、新人教育のつもりだったと言い訳をしてきました。しかし、映像には、彼女が飲みものをぶっかけたり、後ろからわざと小突いたり、足を引っ掛けたりする姿が映っています。新人教育をしているようには見えません。
さらに、彼女は休みの日もスーパーにやって来て、休憩室を占領してくつろいだり、仕事に関係のない荷物を置いていたり、休憩室を完全に私物化。新人には休憩室もロッカーも使わせず……。執拗な新人いびりに耐えかねてみんな辞めてしまっていたのです。
しかし、明らかに異常とわかるのに、なぜこんな状態が長年、放置されていたのか不思議です。私は、過去に報告を受け、聞き取りなどの調査をした本部の社員について調べました。すると驚くことに……。
なんと、過去に調査した本部の社員は、あのパートの女性の兄だったのです。私のような店舗視察をするマネージャーや店長などが本部へ報告をしても、あの店舗に限り、しっかりと調査がされていませんでした。
私はこの事実を上に報告、あの店舗で働くスタッフ全員、調査部にもすべて公表。こうしてすべてが明るみになり、噂が広まり肩身が狭くなった2人。パートの女性はパートを辞め、本部の兄も会社を退職しました。
彼女たちの悪い噂は地元中に広まり、その辺りでの再就職が難しくなってしまったようです。その後、2人ともどこかへ引っ越していったと聞きました。
あの店舗は今、以前とは比べものにならないほど良い雰囲気に変わっています。スタッフもお客様も笑顔で、明るく活気のあるスーパーになりました。あのとき、違和感をそのままにせず、行動して良かったです。これからもスタッフやスーパーに来るお客様のために、自分の仕事に誇りを持って、精いっぱい働きたいと思います。
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スタッフ間の雰囲気は、売上やお店の評判にも影響するとても大切なポイントなのではないでしょうか。明るく活気のあるお店のほうが入りやすく、買い物もしやすいですよね。
自分の仕事の領域を超えて働くことが絶対に良いというわけではありませんが、今回はその行動によって、悪事が明るみになりました。店舗の労働環境が改善されて良かったです。違和感や疑問をそのままにせず、行動することは大切なことですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。