夫が転職してしばらく経ったころ、私たちはタワマンに引っ越しました。親友はどこかでそのことを聞きつけて、「転職して成功したんだ」「年収も上がったに違いない」と勝手に思い込んでいたようです。最初は遊びに来るだけだった訪問が、やがて泊まりがけとなり……夫への態度も、次第におかしくなっていきました。
夫と親友の浮気現場を目撃…!
ある日、私が買い物から戻ると、そこには男女として仲睦まじくしている夫と親友が……。私は浮気現場をばっちり目撃してしまったのです。
夫は「しまった!」と顔をこわばらせ、慌てて服をはおりながら「違うんだ!」と弁解しました。しかし、現場を見た私に言い訳が通じるはずもありません。一方、親友は「ごめんね~、旦那さんを奪っちゃって! 怒ってるよね?」と、笑ってあっけらかんと言いました。私が怒りに任せて2人に「出ていって!」と言うと、親友は「はーい♡」と甘い声を出しながら夫を連れて出ていきました。
翌日、夫が図々しく帰ってきたので、私は迷いなく離婚を突きつけました。昨日はとっさに言い訳しようとしていたものの、なんだかんだで親友に夢中のようで、夫は即了承。私たちの婚姻関係はあっさりと解消されることになったのです。
離婚が決まると、夫は「離婚届をもらってくる」とだけ言い残し、財布とスマホを手にして役所へ向かいました。玄関のドアが閉まる音を聞いた瞬間、怒りよりも深い虚脱感が胸に押し寄せ、私はその場に立ち尽くしました。
30分ほどすると、夫から離婚話を聞いたらしい親友から「昨日はすごい現場見せちゃってごめんね♡」「すぐに離婚を決断してくれてありがとね~」と、悪びれる様子もなく連絡がありました。私はあきれて言葉も出ませんでした。
「謝る必要なんてないでしょ? たまたま好きになった人が既婚者だっただけだもん」「そして、さらにたまたま親友の旦那さんだったってだけだし~! 運命の出会いはどこであるかなんてわからないものよね」
最初から夫目当てで近づいてきたくせに……。たまらず、私は「本当かな? 噂で聞いたけど、既婚者に手を出して退職したらしいじゃない」と言い返しました。
「な、なんで、あんたがそれを知ってるのよ」と焦り出した親友に、「共通の知り合いに連絡したら詳しく教えてくれたわ」「既婚者上司との浮気がバレて、会社を退職して、実家には縁を切られ……周りには『こうなったらいい男捕まえて勝ち組専業主婦になる!』って高らかに宣言してたそうじゃない」と言った私。親友が言葉に詰まっている様子を見て、知り合いの言っていたことは本当だったと確信を得ました。
「な、なによ! 略奪されるようなあんたが悪いんでしょ!」「私は彼にも実家にも捨てられて……人生のどん底だったのよ! 職場も居づらくてすぐ退職したし」「そんなときに、あんたがタワマンに引っ越したって聞いて……私がどれだけ悔しくて惨めだったと思ってるのよ!」と親友。
「信じられない……そんな勝手な理由で私の夫に手を出したって言うの?」そう言うと、親友はますます開き直りました。
「あんたには悪いけど、やっぱり一番大事なのは自分の人生なのでw」
「高級タワマンと高収入旦那は私がいただきます♡」
勘違いして強気な親友に、私は一言だけ返しました。
「あの部屋、私のだけど?」
目論見が外れた親友
「は?」と親友は驚き、「なに言ってんのよ。あんたにこの家のローンが払えるわけないでしょ? そんなあんたに、ここに住み続ける権利なんてないじゃない。さっさと出ていけば?」「私たちが夫婦になって、彼に返済続けてもらうから。この家は私たちのものになるのよ! それが一番現実的じゃない?」と言いました。
親友は一方的に思い込んでいたようですが、実は、私たち夫婦が住んでいたタワマンは、もともと私の父が購入したものでした。離婚のことを父に話すと、父は「これからの人生は、自分で考えて決めなさい」と言って、名義を私に変えてくれることになったのです。売るのも、住むのも、貸すのも、すべて私の判断で動けるようにと――。短い期間とはいえ夫と過ごしたこの場所に、自分の手でケリをつけるためにも、それが一番だと思いました。
「あいにくローンなんて残ってないの。父の持ち物で、もうすぐ私の名義になるのよ。誰が住むかは、私が決めるから」「売るつもりだから、どうしても住みたいなら自分たちで買って」と伝えると、親友は「そんな……私はてっきり、あんたにローンの返済能力なんてないと思ってた。だから、離婚したら彼のものになるって……転職して年収も上がったんだろうって、ずっと思い込んでて……」とかなり青ざめている様子。
たしかに、夫は地元で名の通った企業に転職はしました。でも営業部で、基本給はかなり低め。契約を取ればインセンティブで稼げるはずでしたが、夫はまったく成果を出せず、基本給だけだったのです。
「こんなのうそでしょ? それじゃ私はいったい何のために略奪したのよ……」とつぶやいたかと思えば、「そうだわ、もっといいタワマンを買えばいいんだわ!」と強がってみせた親友。
あきれて、私は続けました。
「へぇ、すごいじゃない。でも、あの人、転職後に年収が上がったわけじゃないのよ。基本給だけで生活するのがやっとって、知ってた? タワマンどころか、アパートの家賃を払うのもギリギリの生活だと思うけど」
親友は「……は? うそ、そんなはずない……! そんなの聞いてない!」と動揺して声を荒らげました。
「本当に、意味のない略奪だったよね。浮気で実家も仕事も失って……。生活に困ってるなら、素直に相談してくれたら親友としてそれなりにサポートしたのに」
そして、「でもあなたは、『略奪』を選んだ、私の家庭を壊すことを選んだ。……もう親友じゃないから」そう言って、私は電話を切りました。
その後――。
私は弁護士に相談して、元夫と親友の両方に慰謝料を請求しました。元夫と親友の仲はこじれ、結局、結婚には至らなかったようです。慰謝料の支払い手続きのとき、元夫がぽろっと「もう彼女とは連絡も取ってない」とこぼしていました。
元夫は実家からお金を借りて慰謝料を支払いました。事情を知った元夫のご両親は「借金を返すまでは実家に一歩たりとも入れない」と激怒していたようです。
一方、親友はどうにかして慰謝料を工面したものの、かなり生活に苦しんでいると共通の友人から聞きました。
私は人生を再スタートさせるために、タワマンを売却して自分にちょうどいい広さのマンションを購入しました。今は誰にも邪魔されることなく、自分のお気に入りの空間で生活を楽しんでいます。
【取材時期:2025年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。