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「一体どこから来たの?」身元不明のお年寄りに声をかけられ…子連れの私が助けを求めたのは【体験談】

私の住んでいる地域には、各世帯に広報のための受信機が置いてあります。稼働率はあまり高くなく、それが鳴るのは月に数える程度。内容は、地区の集まりといった地域のお知らせがほとんどですが、まれに警察署からのお知らせも入ります。警察署からのお知らせのなかに、よくあるのが行方不明者の情報提供を求める内容です。身体的特徴や行方不明時の服装などの情報が流れるのですが、それを聞くたびに思い出すお話があります。

昔出会った高齢者の話

もう10年以上も昔のお話です。その日、私はまだ幼かった第1子を連れて、街中を散歩していました。歩くことを覚え、動きたい盛りの子どもの手を引いて、信号待ちをしていたときのことです。向こうからひとりの高齢者が歩いてくるのが見えました。甚平(じんべい)のようにも入院着のように見える服を着て、右手には巾着袋、左手には杖を持ち、「トイレスリッパ」と呼ばれる青いスリッパをはいている、白髪の女性。広い歩道があるにも関わらず、なぜか片側一車線の車道を歩いていて、時折周りを見回していました。

 

それも、真っすぐ歩いているわけではない、周囲を見回してはあっちへよろよろ、こっちへよろよろとしている状態で、見ているだけでとても不安に……。たまたま見える範囲に車はいませんでしたが、車道なので、いつ車が来てもおかしくありません。

 

道に迷っているのか不審者なのかなんなのか……。正直私はとても不安にかられました。まだ右も左もわからず、長距離を歩けない子どもの手を引いていたこともあり、どうすれば良いのか正直とても悩んでいました。そのうち女性は信号が赤なのにも関わらず、道を渡って私たちの前に来ました。

 

道に迷っているだけとは思えなかった

女性は私に「〇〇を知っているか? △△の近くにあるはずなんだけれど」と声をかけてきました。しかし、女性が口にした場所は隣の市にあり、徒歩で行くにはどう考えても1時間以上はかかります。どう答えようか迷っていると、何かを言いながら巾着袋から手帳のような物を出してはしまう動作を何度も繰り返したり、「あれはどこだっけ」と言いながら巾着袋を探して「ないわねぇ」とつぶやく様子が何度も見られたりと、挙動不審な様子も。警察に届けようにも、最寄りの警察署までは1kmほどあり、さんざんお散歩をしてきた幼い子どもを連れて行くには遠い場所です。

 

困った私は、ふとすぐ近くに介護施設があることを思い出し、そこに助けを求めてみることにしました。女性を連れてその施設まで歩いて行き、無理を承知で職員さんに助けを求めたところ、出て来てくれていろいろと話を聞いてくれました。

 

その結果、どうやらその女性は認知症の可能性が高く、どこからか歩いて出て来たのではないかということになり、とりあえず警察を呼ぶことになりました。私は、子どもが眠くなってグズり始めたため、施設の方にあとのことを託し帰宅しました。

 

 

その後わかったこと

介護施設の職員さんにあとを託す際、連絡先などを残すよう頼まれたので、氏名や電話番号を書いて残してきた私。その後、警察署から電話があり、形式上のこととして聞き取りを受けました。その女性を見つけたときのことや介護施設まで移動したときのことなどを聞かれて、それに答えるだけでしたが、警察官相手の事情聴取という特殊な状況に異様に緊張したのを今でも覚えています。

 

警察官は、女性は無事家に戻ったことを教えてくれました。私はてっきり、どこにあるのかと聞かれた場所に帰ったのだと思っていましたが、どうやらそこは大分前に住んでいた場所だったようです。実際はそことは別の場所に住んでおり、トイレに行ったあと、行方がわからなくなって家族が探していたとのこと。その場所というのは、なんと私が女性を見つけた場所から2km以上も離れていました。

 

どう見ても高齢者であり、しかも杖をついてゆっくり歩いているあの女性がまさかそんな遠くから来ていたとは思わず、とても驚きました。しかし、認知症の方がこういった長距離移動してしまう例は少なからずあるとのこと。目的の場所を見つけようとして、どんどん距離が伸びてしまうのだと聞きました。

 

まとめ

今、私の祖母も認知症を患って施設にいます。施設の出入り口の自動ドアには、かなり高い位置に開閉ボタンが取り付けられていたり、徘徊の気配のある方のベッドの足元にはマット型のお知らせ装置が設置されるなどの対応がされています。認知症の症状は人それぞれのようですが、2kmも先まで歩いて行ってしまうことがあると知った今、出入りしにくい入り口にはこういった理由があったのだと身をもって知りました。祖母には徘徊の気配がなく、また歩く能力自体も低いため、そんな遠くまで行ってしまうことはないと思いますが、行方不明になることなく安全に過ごしてほしいなと思います。

 

 

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。

 

著者:小沢ゆう/40代女性。長野県在住。低体温&極度冷え症脱出めざして、温活に夢中。

イラスト:おんたま

 

※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年4月)

 

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