仕事が忙しい年度末、目に異常が…
これは私が40歳のころの話です。当時私は教員として、私立高校にフルタイム勤務しながら5歳と7歳の兄弟を育てていました。毎日仕事に家事、育児とフルスロットル。自分の時間もろくに取れませんでしたが、子どもたちの成長を見守りながら、仕事にもやりがいを感じ、充実した日々を送っていました。
40歳になった年度の3月は、特に多忙を極めていました。年度末の締め作業や来年度の準備で大変なのは毎年変わらないのですが、その年、私は中堅教員として責任ある立場になり、例年よりも仕事を多く任されていたのです。実家の母に来てもらって子どもたちの送迎や夕飯作りをしてもらい、私は遅くまで学校で残業。家に帰ってからも睡眠時間を削って、作業やチェックを進めなければなりませんでした。身も心もくたくたになりながら、ひたむきに仕事に向き合っていたのです。
3月中旬の週末、朝起きると、どうも目がかすんで見えにくい気がします。右の視野が欠けたような感じもあります。私は「仕事で目を酷使しているから疲れが出ているのかも」と悩みました。夫に「目が見えにくい感じがするのよね」と相談すると「もしかして老眼なんじゃない?」と茶化してきました。「老眼には早いと思うけど」と言うと、「心配なら眼科に行きなよ」と言ってくれました。
やっと眼科に行けたと思ったら…
しかし、仕事は山積みですぐに眼科に行く時間は取れそうもありません。結局、月曜日は学校で通常通りに授業や庶務をこなし、家でも残業を進めました。目は見えにくく、視野が欠けた感じもずっと続いていましたが、なんとなく「疲れが取れれば治るでしょ」と軽く考えていたのです。
しかし火曜日の朝になっても、目の調子は良くなるどころか、見えにくい感じはさらに悪化している気がしました。「これは放課後、眼科に行ったほうがいいかもしれない」とスケジュールを調整することに。見えにくい目でなんとか授業を終え、放課後、病院に向かいました。訪れた眼科は、診察を待つ患者でいっぱいです。私は「早く学校に戻って仕事したいのにな」と思いながら、問診票を記入し、受付スタッフに渡しました。
すると、1時間は待つことを予想していたにもかかわらず、すぐに診察に呼ばれたのです。「こんなにたくさん待っている人がいるのに、なんでだろう」と思って診察室に入り、これまでの状況を伝えると、医師は私の目を見てこう言いました。
「これは脳の病気である可能性があります。紹介状を書くので、すぐに脳外科のある近所の救急病院へ行ってください。誰か家族は来られますか? タクシーで来てもらって、あなたは運転しないで」と言われました。
目の異常は脳が原因だった
急きょ夫に連絡して、救急病院に向かいました。問診の後、やはり脳の病気が疑わしいということになり、MRI検査することになりました。検査の結果、未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう/脳の動脈に形成される血管内のこぶで、血管の壁が薄くなった部分が膨らんでいる状態)が見つかり、すぐに入院することに。通常の未破裂脳動脈瘤は、破裂するまで症状がないことが多いそうなのですが、私の場合は視神経の近くにできたため、脳動脈瘤による圧迫が起きており、目が見えにくくなっていたそうです。
医師からは脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を引き起こし、最悪の場合死に至ると聞かされました。怖がる私たちに、医師は「今回は脳動脈瘤が視神経の近くを圧迫していたため、破裂前に対処ができます」と教えてくれました。一緒に付き添ってくれた夫が「初めはどうなるか不安でしたが、対処ができるならよかったです」と医師に告げ、涙を流していました。
翌日にコイル塞栓術(そくせんじゅつ)と呼ばれる手術を受け、2週間後に無事に退院。1カ月半療養して、無事に職場に復帰できました。退院後、初めに見てもらった眼科へ行ってお礼を言うと、当時対応してくれた受付スタッフから「前の病院で見た人と症状が似ていたので、先生に相談して順番を早めてもらったんです」と話してくれたのです。私は「ありがとうございます、あなたは命の恩人です」と感謝を伝え、医療スタッフの知見に命を救われたことを喜びました。
まとめ
まさか目の異常の原因が、脳動脈瘤だったとは思いも寄りませんでした。あのとき、老眼や疲れ目と決めつけ、忙しさを理由に眼科にもかからなかったら、脳動脈瘤は破裂してくも膜下出血に至っていたかもしれません。
脳動脈瘤が視神経近くにあったため、破裂する前に発見できたことと、眼科の受付スタッフの機転によってすぐに救急病院へ向かう判断ができたことは不幸中の幸いといえます。いつもと違う症状が、重症につながることもあると、身をもって知った出来事でした。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
著者:高石 ゆうこ/50代主婦。長年教育業界で働く、22歳、20歳の兄弟の母。家族関係や日常の出来事を体験談として執筆。趣味はガーデニングで、バラの剪定にこだわりあり。
イラスト/sawawa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年4月)
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