緊張しっぱなしの義実家訪問
当時、私は夫と付き合って2年ほど。初めて夫の実家へ行くことになり、手土産や話す内容などを事前にしっかり準備していました。
しかし、玄関をくぐると緊張のあまり頭が真っ白に。客間に通され、座ってご両親と身の上話をしている間も、ずっとドキドキしていました。
出されたお茶にすら手をつける余裕がなく、ただ話に集中することで精いっぱい。すると義母が「どうぞ飲んでね」と勧めてくれたので、少し落ち着こうと思い、一口飲むことにしました。
これ、お茶じゃない…!?
その瞬間、口の中に広がったのは強烈な塩気と魚の風味。
「えっ、何これ……?」と、予想外の味に頭の中で混乱してしまった私。
その液体は、明らかにお茶ではなく、どこか慣れ親しんだ味。そう、これは……め、めんつゆ!? 飲み込むべきか、吐き出すべきか、一瞬で無数の考えが巡りました。
「これは何かの試練? 私が夫の嫁にふさわしいかを試しているのか?」。
そんな考えが浮かびつつ、初対面の場で飲み物を吹き出すわけにはいかないと、決死の覚悟でそのまま飲み込みました。
その後も「これには何かの意図があるのかもしれない……」と悶々としましたが、私以外の誰もお茶に口をつけていなかったため、結局何も言えないままその場を乗り切りました。義母の悪口を言ってしまうようで、夫にも相談できないまま、義実家を後にしたのでした。
翌日、義母から「実は麦茶とめんつゆを間違えちゃって……!」と電話で謝罪がありました。あれは試練でもなんでもなく、単なる義母のうっかりミスだったことが判明し、一気に力が抜けました。今では、夫の実家へ行くたびに“めんつゆ事件”として笑い話となり、家族の定番エピソードに。あのときは衝撃的でしたが、おかげで義両親との距離が縮まるきっかけになりました。
著者:木下うめ子/30代女性。2018年生まれの双子ママ。自閉症の双子のサポートに日々奮闘中。管理栄養士の資格を持っており、食べることが大好き。
イラスト:森田家
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年5月)